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眺聞千句【68】 図書館にはない声を綴じる

マイライフ枚方、平成7年5月15日号。

「伝統の手作り 和本綴じを伝承」という記事に、藤尾紘子さんが紹介されている。

「糸と針さえあれば誰でも出来ますよ」

講習会で自分の本を作った子どもは、
「これって、図書館にはない本だね」
と嬉しそうに言ったという。

ばらばらの紙を、糸で綴じて1冊にする。
和本綴じとは、単なる製本ではなく、まだ世の中にない1冊を、自分の手で生み出すことなのだと思う。

同じ紙面の「読者の欄」には、横山ノック知事への期待や注文が並ぶ。

安心して子どもを遊ばせられる公園と水洗トイレを望む28歳の女性。

1人暮らしの母と在宅看護の負担を訴える45歳の女性。
初めての選挙権に心を動かされる19歳の女性。

タレント知事に期待しつつ、行政に専念してほしいと願う24歳の主婦。

どれも大きな政治評論ではない。
しかし、生活の現場から出てきた切実な声である。

採用面接でも、自分と考え方が似ている人に「この人はうちに合いそうだ」と感じることがある。

同質な組織はまとまりやすい。
けれど、その裏側で、異論や探索が失われる危険もある。

似た声だけで綴じた本は、読みやすい。
しかし、そこに「図書館にはない本」は生まれるだろうか。

政治も、会社も、地域も、似た者だけで綴じれば楽である。

けれど、これからは子育てする人、介護する人、若い人、高齢者、障害のある人、そして移民の人たちの声まで、社会の1枚として綴じ込む必要があるのだと思う。

強く締めすぎると紙は傷む。
ゆるすぎると本にならない。

違う声を、違うままに置きながら、それでも1冊の本として綴じていく。

そのために必要なのは、制度という糸と、対話という針なのかもしれない。

図書館にはない本をつくる。

それは、まだ置き場のない声を、社会の中に綴じていくことなのだ。

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