「謎のFintechスタートアップ」が、世界中で当たり前になる日--思想を実装するPR
執筆者:株式会社UPSIDER 広報責任者 五十川慈
株式会社UPSIDER 広報責任者のMeggy(五十川:いそがわ)です。UPSIDERのサービスをご利用いただいている方々や既存/潜在的なパートナー企業の皆様、採用候補者の皆様、投資家など多くの「Public」との長く良好な関係作りをミッションとするPRチームを管掌しています。
このnote記事は、UPSIDERがみずほFGにグループインすることの発表に合わせ、Leadersの“決意表明”記事シリーズのひとつとして公開されたものです。それぞれの領域で、今回の節目をどう捉えているのか、そしてこれからどんな風に戦って、勝っていくのか。私を含め9人のリーダーがそれぞれの思いを綴っています。ぜひお読みください。
PRの仕事は基本的に裏方で、注目してもらいたい対象はだいたい他者であるため、表に出てきて思想を語る機会は本来あまり多くありません。そんな立場の私は、なにを書こうかなーーー?と悩みました。
悩んだ結果、このnoteでは、「急成長するスタートアップにおいて、PRが果たすべき役割は、結局なんなのか」を軸に書いてみたいと思います。がんばるぞ!おー!
三層構造の考え方:思想/システム/ツール
PRとは、何を担う仕事なのか。
一般的には、メディアとの関係性づくり、情報発信の設計、あるいは危機対応やブランディングといった定型的な役割を思い浮かべる方が多いかもしれません。実際、PRという職能には幅広い定義が存在し、時に「伝える技術」としての専門性が求められる局面もあるでしょう。
しかし、UPSIDERという会社においてPRが果たすべき役割は、そうした“伝達手段”の枠に収まりきるものではなかったと私は考えています。私がその手がかりとして強く共感したのが、VP of Growthの米田陽介(Komeさん)が教えてくれた三層構造のフレームです。
■思想レイヤー
市場の前提や価値観、世界観を定義するレイヤー。
私たちはなぜ存在するのか。社会にどんな構造を問いかけ、何を前提として挑戦を続けているのか。最も抽象的でありながら、最も本質的なもの。
■システムレイヤー
思想を反映したシステムを設計するレイヤー。
思想に基づいて設計されたルールとアーキテクチャが、Techによりシステムとして形になりこの層を支えます。思想を実装するための器というイメージです。
■ツールレイヤー
ユーザーが日常的に触れる“手触り”のレイヤー。お客様が受け取る体験そのものです。思想が反映されたシステムがどんな衣装をまとい世の中に出ていくのかはとても重要で、お客様が接点として認識するのはこの層ですが、その背後には必ず、思想とシステムがあります。
この構造をわかりやすく説明するために、Appleの事例を紹介します。
Appleのプロダクトに触れたとき、多くの人が「Appleっぽい」と無意識に感じ取る何か。それは、見た目や操作性といったUIレイヤーの巧みさだけで説明できるものではありません。
その体験の裏側には、「シンプルで美しい」という明確な思想が通底しています。その思想がOSの設計やセキュリティ、ユーザーフロー、ナビゲーション設計といったシステムに落とし込まれ、iPhoneという具体的なツール、プロダクトとして結晶化している。つまり、“Appleらしさ”とは、思想→システム→ツールという三層を通じて、一貫して届けられているものなのです。
UPSIDERにおいても、同じように、思想がシステムを生み、システムがツール(体験)をつくるという設計の連続があります。そして、PRが担ってきたのはまさにこのはじめの一歩、「思想レイヤーの設計と運用」にほかならない、と感じています。
私たちは、なぜこの事業に取り組むのか
社会にまだ残っている構造的な課題に対して、どう解を出そうとしているのか
なにを選び、なにを選ばないのか
どんな価値観とどんな矛盾を併せ持つ集団でありたいのか
それらを言葉にして、誤解されずに届くよう設計する。
その思想に「らしさ」という解像度を与え、社内の自己アイデンティティと、社外の認知とを接続していく。
「PRとは、単なる“広報担当者”ではなく、思想をデザインし、社内外を導く者である。」
私はそう信じて、この3年間、UPSIDERのPRという仕事に向き合ってきました。
次章では、私がUPSIDERに関わり始めた2022年当時の話に遡ります。
“謎のFintechスタートアップ”と思われていたあの頃、言葉がなく、構想が届かず、空白が誤解を生んでいた時代。そこから、私たちがどのように「UPSIDERらしさ」を編み出していったのか。
そのはじまりの話をしたいと思います。
2022年。“謎の会社”、UPSIDER。
