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伊勢神宮より整った五芒星が、伊勢神宮の8.7km隣にあった

前回、伊勢神宮、熊野本宮大社、伊弉諾神宮、伊吹山、元伊勢皇大神社を結びました。

五角形の5辺は約109〜114km。長い線と短い線の比率は1.617で、黄金比の1.618にかなり近い。完璧な正五角形ではないけれど、地図に星が浮かんだように見えました。

では、これは本当に珍しい形なのでしょうか。

5つの場所を選べば、偶然でも五芒星は作れるのではないか。今回は、そこを確かめました。

先に言っておくと、私の予想は外れました。しかも、思っていたのとはまったく違う方向に。

候補を、神社と寺院だけに絞りました

どんな場所でも候補に入れると、比較の意味がぼやけます。城やダムと比べても仕方がない。

そこで今回は、文化庁の国指定文化財等データベースから、神社建築と寺院建築の座標付きレコードだけを集めました。

・神社 104地点、寺院 91地点
・同じ施設の重複を整理し、地点どうしが2km未満にならないよう調整
・これに近畿五芒星の5地点を加えて、合計 200地点

https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/index

伊吹山だけは神社でも寺でもありませんが、前回から頂点として固定していた場所なので、そのまま残しています。

大事なのは、背景の195地点を「先に」決めたことです。近畿五芒星がどう評価されるか分からない状態でデータを固定してから、計算しました。座標も全部、文化庁のデータベースから取っています。私の好みは入っていません。

200地点から5つを選ぶ組み合わせは、2,535,650,040通り。約25億通りです。

まず、無作為に選んでみる

完全にランダムに5点を選ぶ、というのを 1,400万回やりました。五角形として成立したものが340万件。

結果はこうです。

無作為に選んだ5点の五角形は、辺の長さのばらつきが中央値で180%。いちばん長い辺が、いちばん短い辺の3倍近い。要するに、ぐちゃぐちゃです。

「揃っているほう」だけを見ても、こうなります。

・上位10% → 辺のばらつき 109%
・上位1% → 65%
・上位0.1% → 45%
・上位0.01% → 30%
・近畿五芒星 → 4%

桁が違います。

そして正面からの比較。340万件のうち、近畿五芒星より辺が揃っていたものは——

0件。

角度で上回ったものが13件ありましたが、そのすべては辺がバラバラでした。辺と角の両方で勝ったものは、0件です。

つまり、サイコロを振って近畿五芒星を出すのは、ほぼ無理です。

私の「偶然でも作れるでしょ」という予想は、ここで崩れました。

でも、ここで終わらせてはいけない

正直、この時点で記事を書き終えたい気持ちになりました。「近畿五芒星はすごい」で終われるので。

でも、よく考えるとこの実験にはズルがあります。

サイコロを振るのと、近畿五芒星が見つかった経緯は、全然違うんです。

発見した人は、偶然に頼っていません。地図を眺めて、それっぽい場所を選んで、線を引いて、うまくいかなければ別の場所を試す。人間はそうやって探して見つけます。

だから本当に確かめるべきなのは、こっちです。

本気で全部探したら、もっといい五芒星は出てくるのか。

なので、やりました。25億3565万通り、全部です。

全部調べたら、2位でした

25億通りのうち、大半は五角形にすらなりません。「辺の長さがだいたい揃っていて、五角形として形が成立しているもの」だけを機械的に絞り込むと、生き残ったのは 632組でした。

