いちご農園もデータを見る時代へ:日本のいちごはまだ進化する~ゲノムとデータが変えるいちご産業の未来(第8回)
経験と勘を、数字で強くする
いちご農家さんは、毎日いちごを見ています。
葉の色。
花の数。
実のつき方。
株の勢い。
ハウスの温度。
湿度。
日射。
病気の気配。
収穫量の変化。
こうした小さな変化を見ながら、水や肥料、温度管理、収穫のタイミングを判断しています。
いちご栽培には、経験と勘が欠かせません。
しかし、これからのいちご農園では、その経験と勘をデータで支えることがますます重要になります。
データは、農家さんの感覚を否定するものではない
データという言葉を聞くと、少し冷たい印象を持つ人もいるかもしれません。
数字で管理する。
機械で判断する。
人の感覚がいらなくなる。
そんなイメージを持つ人もいるでしょう。
でも、本来のデータ活用はそうではありません。
データは、農家さんの感覚を否定するものではなく、むしろ強くするものです。
たとえば、農家さんが「今年は少し株の勢いが弱い」と感じたとします。
そこに、気温、日射量、湿度、収穫量、開花数などの記録があれば、なぜそう感じたのかを振り返ることができます。
去年と比べて日射が少なかったのか。
夜温が高かったのか。
開花数が減っていたのか。
収穫量にどのくらい影響したのか。
感覚と数字を合わせることで、次の判断がしやすくなります。

記録することで、来週の収穫が見えやすくなる
いちご農園では、収穫量の予測がとても重要です。
来週、どれくらい採れるのか。
これが分かると、農園経営の判断が変わります。
観光農園の予約をどこまで受けるか。
直売所にどれくらい出すか。
EC発送を何件受けるか。
ふるさと納税の出荷予定をどう組むか。
パートさんを何人お願いするか。
加工用に回す量が出そうか。
収穫量が読めないと、売り逃しや欠品、過剰な予約、作業負担の増加につながります。
もちろん、農業なので完全に予測することはできません。
でも、花の数、気温、日射、過去の収量データなどを記録していけば、「だいたいこの時期にはこれくらい採れそう」という見通しは立てやすくなります。
データは、未来を完全に当てるためのものではありません。
未来のズレを小さくするための道具です。

売上や顧客の反応も、大切なデータになる
農園データというと、気温や湿度、収量だけを思い浮かべるかもしれません。
しかし、販売や顧客の反応も大切なデータです。
どの品種がよく売れたのか。
どの時期に予約が増えたのか。
どの商品がリピートされたのか。
観光農園のお客様は何に喜んだのか。
ECでどんな感想が多かったのか。
ふるさと納税で評価が高かった商品は何か。
こうした情報を記録していくと、農園の強みが見えてきます。
たとえば、ある品種は直売では人気があるけれど、配送には向かないかもしれません。
別の品種は観光農園では反応がよく、写真映えするかもしれません。
また別の品種は、贈答用として評価されやすいかもしれません。
いちご農園の経営では、
作るデータと売るデータの両方が大切になります。
小さな農園でも、データ活用はできる
データ活用というと、大きな施設園芸や最新設備が必要だと思われがちです。
しかし、最初から大きなシステムを入れる必要はありません。
まずは、簡単な記録からで十分です。
日付。
天気。
気温。
収穫量。
品種ごとの収量。
販売先。
売上。
お客様の反応。
気づいたこと。
これだけでも、続けていけば立派なデータになります。
大切なのは、完璧なシステムを入れることではありません。
毎年、同じ項目を記録し、振り返れる状態にすることです。
記録が残っていれば、翌年の判断に使えます。
人に説明するときにも使えます。
後継者にノウハウを伝えるときにも役立ちます。
経験は、頭の中だけにあると引き継ぎにくいものです。
しかし、記録されていれば、次の世代に渡しやすくなります。

データは、農園の未来を守る資産になる
いちご農園の価値は、ハウスや設備だけではありません。
長年積み重ねた経験。
品種ごとの特徴。
その土地の気候への対応。
お客様との関係。
販売の工夫。
収穫時期の読み方。
こうしたものも、大切な資産です。
そして、その資産を見える形にするのがデータです。
これからのいちご農園では、農家さんの経験と、データの記録が組み合わさることで、より強い経営ができるようになります。
データは、農家さんの代わりに判断するものではありません。
農家さんが、よりよく判断するための味方です。
今回のまとめ
いちご農園では、経験と勘に加えて、データの記録がますます重要になります。
気温、日射、花の数、収穫量、販売先、お客様の反応を記録することで、収穫予測や経営判断に役立ちます。
データは農家さんの感覚を否定するものではなく、経験を次の判断につなげるための道具です。
次回は、**「フェノミクスとは何か」**をテーマに、いちごの成長を画像やセンサーで見る技術について見ていきます。
