頑張っているのに儲からないのは、利益が見えていないからかもしれません
これまで、売上管理や支払管理に関する「事務力」の大切さについてお話ししてきました。
今回は、その続きとして「利益管理」についてです。
売上があっても、最後に利益が残らなければ、事業を継続していくことはできません。
それにもかかわらず、小さな会社、ひとり社長、個人事業主ほど、日々の忙しさに追われ、利益をきちんと管理するところまで手が回っていないことが少なくありません。
「仕事はある」
「売上もゼロではない」
「でも、思ったほど儲からない」
そんな状態が続いているとしたら、それは努力が足りないからではなく、利益を見える化し、残していく仕組みが整っていないことが原因かもしれません。
利益は、決算や確定申告のときに初めてわかるものではなく、本来は日々の仕事のなかで把握し、経営判断に活かしていくものです。
そこで今回は、利益を出す・残すために見直したいポイントを、5つに絞ってお伝えします。
事業の目的は「売ること」ではなく「利益を残すこと」
事業を行う目的は、商品やサービスを提供し、その対価として利益、すなわち「儲け」を生み出すことです。
そして、その利益は、経営者自身の収入や、会社の将来への投資余力に直結します。
ところが実際には、「今月は儲かったのか」「この仕事は本当に利益が出ているのか」が、はっきりしないまま事業を回しているケースも少なくありません。
経営者の勘や経験はもちろん大切ですが、それだけに頼っていると、気づかないうちに利益を取りこぼしてしまうことがあります。
特に、小さな会社やひとり社長、個人事業主は、営業も現場も事務も、すべてを少人数で回していることが多いため、利益管理まで手が回らないのが現実です。
その結果、決算や確定申告のタイミングで初めて数字を見て、
「こんなに利益が出ていなかったのか」
「逆に利益が出すぎていて、もっと早く対策しておけばよかった」
と後悔することになります。
そうならないためには、日々の仕事のなかで、利益を把握できる体制を整えていくことが欠かせません。

1|月次決算を翌月1週間以内に
利益管理というと、まず「月次決算」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
理想を言えば、月次決算は翌月3営業日〜1週間以内に、だいたいの数字が固まっている状態がベストです。
けれども、税理士任せになっていて、前月の数字が見えるのが1か月後、あるいはそれ以上先になってしまっている会社も少なくありません。
ご存じの通り、大きく捉えれば、
利益 = 売上 − 費用
です。
売上も費用も集計できていなければ、利益は見えません。
つまり、利益管理の第一歩は、「数字が早く見える状態をつくること」です。
そのためには、たとえば次のような体制づくりが必要です。
クラウド会計ソフトを活用し、こまめに取引を入力する
税理士に記帳代行を依頼している場合でも、自社で会計データを確認できる状態にしておく
税理士へ提出すべき資料をため込まず、毎月すみやかに渡す
集計結果だけでなく、必要に応じて元帳レベルまで確認できるようにしておく
月次決算書で勘定科目の合計値だけを見ても、「なぜそうなったのか」が分からないことがあります。
原因を探れる状態にしておくことで、単なる報告書ではなく、経営判断の材料として活用できるようになります。
また、自前で会計ソフトを使っていれば、データをExcelやスプレッドシートに出力して、自社用に見やすく加工したり、簡単なシミュレーション資料をつくったりすることもできます。
月次決算は、単なる経理業務ではありません。
利益を把握し、次の一手を考えるための土台です。
まずは「早く数字を見る」ことを意識してみてください。
2|商品・サービスごとの粗利を把握する
商品やサービスごとの粗利は、把握できているでしょうか。
商品販売業であれば、
粗利 = 売価 − 仕入原価
で比較的わかりやすく計算できます。
一方で、サービス業や製造業、受託型の仕事では、原価の把握がぐっと難しくなります。
なぜなら、原価には材料費や外注費だけでなく、工数や時間といった見えにくいコストも含まれるからです。
そのため、「なんとなくこの案件は儲かっていそう」「この仕事は忙しいから利益もあるはず」といった感覚で判断してしまいがちです。
けれども実際には、
売上は大きいのに、手間がかかりすぎて利益が薄い
価格は低いけれど、作業負担が少なく粗利は高い
よく売れている商品なのに、実はほとんど利益が出ていない
案件ごとに収支を見ると、赤字の仕事が混ざっている
ということは、珍しくありません。
特に、ひとり社長や少人数の会社では、案件管理と原価管理が曖昧なまま進んでいることが多いように感じます。
どの仕事にどれだけ時間がかかり、外注費や材料費がいくらかかっているのかが見えていないと、「頑張っているのに儲からない」状態になりやすいのです。
まずは難しく考えすぎず、Excelやスプレッドシートでかまいません。
商品ごと、サービスごと、案件ごとに、最低限次のような項目を整理してみるとよいでしょう。
案件名・商品名・サービス名
売上金額
材料費・仕入原価
外注費
工数や作業時間
粗利額
粗利率
案件管理というと、進捗だけを追って終わってしまうこともありますが、本来は「進んでいるか」だけでなく、「儲かっているか」まで見て初めて管理だと思います。
決算書に出てくる利益額は、あくまで全体の合計値です。
