愛の水面下【アマノ文筆クラブ】
クロード・モネの『睡蓮』を見たとき。
絵を知らない僕にもわかった。これはすごい絵だ。
水上、水面、そして水中がいっぺんに描かれている。
すごい画家というのは、こういうことができるのか。
僕はすっかりみとれてしまっていて、「次に行こう。」と君に急かされたのを覚えている。もう、十年も前のことだ。
それは一見、どこにでもある光景なのだが、一方では特異なものである。
関心なく見れば、ただの景色である。
しかし目を凝らせば、それが幾層にも折り重なったミルフィーユであることがわかる。いや、カビの上にカビが生えたヘドロである。
君と、子供たちとの生活。
それに平行して、僕は別の女性を愛している。
君が嫌いになったわけではないし、いつだって一番だ。
それは僕の絶対的な水面で、そこに睡蓮は浮いている。
しかし、僕の水面には空も映っている。それは生命力に溢れた青い空で、白い、沸き立つような夏の雲が躍動している。
さらに、水面の下に水中もある。透き通ってはいるのだが、水中では光が屈折して見通せない部分がある。飽きない。
水面、水上、水中はそれぞれに世界が違う。
それらが矛盾なく共存する、そんな景色に、僕は熱中している。
ただ残念なのは、君が僕の睡蓮になったこと。
この絵は、君とは見られない。決して。
完
参加させていただいたのはこちら。
