24時間動く相棒がほしい——コード書けないパパがAIエージェント「Hermes Agent 」を導入するまで
朝6時半、暗いリビングでスマホをいじる自分がいた
上の子(2歳)が7時に起きるまでの30分。これが私の唯一の自由時間です。
下の子はまだ新生児で入院中ですが、退院すれば2人同時対応の日々が始まる。家事に育児に仕事——自分のために使える時間は、まさに「すき間」と呼ぶにふさわしい数分だけ。
そんな中で私は考えていました。
「ChatGPTやClaudeは優秀だけど、指示を出すのが面倒くさい」
正確に言うと、ブラウザを開いてプロンプトを打ち込む——その一手間が、すき間時間には重すぎる。SlackやDiscordに常駐してて、話しかけたら即座に動いてくれる存在。「自分と同じように考えて、自律的に動いてくれる相棒」 がほしい。そう強く思うようになりました。
そして同時にもう一つ、譲れない条件がありました。
「できれば無料で」。
月々のサブスクはSpotify、Netflix、Disney+、iCloud、Adobe…とすでに積み上がっている。ここにAIのAPI費用がさらに乗っかるのは避けたい。最初から「使えば使うほどお金がかかる仕組み」にはしたくない。
そんなわがままな条件を満たしてくれそうな選択肢として見つけたのが、ローカルLLMで動くAIエージェントでした。
なぜHermes Agentを選んだのか
AIエージェントと一口に言っても、この世界にはいくつもの選択肢があります。Claude Code、Codex、OpenClaw——どれも話題のツールです。
その中で私がHermes Agentを選んだ決め手は、3つ。
① 自己成長型であること
使えば使うほど、自分の使い方に合わせてカスタマイズされていく。いわば「育てるAI」。最初から完成品である必要はなく、一緒に成長していけるところに魅力を感じました。
② 永続メモリを持っていること
過去の会話を覚えている。昨日の続きを今日話せる。「また同じ説明をしなくちゃ」というストレスから解放される。これ、会話型AIを使ったことがある人なら、どれだけありがたいか想像できるはず。
③ ローカルLLMにも対応していること
つまり、自宅のMacで動かせばAPI費用がゼロになる。前述の「できるだけ無料で」という条件に合致する。
ちなみに話題のOpenClawも検討しましたが、強力な自律動作が故に、セキュリティ面で少し懸念が残るという理由で導入には至りませんでした。
「だったら、エージェント専用のマシンを用意しよう」
そうして私はMac Mini M4(メモリ32GB)を購入し、Tailscaleでどこからでもアクセスできる環境を整えました。
インストールは公式の一行コマンドで一発
Hermes Agentのインストールは驚くほど簡単です。公式ドキュメント(hermes-agent.nousresearch.com)には、たった一行のコマンドが書かれています。
curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/NousResearch/hermes-agent/main/scripts/install.sh | bashこれをターミナルにコピペしてEnterするだけ。あとは自動でPython、Node.js、必要なライブラリがインストールされ、`hermes` コマンドが使えるようになります。
インストールが終わったら、シェルを再読み込み(`source ~/.zshrc`)してさっそく設定へ。
hermes model # 使うAIモデルを選ぶ
hermes tools # ツールの有効/無効を設定
hermes gateway setup # DiscordやTelegramとの連携設定
hermes config set # 個別の設定値を変更筆者の感想: これまでいろんなツールをインストールしてきましたが、ここまでの「迷う要素ゼロ」は初めてでした。特に「依存関係を全部自動で入れてくれる」のは地味にありがたい。ターミナルに抵抗がなければ、5分でセットアップが終わります。
そして私は、この後のモデル選びで大いに迷うことになるのです——。
まずはローカルLLMで無料運用を目指す
canirun.aiでモデルを物色
最初にやったのは、自分のPCでどのLLMが動くのかの調査。
「自宅のMac Mini M4でどんなモデルが実用的に動くのか」——これを調べるのに便利だったのが CanIRun.ai です。自分のPCスペックを選択すると、各種LLMがどの程度の速度で動作するかが一覧で表示されます。
Mac Mini M4のスペックを入力して出てきた候補の中から、いくつかのモデルをピックアップ。特に気になったのが Qwen(中国アリババ社製のオープンなLLM)でした。
Xでリサーチ → Qwen 3.6を試す
Xで「Qwen ローカルLLM 性能」などと検索すると、概ね好意的な評判。日本語の処理も悪くなさそう。
「よし、これでいこう」
Ollamaをインストールし、Qwen 3.6をダウンロード。Hermes Agentをインストールし、設定ファイルでOllamaのローカルエンドポイント(`http://127.0.0.1:11434/v1`)を指定。Discord Botのセットアップも完了し、いざテスト。
一言目は、ちゃんと返ってきました。
「やった……!」
その瞬間の達成感は今でも覚えています。コードが書けない自分が、自宅サーバーでAIエージェントを動かせている——それは小さな革命でした。
が、その喜びは長く続きませんでした。
二言目から地獄の401エラー
楽しく会話を続けようとしたその矢先、ターミナルにはこんなエラーが延々と流れ始めました。
⚠️ Non-retryable error (HTTP 401) — trying fallback...
