第16話:朝市と笑顔
年に数回夫婦で通う病院の帰り道。
先週末の土曜日は珍しく二人とも検査が早めに終わった。
「朝市がやってるね。天気もいいし、ちょっと寄ってく?」
主人に誘われて、帰りに朝市を散歩することにした。
午前9時過ぎ。7月半ばで猛暑が続く中、この時間帯は外を歩くことが苦にならない唯一の時間帯。涼しい風が髪を揺らしスーッと首に通る。
その町の中心にある大きな広場には、それぞれのお店が用意した大きな白いパラソルがそこら一面を覆っていた。
そこには衣類やインテリア雑貨、果物や野菜、ハムやローストチキンその他にも台所用品、お花など、ありとあらゆる物がお店の前に整然と並んでいる。
小さな朝市なので人も多すぎず、人混みが苦手な私にはとても心地が良い。
特に買い物をする予定もなく二人でのんびり歩いていると、人だかりのある果物屋さん。
「あれ?凄く人気だね。ちょっと見てみる?」
他にも果物屋さんはあるのに、そこだけにぎわっている。
そこには大きな桃やアプリコット、半分に切られた真っ赤なスイカや大粒のイチゴとチェリー。見ているだけで顔がほころぶ。
「みずみずしい~ 美味しそうだね」
思わずこぼれる主人との会話。
「美味しいかな?」
私が主人につぶやくと、
「ここの果物、美味しいですか」
と隣に立っていた奥さまにすぐさま質問する主人。(きっと国民性)
「とっても美味しいわよ!」
とおすすめモードで返事が返ってきた。すると
「はい。食べてみて。とっても美味しいから」
と果物屋さんが、かごに積まれていた大粒のアプリコットを一つとりだして、パコンッと二つに割って主人とその奥さんに差し出した。
「うん。美味しいよ。食べてみて!」
主人は私に半分かじったアプリコットを差し出した。
「美味しいー!こんな美味しいアプリコット食べたことない!」
一口かじった瞬間、程よい甘さの汁が「「じゅわっ」と口の中に広がった。
スーパーで買う、味の薄ーい、果汁の少なーい果物を食べ慣れている私は感動した!
特に最近は美味しい果物が見つからない……と嘆いていた。
「私は少し硬いくらいが好きだから柔らかすぎないのをちょうだい!」
そんな声が聞こえてきた。すると、果物屋さんはその注文にあった果物を手際よく見分けてサッと袋に入れた。
「あ~!こうやって自分の好みで注文するわけね!」
主人と顔を見合わせた。周りの奥様達と私たちは会話をしながら、和やかな雰囲気。
そこに、ご老人の女性とその娘さんの声が聞こえた。
「お母さん、ココは立ちっぱなしじゃ疲れるでしょ。あっちの陰のベンチで腰を下ろして待っていたら?」
「どうぞ。ここに腰かけて。あまり座り心地は良くないけどね」
そう言って、果物屋さんが果物が置かれていないテーブルの上をちょっと片づけて、ご老人にその場所を指さした。
「あ~ありがとう。助かるね~」
いつもの常連客かな?とても自然な感じで優しさが飛び交う。
私はますますこの果物屋さんが気に入った。
「何か買って行こうか!」
主人とすっかり意気投合!アプリコット、桃を2種類と.......
買い物リストを二人で考えていると、私たちの順番待ち番号が呼ばれた。
「アプリコットをかごいっぱい、すぐ食べられそうなもので。それから桃は2種類それぞれ8個ずつ。それもすぐ食べられるもので」
と主人が注文した。
「えっ?! こっ!こんなにたくさん買うのに一気に全部は食べられないよ。悪くなっちゃったらもったいないし!」
私がそう主人にちょこっと言ったら
「半分はすぐ食べられるもの。後の半分はちょっと固めで用意するね」
さすが果物屋さん!客の会話を聞いて、爽やかに解決策を提案してきた。
「それでお願いします!」
そんな時、私たちは二つに割れた真っ赤なスイカが気になった。
「どこから来たスイカかどうか、聞いてみようか?」
私たち夫婦は二人でコソコソ話をした。
「あのスイカはどこで取れたんですか?」
「この地域だよ。これはちょっと熟しちゃったから、もしよかったらタダであげるよ」と果物屋さん。
「えっ!嬉しー!全然スーパーで売ってるものと変わらないのに、タダでくれるの?!」
他の果物がこれだけ美味しいから、私たちはあの真っ赤なスイカも正直、気になっていた....…
スーパーで買うスイカに私たちは飽き飽きしていたし、スイカ好きの主人も美味しいスイカをずっと探していたから絶対にココのスイカを試してみたい!
「ありがとうございます!頂きます!」
そうやって満面の笑みで、私たちは朝市を後にした。
果物の香りがふわぁんと漂う大きな袋を両手いっぱいにぶら下げて帰宅した。
昼食を済ませた後、早速あのスイカがデザートに。
「美味しいーー!十分すぎるほど美味しい!これで売れないなら、私たちが今まで買っていたスイカはいったい何だったの?!!」
家族全員、大満足&幸せ~!
「今週は果物たくさん食べられるよー」
子ども達の前に朝、買ってきた果物を広げたら彼らの目が輝いた!
家族に幸せをいっぱい運んできてくれた、偶然見つけたあの朝市。
周りの笑顔と思いやりに癒されて。
果物のビタミンと人の優しさを思いっきり吸い込んだら、私の笑顔もいっぱい増えた。
「来週も朝市へ行こうね~」
土曜の朝市は、週一の私たちのお決まりスケジュールに決定!

最後までお読みい
ただきありがとうございます。感謝でいっぱいです♡
