「RRR ビハインド&ビヨンド」②-創造の素晴らしさを知る
(一部ネタバレもありますので、未鑑賞の方はぜひ鑑賞後に読んでください!)
さて、ラージャマウリ監督とカールティケーヤ氏の舞台挨拶が終わり、いよいよ「RRR ビハインド&ビヨンド」を鑑賞。

ドキュメンタリーは、大好きなRRR誕生の経緯を知るだけでなく、映画製作の裏側を知ることができて学ぶことが多かった。あの「RRR」というものすごい映画が誕生した背景には、その何十倍、何百倍ものスタッフと俳優らによるものすごい努力、苦労、そして情熱があったのだと実感した。
素晴らしい作品の根底には、とてつもない才能と努力と時間がある。だからこそ、ゆるぎない支持を得られるのだ、と思った。
素晴らしい作品は、同じクリエイターの人をも刺激するのだろう。
この日の舞台挨拶では、会場から「僕自身も作品を作る側だが、自分の文化を取り入れた作品を外に向けて作る時、どんなことを意識しているか」という質問が出ていた。なんて深く素晴らしい質問!
監督は「できる限り、自分の文化に深く根付いたものを作るようにしている。そうすれば他の文化を背景に持つ人もインドに興味を持ってくれる、と信じているからだ」と答えていた。自分が愛するものの素晴らしさを自信を持って表現することで、相手にも自然とそれが伝わっていく、ということだろうか。「同じクリエイターとして…」と答えていたので、監督も嬉しかったのではないだろうか。
質問されていた方は音楽系のクリエイターということでしたが、お声も深みのある素敵な声で、つい聞き入ってしまいました。
私も、一応クリエイターとまではいかないが一応クリエイティブな仕事をしている端くれとして、「サボらず手を抜かず努力しよう!」と心を引き締めた。
そういう意味では、このドキュメンタリーが生まれてくれたこともありがたい。
終盤では、RRRが世界各地、特に全く文化が違うアメリカや日本で高く評価されたことが紹介された。映画そのものだけでなく音楽やダンスの振り付けも評価され、オスカーを始め様々な章を受賞したことで(RRRの挿入歌「Naatu Naatu」は95回アカデミー賞歌曲賞、80回ゴールデングローブ賞最優秀主題歌賞などを受賞)、監督だけでなく映画製作に関わったスタッフたちの全般の士気も高まった様子が伝わってくる。

