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院内のネットワークあれこれ

病院の「ネットワーク」ってどうなっているの?——見えないところで医療を支える仕組み

病院やクリニックでは、医師や看護師がパソコンの画面を見ながら話をしている光景、よく見かけますよね。 私が働き始めた頃は、まだ紙のカルテが主流で、院内を重いカルテを袋へ入れて医事課と外来・検査室など走り回るのが日常でした。

でも今はどうでしょう。 電子カルテをはじめ、病院の中には目に見えない「ネットワーク」が張り巡らされています。今回は、ちょっと裏側のお話。病院のシステムがどうやって皆さんの安全を守っているのか、診療放射線技師の視点から少しだけ解説してみたいと思います。

ケーブルから無線へ、そして「ゼロトラスト」の時代へ

かつての病院ネットワークといえば、院内をLANケーブルで物理的につなぐものでした。でも今は、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、ネットワークは重要な社会インフラに進化しています。

地域の病院やクリニック、薬局と診療情報を共有する「地域医療連携ネットワーク」や、マイナ保険証を基盤とした「全国医療情報プラットフォーム」など、病院の「外」とつながる仕組みもどんどん広がっています。

院内の通信も、高精細な映像をリアルタイムで送るために「Wi-Fi 6E」や「ローカル5G」といった最新の無線技術が導入されつつあります。救急車の中から搬送先の病院へ、4K映像やバイタルデータを送ることも夢ではなくなってきたのです。

一方で、心配になるのがセキュリティです。 最近、病院を狙ったランサムウェア(身代金要求型ウイルス)のニュースを耳にすることがあるかもしれません。これを防ぐために、現場では「ゼロトラスト(ZTNA)」という考え方が広がっています。「院内のネットワークだから安全」と無条件に信用するのではなく、システムごとに厳格なアクセス制御を行う仕組みです。私たち医療従事者も、スマートフォンなどのアプリを使った「多要素認証(MFA)」が求められるようになり、日々のパスワード管理が、そのまま医療情報を守る防御線になっています。
医療画像機器のリモートアクセスに使用するVPNの脆弱性の見直しも、ホットな話題です。

病院の頭脳「HIS(病院情報システム)」

皆さんの診察記録や会計情報などを一元管理しているのが、 HIS(Hospital Information System):ヒス です。いわば、病院の「頭脳」ですね。

最近では、院内にサーバーを置く方式から、クラウド型への移行が進んでいます。これによって、他の施設とのデータ連携がとてもスムーズになりました。また、サーバーの管理業務も院内のサーバー室ではなくなったので、システム管理者:シス管も、停電時や大雨などでも急な呼び出しが少なくなったかもしれません。

ここ数年では、AI(人工知能)の導入も進んでいます。長文の診療記録を自動で要約してくれたり、症状に合わせた最新の診療ガイドラインを提示してくれたり。システムが事務的な負担を減らしてくれるおかげで、医師や看護師はもっと「医療そのもの」に専念できるようになってきています。

放射線領域のワークフローを支える「RIS」と「MWL」

少し専門的になりますが、私が長年関わってきた放射線科にも、専用のシステムがあります。

ひとつが RIS(Radiology Information System):リス です。検査の予約から患者の受付、進捗管理、レポート作成まで、放射線科の業務全般を管理しています。 いまやRISも進化して、AIによる画像解析結果を画面に直接取り込んだり、HIS(電子カルテ)と強固に連携して二重入力の手間をなくしたりと、より早く、より正確な診断を支える仕組みになっています。

そしてもうひとつ、医療安全の観点から絶対に欠かせないのが MWL(Modality Worklist):エムダブリュエル です。

これは、CTやMRI、レントゲンなどの撮影装置(モダリティ)に対して、「ID・氏名・年齢・性別・身長・体重の基礎的情報や、どんな検査をするか」というリストを自動で配信する仕組みです。

もしMWLがなかったら、どうなると思いますか? 技師は、検査指示が来るたびに、撮影装置のパネルでIDや氏名を一つ一つ手入力しなければなりません。これでは、入力ミスや「同姓同名の別人のIDを入れてしまう」といった、重大な医療事故(患者取り違え)が起きるリスクがあります。実際に、後から修正するのも大変な作業です。(経験者なので苦労は伝えたい)

MWLがあれば、装置の画面に表示されたリストから「該当する患者を選ぶだけ」で準備が完了します。検査が終われば、システムへ自動的に「終わりましたよ」という報告を通知すれば、電子カルテにも即座に反映されます。

裏側で動くこのシステムのおかげで、私たちは「間違えない」環境で検査に集中できるのです。

おわりに——システムは誰のためにあるのか

病院の中で何気なく使われている電子カルテや検査装置。その裏側には、高度なセキュリティ対策と、世界標準の通信プロトコルが張り巡らされています。

これらのネットワークやシステムが目指しているものは、究極的には「医療安全(事故防止)」と「スタッフの業務負担の軽減」です。

私たちが目の前の患者にしっかりと向き合えるのは、こうした見えない仕組みが支えてくれているから。病院を訪れたとき、パソコンに向かうスタッフを見かけたら、「裏側ではいろんなシステムが動いて安全を守っているんだな」と、少しだけ思い出していただけたら嬉しいです。

次回もどうぞお楽しみに。

診療放射線技師・准看護師 / 医療歴35年超 / 50代 セミリタイア中

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