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神戸の神さんめぐり vol.1|ほくらさんと梅と、あの景色の話。

ほくらさんと、梅と海と、岡本の街。
― 保久良神社、登って、眺めて、下りて飲んだ話 ―
📍 神戸市東灘区 / 金鳥山中腹 / 海抜185m
🚃 阪急岡本駅から徒歩約30〜40分

はじめに
保久良神社、と書いて「ほくらじんじゃ」。地元では「ほくらさん」と呼んでいる。
東灘区の金鳥山中腹、海抜185メートルのところに鎮座するこの神社は、神戸生まれのぼくにとって、子どものころからずっとある「山の上の神社」だ。有名どころとは少し違う、地味渋い存在感がある。でもそれがいい。
境内には磐座(いわくら)がごろごろ転がっていて、弥生時代より前から人が祈りを捧げてきた場所だという。それがここに立つとなんとなく実感できる。太古の空気、とでも言うんかな。
阪急岡本駅から歩いて30〜40分。いわゆる「プチハイキング」になるんやけど、それが丁度いい。しっかり汗をかいて、上で深呼吸して、下りたら腹も減る。参拝と街歩きをセットにするのに、これほど都合のいい神社もそうそうない。

01|岡本から山へ。住宅街を抜けた先に
阪急岡本駅を出ると、こぢんまりとした商店街が迎えてくれる。カフェ、パン屋、老舗の洋食屋。「山の手の高級住宅街」というイメージがある岡本だけど、駅前は意外と庶民的でほっとする。

参道口に向かって山側へ歩き始めると、すぐに傾斜が始まる。住宅街の中の道なのに、坂がかなりの急勾配だ。

「ここに住んでたら自転車には乗れんな」と毎回思う。

それでも地元のご婦人たちが後ろ手を組みながら涼しい顔で登っていくのを見ると、「毎日登山の街やなあ」と感心する。

やがて住宅の気配が薄れ、木々が深くなってくる。石畳の参道に変わって、空気がひんやりしてくる。
参道口からここまで約800メートル、高低差120メートル。ぼくの足で大体30分ちょっとといったところ。


ちなみに:毎日登山の聖地でもある
金鳥山から風吹岩を経て六甲山最高峰へ至るハイキングルートがこの境内脇を通っている。1000回以上の登山を続けている常連さんが多数いることでも知られていて、すれ違うたびに軽く会釈してくれるのが気持ちいい。

02|境内へ。磐座と、灘の一つ火


鳥居をくぐった瞬間、雰囲気が変わる。三宮の生田神社のような華やかさはない。土の匂いと岩の気配が混じった、野性的な静けさがある。

境内に入ってまず気になるのが、あちこちに転がっている大きな岩だ。これが「磐座(いわくら)」。神の宿る岩として、古代から祭祀の対象とされてきた。
有名なのは社務所裏の 「神生岩(かみなりいわ)」 で、この岩を中心に複数の巨石が環状に配置されているという。紀元前200年以上前から人が祈っていたとされる場所だ。そう聞くだけで、背筋がちょっとしゃんとする。

磐座 立岩
磐座 神生岩
磐座 珍生岩


御祭神
須佐之男命(すさのおのみこと)
大国主命(おおくにぬしのみこと)
大歳御祖命(おおとしみおやのみこと)
椎根津彦命(しいねつひこのみこと)

もともとの主祭神は椎根津彦命で、神武天皇東征のおり瀬戸内海の案内をした漁師の神さまだ。この神社と海の縁は深く、その象徴が社頭の 「灘の一つ火」 と呼ばれる石燈籠だ。
日本武尊が熊襲遠征からの帰途、夜の海で航路を見失ったとき、この保久良神社の灯火が見えて無事に帰りついたという。以来「沖の舟人 たよりに思う 灘の一つ火 ありがたや」と詠まれ、大阪湾を行き交う船の道標となってきた。

〔写真:灘の一つ火・石燈籠〕

03|神戸の景色が、ここにある。


境内の南側に立つと、神戸の街が一気に広がる。これがほくらさんのもう一つの顔だ。
海抜185メートルからの眺めは、北野天満神社とはまた違う。もっと広くて、もっと開けている。晴れた日には大阪湾の向こうに淡路島が見え、遠く明石海峡大橋のシルエットが霞む。
神戸の街並みと海と空が一枚の絵になる。それを、神社の境内で見ている。このシチュエーションが好きだ。

登ってきた汗が冷えるころ、景色を見ながらぼんやりする時間がいちばん贅沢だと思う。水分補給しながら、しばらくそこにいればいい。

04|保久良梅林。2月末から3月、ここが神戸一の梅スポット。


神社の西側斜面に広がる保久良梅林は、あまり知られていない穴場だと思う。
白加賀、摩耶紅梅など白梅約150本、紅梅約100本、合計約250本が植えられていて、見ごろは例年2月末から3月上旬。梅の甘い香りが山の空気と混ざって、独特の清々しさがある。

南向きの斜面だから日当たりがよく、花の持ちもいい。神社参拝と梅見を一度に楽しめるのがここの強みで、この時期だけは地元民でも「ほくらさん、行こか」となる。
ただし混雑はほぼない。北野の梅林や岡本梅林公園と比べると、静かに梅を楽しめる。そのぶん自分の足で登ってくる必要があるわけやけど、その達成感も込みでいい場所だと思っている。


梅林越しに神戸の海が見える、あの構図が好きだ。

05|下山して、岡本の街へ。
汗をかいて神社を参拝して、梅を見て、景色に溜め息をついて、さあ下山だ。
この「下りたあとの岡本」が、またいい。阪神間の中でも岡本という街は独特の空気を持っていて、落ち着いた高級住宅地でありながら、どこか親しみやすい。甲南大学があるせいか学生の姿もあって、静かすぎない。
下山後の楽しみをいくつか。
🍺 夜なら一杯
岡本〜摂津本山エリアには、地元民が使う小さな居酒屋やワインバーが点在している。ハイキング後の一杯は最高で、「よう歩いた」という達成感と「ようお参りした」という清々しさが合わさって、酒がうまい。これが神社巡りの醍醐味だとぼくは思っている。

おわりに


ほくらさんは、神戸の神社の中でも特別な場所だ。
生田神社のような華やかさも、湊川神社のような格式も、北野天満神社のような絶景映えもない。でも、弥生時代から続く磐座の気配と、海を行く船の道標になってきた灯籠の話を知ってから参拝すると、この場所の重みがじわりと伝わってくる。
神戸という街が、山と海の間に挟まれた場所に育ってきたことを、ここに立つと改めて感じる。

汗をかいて登って、深呼吸して、景色を眺めて、梅の香りを嗅いで、下りて飲む。それだけでいい一日になる。

📍 保久良神社 基本情報
住所|神戸市東灘区本山町北畑680
最寄駅|阪急神戸線「岡本駅」
参道口まで|岡本駅から徒歩約10分
神社まで|参道口から徒歩約20〜30分
梅林見ごろ|2月末〜3月上旬
駐車場|なし(公共交通機関を利用)

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