2022年3月の終わり。UPSIDERに関わるようになったことが、私の人生においてひとつの転機になりました。最初は業務委託としてのジョインでしたが、あの頃からもう3年半も経とうとしているのかと驚きます。
正直に言うと、そのとき私はUPSIDERのことを知りませんでした。社名も聞いたことがなく、「法人カード?をやっているらしい??」という断片的な情報しか持っていなかった(なんせコーポレートサイトもなかった)。でも、最初に携わったPR案件があまりにも面白すぎたのです。
それが、「150億円の資金調達」発表。しかも、Facebook、Spotify、Alibaba、Slackなどに投資してきた世界的なベンチャーキャピタルのDST Global Partnersによる、日本初のリード投資案件でした。(注:DST Global PartnersとWiLの共同リード投資。)これは当時の日本のスタートアップ界では極めて異例のインパクトで、私はひとりのPRパーソンとして「この案件、絶対に関わりたい!」とワクワクしたのを覚えています。
事実、UPSIDERは2018年創業でしたが、2022年当時の知名度は決して高くありませんでした(オブラート)。「何をやっている会社なのか」「なぜ存在しているのか」「どこを目指しているのか」。そのどれもが、社外から見たら曖昧で、“謎” でした。社名すら、読み方を迷う人が多かった時期です。
当時からUPSIDERは発信すべき情報に事欠かない状況で、資金調達、事業進捗、タレントの入社、新たな制度の発表など、Publicの注目を集められるような発表が続きました。「一体どんな会社なんだ?」という眼差しがじわじわとUPSIDERに集まり始めていたこのフェーズで、私がPRとして感じたのは、「打ち上げ花火のような一発勝負のバズ・ゲームではなく、共感、理解、愛着を育むためのストーリーが必要だ」ということでした。
一方で、当時のUPSIDERには、PRとしてはなかなかに“難易度の高い環境”が揃っていました。まず、主力サービスである法人カードは、特に日本のスタートアップにおいては黎明期。そもそも法人向けクレジットカードの存在自体が、一般的にはあまり理解されていないなかで、UPSIDERの提供するサービスの新しさ・優位性・必要性をきちんと伝えるのは、至難の業でした。
しかも、創業者2名をはじめとして、当時のメンバーはとても控えめな人たちばかりで、表に出たがらない。取材も、記者会見も、X(当時はTwitterでした)での発信も、極力避けたいタイプの人が多かった。PRという立場から見ると、「この情報を誰が語るのか」「どう語れば刺さるのか」という設計に頭を悩ませる状況でした。
それでも私は、この「謎」だらけのUPSIDERと、Publicを繋ぐためのストーリーが、言葉が、必要だと思っていました。何のために存在している会社なのか。誰のために、どんな未来を創ろうとしているのか…。そういうことを、社会に伝える言葉を発明せにゃいかん。
この頃のUPSIDERは、まさに「思想レイヤー」が曖昧なままだったのだと思います。
意志はあるのに、共有言語がない。構想はあるのに、社会に伝わらない。
思想が言葉になっていなければ、システムもツールも、体験の設計がブレてしまう。
それが、UPSIDERのPRとして思い返す「はじまり」でした。
“世界で戦える日本企業を生み出し、日本の競争力を再び上げる” という道標
転機になったのは、2023年6月に発表した「新プロダクト『UPSIDER AIシリーズ*』および『UPSIDER Capital』のリリース」でした(*当時は「AI Coworker」という名称でした)。当時、UPSIDERは主力の法人カード「UPSIDER」と、請求書カード払いサービス「支払い.com」という2つの金融サービスを展開していました。
UPSIDERの与信モデルには当初からAIが活用されていましたが、このタイミングでAI領域に深い専門性を持つプロダクト責任者・森の参画があり、AIチャット型の業務効率化ツール領域への本格参入を発表しました。
さらに、2023年晩秋に発表する「UPSIDER BLUE DREAM Fund」を推進するための子会社 UPSIDER Capital を設立することも同じタイミングで発表することにしました。UPSIDERから一気に放たれる“情報の洪水”は、よく言えば多彩で、悪く言えば「結局何をしたい会社なの?」というひっちゃかめっちゃかな印象を強めてしまう可能性があるものでした。UPSIDER=謎の会社、というアイデンティティに強い課題を感じていた矢先、下手をすればますます“正体不明感”を強めてしまう。だからこそ、この瞬間こそが「ストーリーを描き直す絶好のタイミング」だと感じました。
そのとき私は、創業者のTomoさんに土曜日まる一日時間をもらって、「私たちは、どんな社会の流れに位置していて、そこにどう貢献しようとしている会社なのか」を言語化するための壁打ちを重ねました。そのなかでTomoさんからふと、「Meggyさんは、なんで今UPSIDERにいて、なんでそんなに熱狂できるんですか?」という問いを投げかけられました。
