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『渡辺社長の利益革命(長所覚醒編)』第1話

本編をお読みいただく前に、少しだけお伝えしたいことがあります。

 この物語『渡辺社長の利益革命〜稼ぎを倍増させたたった一つのトリガーは、基本に忠実だった〜』の核心に触れるためには、渡辺社長が歩んできた人生の軌跡を辿る必要があると想い、まずは彼の中学生時代に焦点を当てました。
 今、多くの経営者が円安やコスト高騰という「異常事態」の中で、出口の見えない暗闇を歩んでいます。世に溢れる華やかな経営手法を試しては挫折し、「自社の何がいけないのか」と、欠点ばかりを探してはいないでしょうか。
 私が30年超のコンサルタント人生で目撃してきた真実は、全く逆のものでした。
 会社を劇的な再生へと導くのは、外から持ってきた目新しい理論ではありません。それは、自社の中に元々あった「唯一無二の長所」に気づき、それを守り抜くための「経営の基本」に立ち返ることだったのです。
 渡辺社長の「眠れない夜」は、実在する多くの経営者の姿そのものです。彼がいかにして「欠点を探す目」を捨て、「長所を活かす目」を取り戻していったのか。全12話(予定)を通じて、その変革のプロセスを詳らかにしていきます。
 この物語を通じて、ビジネス書を読んでもどこか「腹落ち」しなかった皆さんの心に、本質的な改善への火が灯ることを願っています。

第1話:10代の原体験:祖父の「錆びた包丁」が教えたもの
 1980年代後半。渡辺は、中学卒業を控え、進路に悩む多感な時期を、家業を継いだ祖父の傍らで過ごしていた。ある日、彼は祖父が愛用する、年季の入った出刃包丁を手に取った。刃先には、深い刃こぼれがいくつも刻まれている。
「おじいちゃん、この包丁、もうダメだね。刃こぼればっかりだ」
 そう言って、渡辺は砥石で刃こぼれの部分を集中的に削り落とそうとした。欠点(短所)をなくせば、完璧な刃になると信じていたからだ。しかし、祖父は静かに、その孫の手を止めた。その手は、魚を捌き続けた職人特有の分厚く、しかし温かいものだった。
「バカもん。欠けを全部取ろうとしたら、刃そのものがなくなっちまう。包丁の役割は『切れること』だ。欠けてない場所が少しでも残っていれば、そこを最高の切れ味に研ぎ澄ませ。そうすれば、その一節(ひとふし)だけで、どんな硬いカボチャも、大きな魚も裁ける」
 祖父は、実際に残った無事な刃先を研ぎ、見事に硬い大根を薄切りにしてみせた。そして、驚く渡辺の目を真っ直ぐに見据えてこう続けた。
「経営も同じだ。足りないものばかりに目を向け、会社を削り落とすな。今ある長所を、誰よりも鋭く研ぎ澄ませ」
 当時、中学生の渡辺にとって、その言葉は唐突であり、その深意を理解することはできなかった。しかし、数十年後、赤字という欠点ばかりを見て、自らの会社を救えずにいた「眠れない夜」に、この光景が鮮烈に蘇ったのだ。
 あの日、祖父が言っていたのは、この「限界利益」のことだったのか――。
 この発見こそが、事業構造を変革させる鍵となり、利益革命という「長所を研ぎ澄ます」作業の原点となったのである。

 第2話では、20代の渡辺が直面した『バブル崩壊』の地獄と、そこで彼を救った意外な一本の電話について描きます。


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