ジョセフ・ロージー💫『召使』
ジョセフ・ロージー監督 (1963) 英
ジョセフ・ロージーさんは
ジャスミンの 好きな監督さんなのよ。
「召使い」というのは
今なら使用人、お手伝いさん、などという呼び名ですが
やはり この響きは 英国ならではですね。
〇
オープニング
どこか気だるいジャズに乗って映し出される
冬のロンドンの建物や、空、樹々の風景。

モノクロの映像が綺麗です。
その中を 黒いコート、帽子に手袋の
バレット(ダーク・ボガード)が 歩いて来る。
彼は 紹介所の斡旋で 召使として
この高級住宅地の ある家に面接に来たのだ。
開けっぴろげの 玄関ドアを押して入ると
この家の主人は 約束の時間にもかかわらず
奥の部屋で 無防備に眠りこけていた。

主人は
貴族出身の裕福な青年トニー (ジェームズ・フォックス)
やがて若き主人は目覚め 面接が始まったが
バレットの経歴は申し分なく
住み込みの召使の仕事は すんなり決まる。
雇い主のトニーは今
ブラジルの未開地の 開発事業に携わっている、
ということになっているが
話に現実味は無く
お金持ちの坊ちゃんの 理想というか夢想に近い。
バレットは
この家に足を踏み入れた 僅かな時間で
トニーの
ただ莫大な遺産を受け継ぎ 見かけだけはスマートだが
人生のお勉強は何一つして来なかった
空っぽな人間性を見抜く。
バレットの仕事ぶりは すべてに行き届き
巧みで水際立っており
トニーはたちまち
彼なしでは暮らせないほど 取り込まれて行ったが

トニーの婚約者スーザン(ウェンディ・クレイグ)は
バレットにどこか 胡散臭い匂いを感じ
ほとんど初対面から 彼を嫌っていた。

「あなた、何が狙いなの」
「私は ただの召使です」
あるときバレットは 田舎にいる妹ヴェラを
メイドに雇って欲しいと トニーに頼み
トニーは快諾する。

だが やって来たヴェラ(サラ・マイルズ)は
実はバレットの愛人で
バレットは彼女に トニーを誘惑するよう仕向け


トニーは
婚約者スーザンのような 上流階級の女には無い
ヴェラのむき出しの色っぽさに あっさり堕ちた。
このあたりから
いよいよ本性をあらわす バレット。

慇懃で英国紳士的な 召使の皮を自ら剥ぎ
野卑でセックスアピールむんむんの
低俗な男に変身する。
ある深夜、
トニーとスーザンが 連れ立って帰って来ると
バレットとヴェラが こともあろうに
トニーのベッドで 戯れていた。
衝撃的な このシーン。
玄関を入ると 二階のトニーの寝室から
ヴェラの淫らな笑い声が 聞こえて来る。
そして
「下で、何か音がしたわよ」
次の瞬間、ドアが開き 寝室の明かりを背に
バレットの全裸体の シルエットが 浮かび上がる。

驚愕の表情で見上げる トニーとスーザンを
平然と見下ろすバレット。
まさしく
上流階級の人間と 下層の人間の位置が
逆転しているシーン。
さすがに激怒して
ふたりを呼びつけたトニーだったが


「確かにヴェラは 妹なんかじゃないが
貴方と私は "兄弟"でしょう」
スーザンの前で ぶちまけられ
一言も返せないトニーは
「出て行け!」と 叫ぶより他ない。
するとバレットとヴェラは 小さな鞄ひとつで
大はしゃぎで 歌いながら出て行く。
もともと、財産も荷物も持たない
こんなことは
今までさんざん経験している、慣れっこなんだ、
そういう生き方をして来た ふたりなのだ。
バレットのいなくなった屋敷は 荒れ放題となり
トニーは酒浸りの日々を 送るようになるが
ある日、
トニーはバーで偶然、バレットに再会する。
謝罪するバレット。

「ヴェラは他の男のところに去って行きました。
お会いしたかった。
貴方にもう一度、お仕えしたい」
日々の孤独に 耐えきれなかったトニーは
このバレットの言葉に 再び彼を雇い入れるが・・・
この日を境に
召使は 主人と対等の口をきき
やがて ふたりの力関係は 完全にバレットに掌握される。

「お前が汚した部屋だ。お前が片付けろ」
そして
夜も昼もなく 薄暗く淀んだ部屋に
いかがわしい女たちを招き入れる 快楽の日々。
次第に トニーは精神を病んでいき
遂には、
まともに歩くことも出来ない 廃人となっていく・・・
財産だけはあるが 無能な上流社会の主人が
使用人に
根こそぎ、人生まで乗っ取られる物語。
しかし、トニーを支配しているつもりで
自らも快楽の虜になり 転落して行くバレット・・・
〇
トニーを演じていた ジェームズ・フォックスさんは
『長距離ランナーの孤独』『日の名残り』・・などに
出演されてました。
『ジャッカルの日』の
エドワード・フォックスさんの弟さんなんですね。
雰囲気が似てますね。
そして、ダーク・ボガードさん
魅力ありますよね。
わたし、好きなんですよ。
ジョセフ・ロージー監督のほか
ヴィスコンティ、アラン・レネなど 名匠に愛され
アメリカ映画界からも 誘われ続けましたが
僅か 一作しか出演しなかった。
独特な雰囲気をまとっていて
ハリウッドには 絶対いないタイプの俳優さん。
78歳で亡くなられましたけど
生涯独身でした。
おしまい
