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もう一度でいいから、母のカレー。




Description

記憶は戻らない。もう食べられない味もある。それでも、言葉にすると、一瞬だけあの日の温度が戻ってくる。母のカレーをめぐる、静かなフィルムエッセイ。



記憶は買えない。

記憶は取り戻せない。

でも、

言葉にすると、
一瞬だけ、あの日の温度が戻ってくる。

私はそれを、
「記憶の現像」と呼んでいる。



もう一度でいいから、
母のカレーが食べたい。

じゃがいも。

にんじん。

玉ねぎ。

肉は何だったっけ。

そこだけ、
どうしても思い出せない。

ただ、

具がいっぱいだった。

全部、
小さな一口サイズだった。

子どもの私でも食べやすいように、
切ってくれていたのだろう。

ゴールデンカレーが定番だった気がする。

何日も。

何日も。

大きな鍋いっぱいに作ってくれていた。

三日続いても、
全然嫌じゃなかった。

むしろ嬉しかった。

学校から帰れば、
また食べられる。

明日もある。

明後日もある。

私は勝手に、
あのカレーがずっと続くものだと思っていた。

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ここから先は、母のカレーと、古いアルバムの中で再生された記憶について綴っています。
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