第7回|水の確保の考え方
―命をつなぐのは「量」だけではないー
第6回では「体温を守る重要性」についてお伝えしました。
寒さが命を脅かすこと、そして家庭でできる体温管理の具体策を共有しました。
そして今回は、もう一つの生命線について考えます。
水です。
体温が奪われれば命は危険にさらされます。
しかし、水がなければ人は数日で限界を迎えます。
防災の基本として「1人1日3リットル」とよく言われます。
けれど本当に大切なのは、数字だけではありません。
今回は「防災×キャンプ」の視点から、
水をどう考え、どう備え、どう使うかを掘り下げていきます。
なぜ水は優先順位が高いのか?
人は食べ物がなくても数日は生きられます。
しかし水がなければ、3日も持ちません。
体の約60%は水分でできています。
水は、
血液を循環させる
体温を調整する
老廃物を排出する
といった重要な役割を担っています。
脱水が進むと、
頭痛
めまい
判断力低下
意識障害
が起こります。
つまり水が不足すると、命だけでなく、判断力も奪われるのです。
過去の災害が教えてくれたこと
■ 東日本大震災(2011年)
多くの地域で断水が発生しました。
給水所には長い列ができ、1人3リットルまでと制限される場面もありました。
問題は「水がゼロになる」ことだけではありませんでした。
重い水を運べない高齢者
容器を持っていない家庭
トイレ用水が足りない
水はあっても、運べない・貯められない・分けられないという現実がありました。

■ 熊本地震(2016年)
震度7が2回発生し、広範囲で断水。
給水所に行ける人と行けない人の格差が生まれました。
特に課題となったのが「生活用水」。
飲み水は確保できても、
トイレ
手洗い
食器洗い
の水が足りない。
ここで重要になるのが「水の使い方の知恵」です。
水は「飲む」だけではない
防災で語られる水は、主に飲料水です。
しかし家庭で必要なのは、
飲料水
調理用水
生活用水
の3種類です。
キャンプでは、限られた水をどう使うか常に考えます。
食器は拭き取ってから洗う
手洗いは少量で済ませる
使い回せる水は再利用する
これはまさに、防災の思考です。
「量」よりも「循環」を考える
防災の備蓄は「どれだけ持つか」に意識が向きます。
しかしキャンプでは違います。
限られた水をどう回すかを考えます。
飲み水は最優先
洗い水は再利用
雨水の活用
この発想が家庭防災にも役立ちます。
家庭でできる水の備え
① 備蓄の基本
最低3日分、できれば7日分。
1人1日3リットルを目安に。
しかし、備蓄は「置いて終わり」ではありません。
ローリングストック(使いながら補充)が重要です。
② 容器の準備
過去の災害で問題になったのは「入れ物不足」。
折りたたみウォーターバッグ
ポリタンク
ペットボトルの再利用
キャンプ用品はここで非常に役立ちます。

③ 水を運ぶ力
水は1リットル=1kg。
10リットルで10kg。
これは想像以上に重い。
キャンプでは、水場からサイトまで水を運びます。
その経験が「重さの現実」を教えてくれます。
家庭でも、一度10リットルを持ってみてください。
それだけで防災は具体的になります

浄水という選択肢
キャンプでは浄水器を使うことがあります。
携帯浄水器
煮沸
浄水タブレット
すべてを家庭で準備する必要はありません。
しかし「選択肢を知っている」ことは大きな安心につながります。

フェーズフリーで考える水
フェーズフリーとは、
日常と非常時を分けないこと。
キャンプで使うウォータージャグ。
普段から使っている保温ボトル。
アウトドア用の浄水器。
それらは非常時にもそのまま使えます。
特別な防災専用品でなくてもいい。
日常の延長にある道具が、命を守る。
これが「防災×キャンプ」の強みです。
水がもたらす心理的安心
断水時、人は強い不安を感じます。
水は命の象徴です。
十分な水があることは、
「生き延びられる」という安心感を生みます。
そして安心は、冷静な判断につながります。
子どもと一緒に考える水
家庭向け防災で大切なのは、
子どもも一緒に体験すること。
1日3リットルを量ってみる
その量でどこまで使えるか試す
キャンプで水の節約を体験する
これらはすべて、生きる力になります。
この連載が伝えたいこと
命を守る基本は、派手ではありません。
しかし、もっとも重要です。
キャンプは、これらを体で学ぶ場です。
そして家庭は、その実践の場です。
次回予告
次回は
第8回|火の扱い方の基礎
火は温もりであり、調理の手段であり、
同時に危険も伴います。
防災とキャンプの視点から、
安全に扱うための基礎を解説します。
