第6回|体温を守る重要性
命を守る最優先は「暖かさ」である
停電の夜を想像してみてください。
暖房が止まり、室内の温度はゆっくりと下がっていきます。
目に見えない変化ですが、体は確実に影響を受けています。
防災の世界ではよく「水・食料・トイレ」が語られます。
もちろんどれも重要です。
しかし、冬の災害において最優先で守るべきものは体温です。
なぜ体温がそんなに重要なのか
人間の平熱はおよそ36〜37℃。
体温が1℃下がるだけで、免疫力は大きく低下すると言われています。
さらに深刻なのは、**低体温症(ハイポサーミア)**です。
体温が35℃を下回ると、次のような症状が現れます。
震えが止まらない
判断力の低下
言葉が不明瞭になる
強い眠気
体温が32℃以下になると、意識障害や不整脈の危険が高まります。
つまり、寒さは「不快」ではなく、
命を脅かす状態への入口なのです。
冬の停電が危険な理由
家庭の中で低体温が起きるわけがない、と感じるかもしれません。
しかし冬の停電では、暖房が止まることで室温は急速に下がります。
特に問題なのは、
夜間であること
睡眠中であること
高齢者や子どもがいること
眠っている間は体温調整機能が低下します。
子どもは体温を奪われやすく、高齢者は寒さを感じにくい傾向があります。
だからこそ、家庭での体温管理は防災の基本なのです。
体温は「空気」ではなく「接触」で奪われる
寒さ対策というと、室温ばかりに目が向きがちです。
しかし、実際に体温を奪う最大の要因は接触冷却です。
冷たい床、コンクリート、窓際の壁。
体が触れている場所から、熱はどんどん逃げていきます。
これはキャンプの世界では常識です。
だからこそ、キャンパーは必ずマットを敷きます。
地面からの冷えを遮断することが最優先だからです。
家庭でも同じです。
ラグを重ねる
段ボールを敷く
マットを使う
それだけで、体感温度は大きく変わります。
体温を守る「三つの原則」
家庭防災で覚えておきたい原則は三つです。
① 下から遮断する
床からの冷えを防ぐ。
マットや布団を活用する。
② 上から包む
空気の層をつくる。
ダウン、毛布、寝袋は非常に効果的です。
③ 温かいものを摂る
体の内側から温める。
温かい飲み物やスープは、心にも効きます。
この三つは、すべてキャンプの基本と同じです。


フェーズフリーで考える体温管理
ここでフェーズフリーの視点が活きます。
体温を守るための道具は、
特別な「防災専用品」である必要はありません。
キャンプ用寝袋
ダウンジャケット
保温ボトル
毛布やラグ
日常で使っているものが、
そのまま非常時にも活きる。
これがフェーズフリーの力です。
そして大切なのは、使い慣れていること。
一度でも家族で寝袋を使ってみる。
停電を想定して暖かい島をつくってみる。
その経験が、非常時の落ち着きにつながります。
子どもと高齢者を守る視点
家庭防災で忘れてはならないのは、
体温を奪われやすい人の存在です。
子ども
高齢者
持病のある方
体が小さい、代謝が弱い、寒さを感じにくい。
こうした特性を理解しておくことが大切です。
家族の中で、
「誰が一番冷えやすいか」
を考えてみることも立派な防災です。
体温は、判断力を守る
寒さは、思考力を奪います。
冷えた状態では、
正しい判断ができなくなります。
つまり、体温を守ることは
命だけでなく、判断力を守ることでもあるのです。
停電の夜に、家族を安心させられるかどうか。
それはまず、自分自身が冷えていないことから始まります。
この連載が目指していること
私たちが伝えたいのは、
特別な防災技術ではありません。
日常の中にある知恵を、
いざという時に使える状態にしておくこと。
キャンプの知恵は、その練習場になります。
体温を守ることは、防災の最優先事項。
そしてそれは、家庭で今日から始められる実践です。
次回予告
次回は
第7回|水の確保の考え方
体温と並び、命を支えるもう一つの基盤が「水」です。
量だけでなく、「どう確保するか」「どう使うか」という視点で解説します。