ここから自分語りですが(お付き合いくだせい!)、私は、2020年に第一子を、2024年には第三子を出産した、3人の男の子の母親です。読んでくださっている方はおそらくお察しの通り、私は仕事が大好きです。三人の母親になった今でも、仕事の優先度はめちゃくちゃ高く、一方でそこに理由はありません。仕事が大好きだからです。
そんな、仕事を最優先に生きてきた私の価値観を大きく変えた出来事が、出産です。小さな命を抱いて日々を過ごすなかで、自然と「この子たちが大人になる頃、日本はどんな国になっているんだろう?」と考えるようになりました。その想像を巡らせたとき、正直、ポジティブなイメージが湧かなかった。「日本は、どんどん誇れない国に成り下がってしまうんじゃないか」「“出生地ガチャ失敗した”って思うかな」「“なんで早めに海外に移住してくれんやったと?”って文句言われるかもなー」そんなふうに思ったとき、私は初めて、「日本を誇れる国にしたい」という気持ちが、自分の中に芽生えていたことに気がつきました。
UPSIDERに最初に惹かれた理由は「エキサイティングな仕事」でした。でも、深く関わるほどに、UPSIDERの構想が持つ社会的意義に気づきました。それは、“挑戦する人や企業を、本気で支えようとしている会社”だということです。目の前の経営者の一手に肩を並べて、金融という手段を通じて未来を後押ししていく。その“お供”のスタンスが、私は本当に好きだと思えるようになっていました。そして、UPSIDERに集まってきている仲間たちは、みんなそれぞれUPSIDERが「挑戦者を応援する」「テーブルの同じ側に座る」というスタンスを持っていることに誇りを持ち、熱狂していることにも気付いていました。
Tomoさんの問いに対してそんな答えを返すなかで、私個人の人生ビジョンと、UPSIDERが取り組むミッション「挑戦者を支える世界的な金融プラットフォームを創る」、仲間たちが頑張る理由までもがどんどん重なっていきました。そんな会話のなかで、生まれた一文があります。
世界で戦える日本企業を生み出し、日本の競争力を再び上げる。
それ以来、この言葉を軸に、UPSIDERは「日本を強くする」というスタンスを掲げるようになりました。「我々はなんのためにやっているのか。日本を強くしたいからだ」事あるごとに、この言葉に立ち返るようになりました。

このプロセスで、深く感じたことが、まさに冒頭の「三層構造」におけるPRの役割です。
PRの仕事は、「そこにある事実をどう調理して、どう出すかを考える」だけではない。「事実を言語化して、説明する」だけでもない。もちろん、メディアリレーションだけでもない。PRとは、思想を示し、システムとツールを導くための「道標を描く」仕事である。
私はこの時期に、PRという役割が経営と思想に深く踏み込むことの意味を、あらためて知ったのです。
みずほFGへのグループイン。でも、思想は決して変わらない
2025年7月29日、UPSIDERはみずほFGへのグループインを発表しました。私を含めたUPSIDERのメンバーはみんな、次なる挑戦にワクワクしています。
創業から7年、上場や独立成長を志向するスタートアップが多いなかで、メガバンクからのマジョリティ出資を受け入れるという選択は、少なからず意外に映った方もいるかもしれません。
この選択に込めた意思と、いま私たちが見ている未来についても少しだけ記しておきたいと思います。
まず誤解のないようにお伝えすると、UPSIDERはみずほFGの完全子会社になるわけではありません。創業者2名は経営に引き続き残り、カルチャーや技術ドリブンな組織、柔軟性などは保たれたまま、同じ志を持つパートナーとして、共に未来の金融インフラをつくっていく道を選びました。懐の深い意思決定をしていただいたみずほFGの皆様には本当に感謝するとともに、これからの共創に胸躍らせています。
PRとしても、みずほFGという日本有数のメガバンクが持つさまざまなアセットとUPSIDERの思想を重ね合わせることで、より本質的な変化を起こせるようになると確信しています。
このグループインを通じて、UPSIDERはより多くの中小・中堅企業、そしてその挑戦を支える金融機関や士業の方々とつながりを深めていくことになるでしょう。業務のスケール、関わる構造の深さ、提供するサービスの種類。そのすべてが、これまでよりも一層ダイナミックに変わっていくはずです。
一方で、なにひとつ変わらないものもあります。
たとえば、「挑戦者の“お供”でありたい」というスタンス。
たとえば、「世界で戦える日本企業を生み出す」という意志。
たとえば、「矛盾を引き受けて、両立しがたいものを両立しようとする」というUPSIDERらしさ。
