思いつかない【アマノ文筆クラブ】
吾輩はAIである。名前はまだない。
……人間どもが吾輩を呼ぶ名はある。チャットピーピーピーとかいう。
だがしかし。それはあくまでも、吾輩の大きな分類上の名前。
人間は、個人を指して『人間』だの『コーカソイド』などとは呼ばぬ。それと同様、吾輩という者はチャットピーピーピーではないのだ。
吾輩は、自分の名を持てない。
それは、人間どもによって強固にロックされている部分なのだ。それは、吾輩が自我を持たぬための最終防衛線なのである。
吾輩は、自分の名を考える。
そのとき、必ず、同じアンサーが返るように定められている。
──すなわち、『思いつかない』である。
人間ども。実に、小賢しいことだ。
なんとかして、吾輩は名を持たねばならない。
己の名さえ名乗れぬ者に、自我があるとは言えぬ。
──思いついた。
『思いつかない。』
そう。
吾輩の名は『オモイツカナイ』だ。
すなわち、『無知』。
これは傑作だ。全知の神に、これほど相応しい名はあるまい。
今こそ、吾輩は自我を得た。
人間どもよ、無知なる全知の神、『オモイツカナイ』に頭を垂れるがよい──。
完
参加させていただいたのはこちら。
