【経産省×JHIH】イノベーションハブサミット2026 〜ヘルスケアスタートアップのスケールとインパクト〜 イベントレポート
3連休最終日の2026年2月23日、JHIHは経済産業省と共同で「イノベーションハブサミット2026」を開催しました。「ヘルスケアスタートアップはどのようにスケールし、インパクトを出すのか」——この問いに、事業家、VC、そして省庁の担当者がそれぞれの立場から向き合った、密度の高いイベントとなりました。
以下、当日の内容をレポートします。
開催概要
イベント名: 【経産省×JHIH】イノベーションハブサミット2026 〜ヘルスケアスタートアップのスケールとインパクト〜
日時: 2026年2月23日(月・祝)15:00〜18:00
会場: Tokyo Innovation Base(Sushi Tech Square 2階)東京都千代田区丸の内3-8-3
主催: 経済産業省 × 一般社団法人 Japan Healthcare Innovation Hub
オープニング:経産省からの問題提起

冒頭、経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課の池辺 将氏より、本イベントの企画背景と経産省の取り組みが紹介されました。
ヘルスケアスタートアップの数は増え、資金調達のニュースも増えている。しかしその一方で、グローバルと比較するとエグジット件数が少ないという課題が浮き彫りになっているといいます。その理由の一つとして、海外ではM&Aが主流であるにもかかわらず、日本ではIPOを志向する動きが多い
そうした現状分析から、「スケールとインパクト」をテーマに据えた今回のイベントが企画されたと説明されました。
経産省ヘルスケア産業課は、ヘルスケアイノベーションハブ(InnoHub)の運営、ピッチコンテスト(過去9回開催、10回目は大阪万博でグローバル展開)、ヘルスケア特化アクセラレーションプログラム(2年間で計60社支援)、地域での実証フィールド構築支援(愛知・仙台・九州)、そして海外進出支援(特に米国)など、多岐にわたる施策を展開しています。

基調講演「医療DXを起こしてみよう」

登壇者:黒田知宏 氏(京都大学大学院医学研究科附属医療DX研究センター センター長)
続いて、京都大学大学院医学研究科附属医療DX研究センターのセンター長を務める黒田知宏氏による基調講演が行われました。
黒田氏はまず、DXを単なるデジタル化ではなく「情報革命」と捉え、既存の業務をデジタル技術で再定義することがイノベーションの第一歩と述べ、優れた技術があるだけでは社会は変わらず、変革を成功させる鍵はユーザー体験のデザインであると強調しました。
医療分野においては、患者や医療従事者にとって便利な体験を創り出し、社会全体を新しい医療の形へと導く道筋を実践することこそが、医療DXにおける”稼ぎ方”でもあるという話が印象的でした。
セッション①「ビジネスモデルの多様性〜PMF達成とスケール戦略〜」

<モデレーター>
橋爪 克弥 氏(Beyond Next Ventures 株式会社 Executive Officer / Partner)
<登壇者>(左から順に)
程 涛 氏(issin株式会社 代表取締役CEO)
中原 楊 氏(株式会社medimo 代表取締役/共同創業者)
坂本 祥二 氏(株式会社HQ Founder & CEO)
パネルセッション1では、ヘルスケア領域で異なるビジネスモデルを展開するスタートアップ3社が登壇し、PMF(プロダクトマーケットフィット)達成までの道のりやスケール戦略について議論が交わされました。
株式会社HQ:
BtoBtoE(Employee)モデルで事業を展開するHQ社は、企業の福利厚生を起点に社員の健康やキャリアアップを支援するプラットフォームを提供しています。
当初は社会課題解決からスタートしたものの、マネタイズの難しさから現在のモデルへ転換。顧客ニーズを深く把握したうえでの徹底した優先順位付けが重要だと語る坂本祥二氏の語り口が印象的でした。
株式会社medimo:
AIを活用した医療現場向け業務効率化サービスを提供するmedimo社の共同創業者である中原 楊氏は、医師の診察後カルテ記載をAIで大幅に短縮できるインパクトがPMF達成の核心だったと語りました。
医療機関への展開における信頼の壁を乗り越えつつ全国展開を加速させるため、直近ではスズケングループ入りを決断。M&Aプロセスの内情も伺える貴重な機会でした。
issin株式会社:
ヘルスケア×ゲーミフィケーションを展開するissin社の代表取締役を務める程 涛氏は「継続性」こそが最大の価値だと語りました。健康行動はいかにユーザーが無意識に続けられる体験を設計するかが勝負。
インフルエンサーや多様なメディアを巻き込み、ユーザーが自律的に発信・拡散していく構造を作ることで、広告費に頼らないオーガニックな成長を目指しているという考えが参考になりました。