❌ Non-retryable error (HTTP 401): HTTP 401: Authentication Fails,
Your api key: y is invalid「y is invalid」——APIキーが「y」だと怒られている。そんなキー、設定した覚えがない。
原因はおそらく、初期セットアップ時に「フォールバック先のAPIキーを聞かれたから適当に入れた」こと。ローカルLLMならAPIキー不要のはずなのに、設定のどこかでフォールバックの認証が走ってしまったのだと思います。
Gemma4も試すが…
「モデルが悪いのかも」と思い、GoogleのGemma4に切り替えて再挑戦。
結果は同じ。401エラーのループ。設定を何度見直しても、ゲートウェイを再起動しても、状況は変わりません。
加えて、そもそもローカルLLMの応答速度が実用的ではなかったという現実もあります。QwenにせよGemma4にせよ、Mac Mini M4で動かすと応答までに数十秒——会話のテンポとしてはかなり厳しい。直せたとしても、日常使いには耐えなかったでしょう。
「無料で、という理想には一旦区切りをつけよう」
そう決断して、私はAPI経由での運用に方針を切り替えました。
Deepseek APIへの方針転換——「あら不思議」
Xリサーチ再び
今度は「コスパ最強のAI API」をテーマにXでリサーチ。そこで何度も目にしたのが Deepseek の名前でした。
「性能に対して価格が破格」「OpenAIの1/10以下のコスト」「日本語も問題なく通じる」——口コミは上々。特に Deepseek V4 Flash は、入力100万トークンあたり$0.14という驚きの安さ。たとえ毎日そこそこ使っても、月々数百円〜数千円で収まる計算です。
「無料」には敵いませんが、「月にランチ1回分」のコストで実用的なAIエージェントが手に入る——そう考えれば、納得の数字です。
接続したら一発で動いた
Deepseekにアカウント登録し、APIキーを発行。Hermesの設定ファイルのAPIキーとベースURLを書き換えて、ゲートウェイを再起動。
すると——
「あら不思議、エラーが消えた」
あれほど悩まされた401エラーは嘘のように消え、会話はスムーズに流れ始めました。応答速度も体感で数秒以内。これが「ちゃんと動く」ということか、と妙に納得したのを覚えています。
この時の感情の対比を言葉にするなら——
Before(ローカルLLM時代):「動いた!…あ、固まった。 …あ、エラー。もう一回再起動…」
After(Deepseek API):「あ、動いた。普通に動く。なんか拍子抜けするくらい普通に動く」
地味だけど、この「拍子抜けするくらい普通」という感覚こそ、ちゃんと動いている証拠なんですよね。
設定項目ざっくり解説——「デフォルトで大丈夫」と「要設定」の見分け方
Hermes Agentをセットアップするとき、設定ファイル(config.yaml) にはたくさんの項目が並んでいます。初めて見ると「何が何だか…」となるかもしれません。
そこで、私が実際に設定した内容をもとに、「最低限これだけ押さえれば動く」リストを作りました。
🔵 絶対に設定が必要な項目
| 項目 | やること | 補足 |
|:-----|:---------|:-----|
| Model / Provider | 使うAIの選択とAPIキーの設定 | Deepseek推奨(コスパ最強) |
| API Key | プロバイダのダッシュボードから発行 | ローカルLLMの場合は不要(ただしフォールバック設定に注意) |
たったこれだけ。モデルとAPIキーさえ設定すれば、Hermesは動き始めます。
🟡 デフォルトのままでOKな項目(筆者実証済み)
次の項目は、私も特に設定を変えずに使っています。必要を感じたら後から変えれば大丈夫。
| 項目 | デフォルトで使える? | 気になる人向け補足 |
|:-----|:-------------------|:-----------------|