25億分の632。この時点で、この形がどれだけ珍しいかが分かります。

そして632組を、正五角形からのズレが小さい順に並べました。

近畿五芒星は——

2位でした。

惜しかった、という話ではありません。1位を見た瞬間、私は椅子から少し身を乗り出しました。

1位は、近畿五芒星と「4点まで同じ」だった

これが1位です。

伊弉諾神宮 → 熊野本宮大社 → 庫蔵寺鎮守堂 → 伊吹山 → 元伊勢皇大神社

気づきましたか。

近畿五芒星と、4点まで同じです。

違うのは、たった1箇所。伊勢神宮の内宮が、庫蔵寺鎮守堂というお堂に置き換わっています。

庫蔵寺鎮守堂。三重県鳥羽市にある、国の重要文化財に指定された小さなお堂です。

伊勢神宮の内宮から、わずか8.7km。

たぶん、ほとんどの人は名前も聞いたことがないと思います。私も今回のデータで初めて知りました。

でも、このお堂を頂点にしたほうが、伊勢神宮を頂点にするより、整った五芒星になります。

勝っているのは、辺ではありません

ここは正確に書いておきます。

辺の長さだけを見ると、庫蔵寺鎮守堂版のほうが揃っていません。

・近畿五芒星 → 辺のばらつき 4.02%
・庫蔵寺鎮守堂版 → 7.45%

さっき「4%は桁が違う」と書いたばかりなのに、1位のほうが倍近くバラついています。

逆転しているのは、角のほうです。

内角の108度からの、いちばん大きいズレ。これはどちらも6.44度で、まったく同じでした。伊弉諾神宮の角です。この角は共通の4点だけで決まるので、同じになるのは当たり前でした。

違うのは、残りの4つです。

・近畿五芒星 → 5.33度、4.39度、1.59度、3.89度
・庫蔵寺鎮守堂版 → 2.48度、2.55度、2.51度、3.89度

庫蔵寺版は、4つとも2度台から3度台に収まっています。近畿五芒星のほうは1.59度から5.33度まで散らばる。角全体の揃い方で、辺の不利を押し返しているわけです。

私の採点は、辺のばらつきと角のずれを、両方まとめて一つの数字にしています。だから「どちらが整っているか」は、採点の仕方しだいで入れ替わります。

ちなみにGRID ATLASの分析機能でも、庫蔵寺鎮守堂版のほうがわずかに上に出ます。ただし差は2点足らずで、やはり互角です。

この話は、次回もう一度出てきます。

これは、否定ではありません

ここは誤解されたくないので、丁寧に書きます。

「伊勢神宮じゃなくてもいいなら、近畿五芒星なんてデタラメだ」——そう読む人がいるかもしれません。

でも私は、逆だと思いました。

五芒星の頂点は、「点」ではなかったのかもしれない。

半径10kmくらいの、ぼんやりした円。ここでは、言うなれば「聖域」と呼んでみたい。その中のどこを取っても、星はだいたい成立する。伊勢神宮でも、庫蔵寺鎮守堂でも。

だとすれば、頂点は伊勢神宮という建物ではなく、伊勢という土地そのものだと考えたくなります。

これは、話が小さくなるどころか、大きくなる方向です。

そして実際、そう考えたほうが自然な気もします。伊勢神宮の内宮と外宮も5kmほど離れていますし、熊野本宮大社は明治の水害で社地が動いています。神社は動くんです。1000年単位で見れば、建物の位置なんて誤差のようなものかもしれない。

半径10kmほどの「聖域」の中に、たまたま日本一有名な神社があった。そんなふうにも考えられます。

「誤差でしょ?」に、答えておきます

当然、こういう疑問が出ます。「座標なんて数km変わるでしょ。順位に意味あるの?」

なので、200地点すべての座標にランダムな誤差を加えて、3000回ずつやり直しました。

・誤差0.2km → 近畿五芒星は1〜4位/庫蔵寺鎮守堂版に勝つ確率 9%
・誤差0.5km → 1〜4位/28%
・誤差1km → 1〜9位/40%
・誤差2km → 1〜24位/44%

読み取れることは2つあります。

近畿五芒星が「632組の頂点付近」にいるのは、揺るぎません。座標が1kmずれても、9位以内には残ります。この形の異常な整い方は、誤差では消えません。

そしてもうひとつ。1位か2位かは、決着しません。庫蔵寺版に勝つ確率は、どう測っても9〜44%の間。どちらが上かは、誤差の中に埋もれています。

だから正確に言うなら、こうです。

近畿五芒星と庫蔵寺鎮守堂版は、どちらが綺麗か決められないくらい互角。そして庫蔵寺鎮守堂を知っている人は、ほとんどいない。

数字では見えないもの

632組の中には、他にもいろいろな組み合わせがありました。

たとえば5位は、一宮神社本殿、金剛三昧院経蔵、日吉大社東本宮、本願寺本堂、本山寺本堂の5地点。どれも由緒ある神社と寺です。

でも、この5つを最初から結ぼうとは、なかなか思いません。

一方、伊勢、熊野、淡路島、伊吹山、元伊勢には、それぞれに名の知られた由緒があります。

ここは少しだけ慎重に考えたい。

この5地点に、昔から一つの物語があったことを示す証拠は、今回の調査では確認できていません。伊勢には伊勢の由緒があり、熊野には熊野の信仰がある。淡路島にも伊吹山にも元伊勢にも、それぞれ別の物語がある。