セッション②「医療データ活用と社会実装」

<登壇者>(左から順に)
明石 順子 氏(経産省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 課長補佐)
鈴木 綾奈 氏(総務省 情報流通行政局 地域通信振興課 課長補佐)
三浦 萌 氏(デジタル庁 国民向けサービスグループ プロダクトマネージャー)
続くパネルセッション2では、経産省、総務省、デジタル庁の担当者が登壇し、医療データの利活用と社会実装をテーマに国の取り組みや今後の展望が議論されました。
省庁連携で推進する医療DX
各省庁の役割分担は、厚労省が健康医療情報の「源泉」を担い、デジタル庁が「インフラ(マイナポータルAPIなど)」として整備、総務省がデータの「流通・信頼性(ルール整備)」を担保し、経産省がデータの「利活用(産業振興)」を促進するという「水の流れ」に例えられる連携体制です。
マイナポータルAPIが拓く可能性
中心的なテーマとなったのが、デジタル庁の三浦 萌氏が解説したマイナポータルAPIです。国民は本人の同意に基づき、自らの薬剤情報や健診情報を民間のPHRサービスで活用できるようになります。
スタートアップにとって、サービス開始当初から過去の医療データ(薬剤情報は最大5年分)にアクセスできることは大きなアドバンテージとなります。質疑では、外国人向けの多言語対応サービスや災害時における医療情報活用といった具体的なユースケースも議論されました。

安心・安全なデータ利活用のために
総務省の鈴木 綾奈氏からは、安心安全なPHRの流通・活用に向けた制度・ルールの整備に関する取り組みが紹介されました。
データの活用によるイノベーションの促進と、機微なデータを取り扱う上での厳格な運用という「アクセルとブレーキ」のバランスを取りながら、国民が安心して自らのデータを通じ、健康増進に寄与する仕組みの構築が急務であることが示されました。
おわりに
本イベントは、ヘルスケアという巨大な社会課題に対し、多様な関係者がそれぞれの立場で価値を創造し、社会を前に進めようとしている熱量が集結した場でした。
基調講演で示された「ユーザー体験から逆算する」というDXの本質。セッション1で浮き彫りになった、ビジネスモデルの多様性と奮闘する起業家たちのリアル。そしてセッション2で示された、国が描くデータ利活用の未来図と官民連携の重要性。これらを通じて、ヘルスケア領域におけるイノベーションの現在地と今後の可能性を多角的に示すイベントとなりました。

JHIHについて
Japan Healthcare Innovation Hub(JHIH) は、ヘルスケア・ライフサイエンス分野でイノベーションに取り組む人たちの横の繋がりを強化し、業界の活性化を目指すコミュニティです。現在2,000名を超えるメンバーが登録し、月1回のオンライン勉強会、半年に1回程度のオフライン交流会(毎回100〜200名が参加)、そしてSlackコミュニティの3つを軸に活動しています。
本イベントは、昨年好評を博した経産省との共同開催の第2回として実現しました。
ご参加を希望される個人の方は、公式HP(https://jhih.org/)よりご登録ください。ヘルスケア・ライフサイエンスのイノベーションに取り組む仕事/勉強をされていらっしゃる方であれば業種・ご所属は問わずご参加いただけます。
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