| Web Search(Firecrawl) | ✅ 要サインアップ+APIキー発行 | Firecrawl に登録してAPIキーを発行するだけ。数分で終わります |
| TTS(Text-to-Speech) | ✅ デフォルトのEdge TTSでOK | 音声読み上げ。設定不要で即使えます |
| Vision(画像認識) | ✅ 設定不要で使える | 画像の内容を読み取って説明してくれます |
| Discord連携 | ✅ Bot設定のみ | Discord Developer PortalでBotを作成し、トークンを設定すればOK |
| Home Assistant連携 | ✅ 既存のスマホ環境があれば | 長期トークンを発行して設定。Switchbotユーザーなら相性抜群 |
参考:外部サービス連携早見表
この表は、私の代わりにHermes Agentに設定項目を整理してもらったものです。
| サービス名 | 何ができる? | 初期設定 | 公式サイト |
|:-----------|:------------|:---------|:----------|
| Firecrawl | Web検索・ページ抽出—インターネットの情報を取得する | 要サインアップ+APIキー | firecrawl.dev |
| Edge TTS | テキスト読み上げ(標準) | 不要(デフォルトでOK) | Windows標準機能 |
| ElevenLabs | 高品質AI音声読み上げ(感情表現豊か) | 要APIキー(有料枠あり) | elevenlabs.io |
| Spotify | 音楽再生・検索・操作 | 要OAuth認証(少し手間) | お持ちのSpotifyアカウントで |
| Skills Hub | コミュニティのスキルを共有・ダウンロード | 要GitHubトークン | まだ設定試せてません💦 |
筆者的結論:最初はデフォルトでいい。動かしながら足せば間に合う。
全部を完璧に設定しようとすると挫折します。私もFirecrawlとDiscordだけ設定して、あとは使いながら「これあったら便利だな」と思ったものを追加していきました。
今、Hermesに何を任せているか
セットアップが落ち着いた今、Hermes Agentに任せている主な仕事はこちらです。
📝 記事のリサーチと下書き
noteの記事ネタをXでリサーチ→競合分析→下書き作成の一連のフローを任せています。「自動化・時短」と「育児・家事効率化」の2路線で、Xの悩み投稿とnoteの競合記事を照らし合わせて「ここに需要がある」というネタを発掘してもらう——そんな使い方をしています。
🏠 スマートホームとの連携
Switchbot(カーテン・温度計・ロック)やAlexaと連携し、エージェント経由でスマートホームを操作できる環境に。毎朝7:30の天気予報読み上げや、日の入り時刻に合わせたカーテンの自動開閉など、ルーティンタスクはほぼ自動化できています。
⏰ 定期タスクの自動実行
cron job機能を使って、毎朝7時にWikiの自動更新、毎日8時にトークン使用量のレポート作成——といったルーティン作業を任せています。人間がやると「あ、今日まだやってなかった」と忘れるような作業も、エージェントなら確実に処理してくれます。
「コード書けないけど導入したい人」へ——あなたにもできる
最後に、この記事を読んで「自分もAIエージェントを導入してみたい」と思った方へ。
必要なスキルセットは、ズバリ 「ターミナル(黒い画面)を怖がらないこと」 です。
具体的には:
コマンドをコピペできる(Ctrl+C / Ctrl+V)
エラーメッセージをそのままコピーしてGoogle検索orAIに聞くことができる
設定ファイルのAPIキーの部分を書き換えられる
これだけ。プログラミングの知識は不要です。私自身、コードは一切書けません。
あとは——もし躓いたら、検索するクセをつけること。Hermes Agentの導入手順はまだ日本語の情報が少ないですが、Deepseekの設定方法などは先人たちのポストがたくさんあります。「困ったら検索」——これ、自動化界隈では鉄則です。