別々の物語を持つ場所が、地図の上で一つの形になった。その瞬間、私たちはそこに関係性を感じ始めます。

不思議なのは、古代の共通物語が見つかったことではありません。

共通の物語が確認できないのに、5つが一つの星に見えてしまうことです。

近畿五芒星には、何かあるのか

今のところ、答えは分かりません。

今回の結果だけで、古代の設計図や超自然的な力を語ることはできません。候補地点の集め方も、採点方法も、今回私が決めたものだからです。

それでも、事実として残るものはあります。

神社と寺院だけを集めた200地点、25億通りを全部調べて、近畿五芒星は632組の頂点付近にいました。無作為に選んだ340万件の中には、一つも上回るものがありませんでした。

この形が、かなり整っていること自体は本物です。

そして同時に、8.7km隣の無名のお堂を使えば、同じかそれ以上の星が引けることも分かりました。

頂点は点ではなく、半径10kmほどの「聖域」の中にあるようにも見えます。

その「聖域」の中から、私たちは伊勢神宮を選んだ。庫蔵寺鎮守堂ではなく。

もしかすると、不思議さはそこにあるのかもしれません。

一度見えた星は、なかなか消えません。

自分でも確かめられます

ここまで読んで、たぶん一番腑に落ちないのはここだと思います。

「8.7km動かしただけで1位になるって、どういうこと?」

文章で説明するより、やってもらったほうが早いです。

⛩️ 頂点を1つだけ差し替えてみる

https://gridatlas.github.io/GRID_ATLAS/?preset=kinki-pentagram-swap

開くと、近畿五芒星が閉じた五芒星として引かれています。そのすぐ隣に、線のつながっていない点が1つだけ置いてあります。庫蔵寺鎮守堂です。

やることは2つだけ。

・伊勢神宮につながっている線を、軽く長押しする
・そのまま庫蔵寺鎮守堂までドラッグして、指を離す

これを2本ぶんやると、星の形が変わります。

その形が、25億通りの1位です。

伊勢神宮は、線の外れた点としてその場に残ります。8.7km。画面の上ではほとんど動いていません。それでも1位と2位が入れ替わる。

元に戻したくなったら、同じURLをもう一度開いてください。

GRID ATLASは、登録もインストールもいりません。ブラウザだけで動きます。

他のプリセットも置いておきます。
つなげたい地点を選択して「接続」ボタンを押してみてください。

⛩️ 3位・中部の五角形

https://gridatlas.github.io/GRID_ATLAS/?preset=kinki-pentagram-rank3-chubu

⛩️ 5位・名もなき五角形

https://gridatlas.github.io/GRID_ATLAS/?preset=kinki-pentagram-rank5-nameless

⛩️ 記事1で使った近畿五芒星

https://gridatlas.github.io/GRID_ATLAS/?preset=kinki-pentagram

伊勢内宮を外宮に替える。熊野本宮を別の社に替える。自分の地元の神社や寺を加える。

線を引き直せば、結果も変わります。

それでいい。

数字を信じるためではなく、自分で線を引くためのデータにしました。

あなたの地図には、どんな星が見えるでしょうか。

次回:200という枠は、私が決めたものです

最後に、自分の結果を一度疑っておきます。

近畿五芒星は2位でした。25億通りを全部調べた上での、2位です。

ただし、この200地点という枠自体は、ひとつの選択です。地点を足せば順位は変わります。

文化庁のデータベースには、まだ拾っていない神社と寺が残っています。200という数字に、それ以上の根拠はありません。私が決めただけです。

なので次回は、候補を500地点に増やします。

組み合わせは25億通りから2552億通りへ。ちょうど100倍です。今回の200地点はそのまま全部含めるので、比べる相手が増えるだけ。近畿五芒星そのものは1ミリも動きません。

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