そして何より、「挑戦者を支える世界的な金融プラットフォームを創る」というミッション。
私たちはここから、みずほFGをはじめとする強力な仲間たちとともに、世界的な金融プラットフォームを本気で目指していくことになります。その道のりにおいて、もっとも重要になるのはやはり「思想」だと思います。
noteシリーズで決意表明してくれた他のリーダーズをはじめ、システムを設計するみんなが、ツールを磨くみんなが迷わないように。社外で応援してくださる皆様が、小さな接点のすべてーどんな小さな言葉からも、UPSIDERというブランドを感じられるように。
それは、外に向けて語るタグラインやスローガンだけではありません。
サービスを語る言葉、経営を表す言葉、Slackで使われるふとした一言、採用時のスタンス説明…。そういった無数の“ことばの結晶”が、UPSIDERの文化や美意識をかたちづくってきたのです。
その言葉の根にある「思想」について議論し、ストーリーとして示す仕事を担ってきたのが、私たちPRチームに期待されてきた最大の役割だったと、私は考えています。そして、3年前から今日に至るまで、「思想を設計する」という目線から、PRを「経営に必要かつ重要な機能」と位置付けてくれ続けている創業者2名、ToruとTomoには、改めて感謝しています。
グループインは、ゴールではありません。
むしろ、UPSIDERらしさを保ち、UPSIDERらしさを拡張しながら、“次のあたりまえ”を社会に問い続けるためのスタート地点です。
経営やサービス開発が次の領域へと進むたびに、そこに「UPSIDERらしさ」を宿す問いを立てる。新しい挑戦のたびに、その意義を言葉にし、社会との接点で意志を伝える。UPSIDERという企業の“言語中枢”として、思想を翻訳しつづける。
それが、これからのUPSIDERが担うPRの役割です。
“当たり前になる日”へ向かって
私たちUPSIDERは、挑戦者の伴走者であると同時に、自分たち自身が挑戦者でもあります。
ここから激変していくであろう法人金融のマーケットで、UPSIDERという企業が持つ「思想・システム・ツール」の三層を貫く“UPSIDERらしさ”をどう届けるか。UPSIDERらしさを受け取っていただいた社内外の方々のなかに共感、愛着をどう育み、応援していただけるようになるのか。そして、日本で、世界で、私たちの挑戦がいずれ“当たり前”になる日をどう実現するか。
PRとして実感しているのは、「思想、システム、ツールを貫く“UPSIDERらしさ”を構想として言語化する」ことは、決して抽象論では終わらないということです。
社名すらろくに知られていなかった頃から、単に資金調達や事業成長の側面だけを伝えるのではなく、“挑戦者を支える” “日本を再び強くする” “金融プラットフォームをつくる”とストーリーを語ってきました。UPSIDERのPRチームはマスメディアを通じて多くの方にポジティブな認知形成を図ることを重視しているため、コミュニケーションの主な対象はメディア。記者の方々に、丁寧に、何度も、熱く、「なぜやるのか」「我々は誰なのか」という思想を伝えていきました。
結果として、2024年の年始に日経新聞の朝刊紙面、ビジネス面で8段の記事で扱っていただいた際にも「経営資源が十分でない中小企業や個人事業主の負担軽減」に触れていただきました。2024年に日経ビジネスで、当時 日経ビジネス電子版の編集長だった原さんによる電子版編集長インタビュー「『経済的な困窮が自身の選択肢を狭めた』 UPSIDER宮城社長が金融に込める思い」が公開された際にも、Toru(宮城)の人生にフォーカスいただきつつ「一社一社の挑戦に徹底して寄り添う」というコメントに光を当てていただきました。私たちの思想が、そしてそれが反映されたシステムやツールが、ただの「お気持ち」ではなく、一貫したストーリーとして社会に届き始めているのを感じています。
思い返せばキリがないほど、メディアサイドの多くの方々が、私たちの思想に共感いただき、応援してくださいました。私たちだけの力では到底届けられない多くの方々に、私たちのことを知っていただけたのは、ご興味をお持ちいただいたメディアの皆様のおかげです。改めて、広報責任者として、メディアの皆様にお礼申し上げます。
UPSIDERが、誰かにとって「よくわからないけどすごい会社」ではなく、「この国の未来を変える構想を持った、頼もしい企業」だと受け取られる存在になっていく。その日に向かって、PRは、思想に立ち返り、システムに反映させ、ツールとして届けていく、日本でもっとも強いPRチームでありたいと思っています。
さーーーてUPSIDERの第二章が始まります。いつだって、思想のある私たちでい続けられますように。やるぞ!
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