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ビール業界を取り巻く環境変化。~その時、工場は~

前職は100年を超える大手酒造メーカーでした。

その工場で機械を修理する人として14年勤務しました。(2021年に転職)

その14年間を、社会の出来事やそれに対する社内の取り組みなどの視点で振り返ってみたいと思います。


アジアの玄関口工場

工場自体は建設から数年の比較的新しい工場で(入社当初)、
全国数カ所ある工場と比べて、製造量は小規模大ロッドで機能的工場の位置づけ。

九州地方や中国地方への流通拠点としてだけでなく、アジアの玄関口として中国や韓国、東南アジアにも輸出できる工場として期待される工場です。

数年前におきた韓国への輸出をめぐる対立により、
韓国が日本の酒類輸入の規制を厳しくしたときの工場稼働率の落ち込みは顕著で、輸出が当工場に与えるインパクトの大きさを痛感したのを記憶しています。

飲酒に対する世間の目

酒類の世間での風当たりは年々厳しさを増し、
私が入社する直前におきた、福岡での悲惨な飲酒運転事故を機に飲酒運転撲滅の気運がいっそう高くなったことを記憶しています。

社内では企業の社会的責任(CSR)の厳守化も進み、飲酒運転をしない、させないために、
通勤前や帰宅前の呼気の相互確認なども厳しくなりました。
「道路交通法の改正により、2022年4月1日から一定台数以上の車を使用する事業者は、運転の前後に運転者のアルコールチェックを行うことが義務化」されましたが、それよりも数年も早く、それも社用車だけでなく自家用車においてもアルコールチェックが取り入れられました。

その他にも、お酒に起因する飲食店でのトラブルは、お客様へ与える実害および企業の直接的なイメージダウンになることから、工場ルールとして飲み放題の規制や厳罰化なども進んでいきました。最近聞いた話では、現在もその取り組みは継続中だそうです。

ノンアルコールの需要が増えだしたのも、こういった世間の声の影響を受けてからで、勤務していた工場でも、それまで製造していなかったノンアルコールビールの製造をおこなうようになりました。

食の安全安心

食の安全安心に関する企業のコンプラ違反(某M社の異物混入事件ですとか、某冷凍食品メーカーの社員による意図的な薬物混入事件)なども発生し、工場内における食の安全安心を守る取り組みは一層厳しさを増してきました。

一般的にイメージされるのは、
白衣を着て帽子やマスクを着用して、手洗いをして無菌室に入っていく姿だと思いますが、このような無菌エリアだけでなく、その他のエリアにおいても手洗いの徹底がなされていました。

第三者や社員による意図的な異物混入を防止するために、各タンクや開放部などには施錠がなされ、鍵も管理されていました。
直接的な製造エリアには、体内に入ってはいけないものは持ち込み禁止で、スプレー缶の管理やオイル管理なども厳しくなりました。

意図的な混入だけでなく、偶発的な混入ももちろんNGです。
防虫や微生物に対する社内基準の高基準化はもちろんのこと、機械に用いられる消耗品の定期交換頻度も厳しくなり、メンテ頻度を変えるときには慎重を期していました。鉄類の使用や破損しやすいものなどの使用は禁止ですし、製造エリアへの部品や工具の持ち込みは数量管理が徹底され、作業前と作業後で整合が取れているかを厳しく確認します。

エネルギー効率向上

SDGsという取り組みが盛んになってからは、より一層、省エネへの意識も高まりました。
ビール作りには大量の冷媒、大量の蒸気、大量の電力を使います。
エネルギー問題や環境問題を無視してただ作れば良いという時代は過去のもので、企業の社会における役割として、省エネを考えることや省エネ設備に投資することは企業の重要な課題の一つとなりました。

原料や輸送費の高騰

原料や輸送費の高騰という厳しい現実にも直面しています。
その中で、わたしたちは高品質を維持しつつ、製造コストを抑える努力をしなければなりませんでした。稼働率を上げ、製造ロスを減らし、メンテナンスにかかる費用を抑え、自動化を進め人件費を抑えた上で、お客様にタイムリーに製品を提供していくことが工場としての使命でした。

飲酒量の減少

厳密にはビール類の飲酒量の減少ですが、ビール類の飲酒量は1994年をピークに半分以下に落ち込んでいます。(ソース:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-06-001.html
縮小する国内飲酒量の中で、競合とパイを奪い合う戦いが続いています。
ビール離れが叫ばれて久しいですが、お酒の多様化が進んでいることも原因に上げられます。日本酒、焼酎、ビールなどの日本に馴染みの深い種類のほかに、リキュール、ワイン、ウイスキーなど、近年お酒の酒類は豊富になり、さまざまなシーンに応じて選ばれるお酒の選択肢が増えました。

酒税法の改定

ビールは酒税法をかわすために、第二のビールとして発泡酒が生まれ、発泡酒の酒税をかわすために第三のビールが生まれてきました。ビールの新ジャンルの歴史はそのまま酒税の歴史であると言えます。近年では、ビール以外の発泡酒や新ジャンルに対する税率引き上げが、家庭におけるビール類の需要減少に大きく影響を与えていると思います。それはそのまま企業へのダメージとなっています。新ジャンルは、ビールを愛する多くの方へビールテイストを安くお届けするための企業努力であるにも関わらず、その努力はいつも酒税法によって打ち消されているのが実情です。

まとめ

ビール業界は成熟期を超え、衰退期に入っている印象でした。少子化による若者の飲酒人口の減少だけでなく、そもそもビールというイメージ自体がスマートな印象でないのかもしれません。経済が成長していないことも大きいと思います。嗜好品は家計を切り詰める最初のカテゴリです。失われた30年が嗜好品に与えたインパクトはとてつもなく大きいと思います。記事を読めば一目瞭然だと思いますが、社会の目や社内ルールは厳しくなる一方で、売上は伸び悩み、工場内はネガティブな雰囲気に包まれることもしばしば。挑戦的なアイデアよりも保守的なアイデアに傾きがちで、新しい挑戦をするときも石橋を叩いて渡る念の入れよう。

「いつもと変わらない美味しさ」を提供できる背景には、企業の並々ならぬ努力があることをわかっていただけたかと思います。

そんな環境下で私よへいがどのように悩み、解決したかは次回以降にお話できればと思います。

本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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