振付を担当したプレーム・ラクシト氏が、「僕はストリートで踊っていたんだよ…(なのにまさか賞を得るなんて、という主旨で続く)」と受賞後の驚きを語っていた。詳しい事情はわからないが、ダンスが好きで路上で踊っていた当時、まさか将来自分が関わった映画が世界中から称賛を浴び、高名な賞を獲得し、世界中の人々が真似して踊った動画をソーシャルメディアに投稿するようになるなんて予想もしなかっただろうな!と思った。
賞による権威付けを巡っては、いろいろな議論もあるかもしれない。でも、大勢の人が関わる映画製作という仕事において、俳優や監督だけでなくそれ以外の人たちの仕事にも脚光が当たる、という意味では間違いなくプラス面があると思う。
映画ではそれ以外も、アクションや美術、撮影、音響などなど様々な専門家の仕事ぶりが紹介される。ラージャマウリ監督の、鬼のように?細かくレベルの高い(と思われる)要求に完璧に応えるため、知恵と経験とスキルを総動員して取り組んだ様子が伺える。
ふわあー、カッコイイ…私も、こういうプロフェッショナルたちと仕事してみたい。
作曲を担当したM.M.キーラヴァーニ氏(ラージャマウリ監督の従兄弟)も、そのレベルの高さに応え、全体の完成度向上を進めた1人だ。RRRは映画に登場する音楽もドラマチックで大好きだが、「チェロや管楽器を使い、まるで『語り掛けるように』曲を作った」とさらっと言っているのを聞いた瞬間、鳥肌が立った。まさにこれまで、「曲がセリフの代りにストーリーを語っているようだな」と思いながら聞いていたからだ!
キーラヴァーニ氏が例に挙げたのが、とあるテーマ曲のこの部分。「『♪Come what may, come what may♪』と聞こえるんだよ…」
さあ、これは誰のテーマ曲の、どこの部分でしょう?!
RRRでは歌詞の美しさも、魅力の1つ。主役2人が友情を温める時に流れる「Dosti」、差別的な言動を取る西洋人に対し自国の誇りを高らかに謡う「Naatu Naatu」、最後に生きていることを喜び合う「Etthara Jenda」など、歌詞を読んでいるだけで泣けたり気分が高揚したりする。特に「Dosti」は、それぞれの大義を秘めた2人がそうとは知らずに出会い、友情と信頼を深めていく様子と、その後に来る破滅の予兆を感じさせる世界観が、美しい単語がちりばめられた詩的な世界観があって、毎回字幕を観るたびに感動している。作詞したのは、シリヴェンネラ・シータラーマ・サストリー氏。残念ながらRRRが公開される前の2021年に病気で亡くなられたそうだが、ドキュメンタリーには少し登場する。ラージャマウリ監督がストーリーや主役2人の関係性を説明し、「こういう展開で流れる曲」と指示して作ってもらったらしい。
……そんな(簡単なプロセス)んで、あんな素晴らしい、叙情的で、聞くだけで壮大な世界観が目の前に浮かぶような深い歌詞が描けるの!?と驚きだった。想像だけど、インドの人たちは小さな頃から「ラーマーヤナ」や「マハーバーラタ」などの叙情詩に触れたり、タゴール(インドの詩人、思想家。1913年にノーベル文学賞を受賞)のような素晴らしい詩が身近にあったりして、感情や状態を言語化するのに長けているのだろうか?!なんて、勝手に想像を巡らせてしまいました。

いずれにしても、どんなに監督が、または俳優陣が素晴らしくても、映画づくりは1人ではできない。数多の素晴らしい賞の受賞も含め、このドキュメンタリーを作ってくれたことがさらに、スタッフ一人ひとりの誇りと自信、そして今後へのモチベーションにつながっていくのでは、と思いました。
ドキュメンタリー製作は監督の息子さんのカールティケーヤ氏が提案したらしいので、ほんとありがとう!!という気持ちです。
その他、「実は子役もワイヤーアクションしてたりして大変だったんだな!」と思ったり、「あー、ここはやっぱりこういう意味だったんだ!」と監督が答え合わせしてくれたり、見どころいっぱいというか見どころしかない、ドキュメンタリー。
ここまでいろいろ書いたが、ドキュメンタリーを観て私が一番印象に残ったのは、冒頭と中盤にも出てくる監督の言葉だ。「人種、言語、文化が違えど、人間の感情には違いはない」「良い感情は普遍的なものであり、国境を超えると信じている」(うろ覚えですが、こんな意味だったと思う)に、ズドン、と胸を射抜かれた気持ちだった。
私も分野は違えど、一応、人にモノを「伝える」仕事をしている。ちゃんと届いているのか、伝えたい形で伝わっているのか、悩むこともある。でも、いつも本当に伝えたいのは「人」のことだ。なぜなら、言語や文化が違っていても、私たちは皆、同じ人間だからだ。同じ人間だからこそ伝えたい、と思っている。監督の言葉を聞いて、「伝わってるんだ…」と背中を押された気分になった。
そんな効果もあった「RRR:ビハインド&ビヨンド」でした。まーでも、何がおかしいのか笑い転げて監督に甘えるNTRJr.(タラク)さんや、殴るシーンの後にぎゅっとタラクさんを抱きしめるラーム・チャランさんの映像を見るだけでも十分、満足感があります。
皆様もぜひ!

