第3回|なぜキャンプが防災なのか
「知っている防災」から「できる防災」へ
1本目の記事で、私たちは「防災を楽しく、日常に、自分ごとにしたい」と書きました。
2本目の記事では、「冬の災害がいかに危険か」、とくに体温低下の怖さをお伝えしました。
ではその次に来る問いは、こうなります。
“では、その危険にどう備えるのか。”
その答えとして、私たちはキャンプとアウトドアを選んでいます。
防災は「知識」だけでは足りない
多くの人は、防災を頭で理解しています。
非常食を備える
ハザードマップを見る
避難場所を確認する
どれも間違っていません。むしろ、とても大切です。
でも、災害は私たちにこう問いかけてきます。
夜に停電したら、落ち着いて動けますか?
寒さの中で家族を守れますか?
情報がない中で判断できますか?
不安な人に、安心の言葉をかけられますか?
この問いに答えるのは、知識ではありません。
経験です。
頭で知っていることと、体でできることはまったく違います。
私たちがキャンプを通じて防災を伝える理由は、まさにここにあります。
キャンプは「小さな災害体験」
キャンプは、あえて不便な環境に身を置く体験です。
電気がない。
風が冷たい。
雨が降る。
水が限られている。
夜は真っ暗。
これは実は、災害時の状況ととてもよく似ています。
でもキャンプには決定的な違いがあります。
それは、楽しさがあること。
焚き火を囲む時間。
温かいスープを分け合う瞬間。
家族や仲間と協力してテントを張る体験。
人は、怖い訓練よりも、楽しい体験から深く学びます。
だからキャンプは、防災を「義務」から「生きる力」へ変えてくれるのです。

冬の災害とキャンプのつながり
前回の記事でお伝えしたように、冬の災害で最も危険なのは低体温です。
キャンプでは、私たちは自然とその対処を学びます。
風をどう防ぐか
どんな服を重ねるか
小さな空間をどう温めるか
火をどう扱うか
これはそのまま、冬の防災そのものです。
テントは簡易シェルター。
寝袋は体温を守る命綱。
マットは冷たい床から体を守る盾。
キャンプ道具は、遊びの道具でありながら、いざという時の命を守る道具でもあります。
これが「フェーズフリー」な発想です。
なぜ私たちはキャンプを選んだのか
私たちが防災の手段としてキャンプを選んだ理由は、3つあります。
① 体で学べるから
本を読むだけでは身につかない力を、実際の体験で育てられる。
② 家族でできるから
子どもは“教えられる”よりも“体験する”ことで学びます。
キャンプは、親子で自然に防災を学べる場です。
③ 地域とつながれるから
防災は一人では成り立ちません。
キャンプは、人と人をゆるやかにつなぎ、助け合いを生みます。
「自助」と「共助」は、キャンプで育つ
テントを張るとき、火を起こすとき、食事を準備するとき、
私たちは自然と役割分担をします。
これはそのまま災害時の「共助」です。
同時に、自分の身を守る工夫を身につけることは「自助」です。
キャンプは、この自助力と共助力を同時に育てる場なのです。

これまでの現場から
これまで私たちは、学校や自治体、企業で防災キャンプを実施してきました。
子どもたちが火を起こし、
大人が避難所運営を体験し、
地域の人が助け合う。
そのたびに感じます。
「知識は人を安心させない。経験が人を支える。」
机上の防災ではなく、体験の防災。
それが私たちの目指す形です。
この連載で目指していること
この連載を通して、あなたに少しずつ育ってほしいのは次の力です。
災害を「他人事」から「自分ごと」にする視点
家族を守る判断力
地域とつながる感覚
そして何より、「備えることは重くない」と感じてほしいのです。
次回予告
次回は、
第4回:「停電の夜に、どう家族を守るか」
冬の停電を想定し、家の中に“小さな暖かい島”をつくる具体的な方法をお伝えします。
キャンプの知恵が、家の防災にどう活きるのかを解説します。
日本防災キャンプアウトドア協会では、「知識だけの防災」ではなく、体験を通して身につく実践的な防災を全国に届けたいと考えています。
その一環として、私たちは全国各地へ出向く出張型の出前講座・防災キャンププログラムを実施しています。学校や自治体、企業、地域団体など、それぞれの現場の課題に合わせてプログラムを設計し、机上の学びではなく“できる防災”を一緒につくっていきます。
活動内容や具体的なプログラム例は、協会のホームページにより詳しく掲載しています。
「地域で防災キャンプをやってみたい」「職場や学校で体験型の防災を取り入れたい」とお考えの方は、ぜひご覧ください。
私たちは、災害を自分ごととして捉え、いざという時に助け合える社会を、皆さんと一緒につくっていきたいと思っています。
