旅好きの原点
最近、noteでおばあちゃんのことを愛おしそうに綴るお孫さんたちの文章をいくつか読んだ。
どれも温かくて、読んでいるうちに自然と私も自分の祖母たちのことを思い出していた。
そして、ふと思った。
「あぁ、私の旅好きの原点は、ここにあったのかもしれない。」
そんな気がした。

私には、大好きなおばあちゃんが二人いた。
両親は同じ村で育った幼なじみ。
だから、おばあちゃん同士も昔から顔見知りだった。
仲良しだったかと言われると……たぶん違う(笑)
もちろん仲が悪かったわけではない。
でも性格は見事なくらい正反対だった。
晩年になると、
お互いがお互いの面倒を見てやらねば!
みたいなことを言ってたっけな(笑)
なんだかんだ気になる存在だったのだろう。

父方の祖父母の家は、村の大きな道を挟んだ山手。
石垣の上に建つ家だったので、私たちは「上のおばあちゃん」と呼んでいた。
母方の祖母の家は、坂を下った谷側。
だから「下のおばあちゃん」
子どもらしい、なんともわかりやすい呼び方だった。

上のおばあちゃんは、とにかく家庭第一。
信心深く、毎日お大師さまを拝み、家はいつ訪ねてもきれいに片付いていた。
近所のお茶飲み友達との井戸端会議も大好き。
普段は物静かなのに、女子会になると楽しそうに笑っていた。
そんな一面も可愛らしかった。
一方の下のおばあちゃんは、まるで正反対。
夫を早くに亡くし、女手一つで四人の子どもを育て上げた。
先生になりたかったと聞いたことがある。
もし家の事情が違っていたら、きっと違う人生を歩いていたのかもしれない。
男勝りで、家事は少し苦手。
でも外で働き、人と関わり、地域のことにも積極的だった。
お節介なくらい人のためにもよく動く人。
その代わり、家の中はいつもごった返していた(笑)
そんな二人の血を受け継いだ私。
残念ながら性格は、下のおばあちゃん寄り。
片付けが苦手なのも、きっと遺伝だと思っている(笑)
共働きを選んで正解だったと心から思う。
専業主婦には向いていない(笑)

私が5歳くらいの頃。
弟を出産した母が大きな病気を患い、手術も受けて長い入院生活を送ることになった。
弟は生後半年ほどで父方の祖父母に預けられ、私は父と下のおばあちゃんと暮らす日々。
そんな私を、下のおばあちゃんはよく寺社仏閣へ連れて行ってくれた。
当時は京都に住んでいたので、バスを乗り継いで、お寺へ。
神社へ。
母が元気になりますように。
二人で手を合わせ、お祈りをした。
幼かった私は、その頃なんとなく般若心経まで覚えて、一緒に唱えていた気がする。

でも今思えば、おばあちゃんは私を連れ出してくれていたのではなく、自分自身も救われていたのかもしれない。
娘の病気への不安。
家でじっと待っているより、外へ出て祈ることで、少しでも心を落ち着かせていたのではないだろうか。
そして私は、そんな時間が大好きだった。
バスに乗ること。
知らないお寺へ行くこと。
知らない景色を見ること。
それが幼い私には、小さな旅だった。

母は無事に回復し、それから二人で寺社仏閣巡りをすることはなくなった。
でも夏休みになると、商売をしていた両親に代わって、私は一人で田舎へ送り込まれた。
大きな荷物を抱えて、
今日は上のおばあちゃん。
明日は下のおばあちゃん。
そんなふうに一日おきに行き来する夏休み。
どちらの家も大好きだった。

最近になって思う。
私が旅を好きなのは、新しい景色を見ることだけが理由じゃない。
大好きな人と一緒に過ごした時間が、旅になっていたからなんだ。
だから今でも、人に会いに旅へ出ることが多い。
景色だけではなく、その人との時間ごと持ち帰ってくる。
もちろん大好きな人の中には自分自身も。
自分自身とゆっくり向き合う時間も含まれるのだ。
きっと、それが私の旅なのだ。

もし、いつか孫ができたら。
私はきっと、あちこち連れ回すと思う(笑)
「二人だけの秘密やで。」
なんて言いながら、いろんな景色を見て、いろんな体験をして。
それが私なりのおもてなし。
下のおばあちゃんが、そうしてくれたように。
夫には、
「妄想が止まらんなぁ。」
と呆れられるけれど(笑)
……もっとも、うちの子どもたちは、まだ誰も結婚もしていない。
だから、そんな日が来るのは、もう少し先のお楽しみだ。

先日の滋賀旅では、ホテルの朝食会場で、とても素敵なおばあちゃん姉妹の隣の席になった。
少し耳の遠いお姉さんに、妹さんが何度も話しかける。
「え? よう聞こえへんわぁ。」
そう言いながらも、二人は顔を見合わせて、コロコロと笑っている。
その姿がなんとも愛らしかった。
「やっぱりハンサムはええわぁ。」
というお姉さんの一言には、思わず吹き出しそうになった。
そして、思い出したかのように「うちの兄弟もみんなハンサムやもんね。」と笑う。
妹さんも笑っていた。
お姉さんもきっと若い頃は美人だったんだろうな。
そんな面影が残る、やわらかな笑顔だった。
私は、そんな二人を見ながら、自分のおばあちゃんたちのことを思い出していた。
歳を重ねても、誰かと笑い合えること。
それは、とても幸せなことなんだと思う。
そして私も、そんなふうに歳を重ねられたらいいな。
旅をしながら、人に出会いながら。
これからも、私らしく歩いていこうと思う。
2026.8.10追記
こんな企画があると知り、参加してみました。