どの商品・どのサービス・どの案件が利益を生み、どこに問題があるのかは、そこからは見えてきません。
もし取引量が多く、Excelやスプレッドシートでは追いきれない状況であれば、その時点でシステム導入を検討すれば十分です。
最初から高価な仕組みを入れなくても、まずは自社で見えるようにすることが先です。

3|現状分析→シミュレーション→経営判断を習慣化する
月次決算ができるようになり、商品・サービス・案件ごとの粗利が見えるようになると、現状が少しずつ把握できるようになります。
どの商品の利益率が高いのか。
どの取引先の売上への影響が大きいのか。
どの仕事が忙しいわりに利益が残っていないのか。
こうしたことが見えるようになると、次に必要なのは、数字を見て終わりにしないことです。
大切なのは、その数字をもとに、
このまま続けるのか
値上げを検討するのか
受注のしかたを変えるのか
人の使い方や時間配分を見直すのか
といった経営判断につなげることです。
たとえば、
このサービスの単価を5%上げたらどうなるか
外注費が増えても利益は確保できるか
利益率の高い案件に営業を集中したらどうなるか
赤字になりやすい仕事を減らしたら全体の収益はどう変わるか
こうしたことを、Excelやスプレッドシートでざっくり試算するだけでも、見える景色はかなり変わります。
経営判断というと大げさに聞こえるかもしれませんが、要は感覚だけで決めないということです。
過去の数字を見て、少し先を予測し、その上で判断する。
この流れが習慣になると、利益はずいぶんコントロールしやすくなります。
忙しいと、どうしても「起きたことに対応する経営」になりがちです。
しかし、利益を残していく会社は、「数字を見ながら先回りして決める経営」をしています。
4|スピードを重視し、時間効率を上げる。“時は金なり”
利益管理というと、どうしても売上や原価や経費の話に意識が向きがちです。
でも、小さな会社にとって見落とせないのが、時間の使い方です。
経営者や少人数のスタッフが限られた時間のなかで仕事をしている以上、時間のロスは、そのまま利益のロスにつながります。
たとえば、
請求書の発行が遅れる
入金確認が後回しになる
見積作成に毎回時間がかかる
必要な資料や数字がすぐ見つからない
同じ内容を何度も転記している
案件ごとの状況確認に無駄な時間がかかる
こうした一つひとつは小さなことでも、積み重なると大きなコストです。
特に、ひとり社長や個人事業主にとっては、自分の時間そのものが原価です。
本来なら営業、商品づくり、お客様対応に使える時間を、探し物や二重入力、後追い確認に使ってしまえば、その分だけ利益を生む時間は減ってしまいます。
だからこそ、利益を残すには、
「何にいくらかかったか」だけでなく、
「何にどれだけ時間を使っているか」も見ること
が大切です。
たとえば、
紙で管理しているものをデータ化する
同じ情報を何度も入力しない仕組みにする
見積書や請求書はテンプレート化する
案件管理表と収支表を連動させる
毎週、短時間でも数字を見る時間を確保する
こうした小さな改善でも、時間効率は大きく変わります。
「時は金なり」という言葉はよく知られていますが、小さな会社ほどこれは現実的な意味を持ちます。
時間の無駄を減らすことは、利益を守ることでもあるのです。
5|法務・税務・その他リスク管理にも注意を払う
利益を出すことは大切ですが、それと同じくらい大切なのが、利益を失わないことです。
そのために欠かせないのが、法務・税務・その他のリスク管理です。
せっかく利益が出ていても、
契約内容が曖昧で代金回収がうまくいかない
経費処理や税務処理に誤りがある
必要な届出や手続きをしていない
情報セキュリティ対策をしていない
思わぬトラブル対応で、本業の時間とお金が奪われる
ということが起きれば、利益は簡単に削られてしまいます。
小さな会社では、目の前の仕事が優先になり、「細かいことは後で」となりがちです。
しかし、契約、請求、入金、証憑保管、税務スケジュール管理といった地味な部分ほど、後から大きな差になります。
特に税務は、「知らなかった」「ついうっかり」がそのまま不利益につながることがあります。
また、契約の詰めが甘いまま仕事を進めると、売上は立っていても、回収できずに終わるということもあり得ます。
利益管理というと会計だけの話に思われがちですが、実際には、
法務・税務・事務の整備まで含めて、利益を守る体制と考えたほうがよいでしょう。
利益を出すだけでなく、利益を失わないための備え。
これもまた、事務力の大事な役割です。
利益管理は「経理の仕事」ではなく「経営そのもの」
ここまで、利益を出す・残すために大切な5つのポイントを見てきました。
数字を早く見えるようにすること
商品・サービス・案件ごとの粗利を把握すること
現状分析とシミュレーションを習慣にすること
時間効率を見直すこと
リスクを管理して利益を守ること
どれも特別に難しいことではありません。
けれども、日々忙しいなかでは後回しにされやすく、その結果、「売上はあるのにお金が残らない」という状態が起こります。
利益管理は、経理担当者や税理士だけが関わるものではありません。
本来は、経営者自身が把握し、判断に活かしていくべきものです。
もちろん、最初から完璧である必要はありません。
まずは月に一度、数字を見る。
商品ごとの粗利をざっくりでも把握する。
案件ごとに収支を意識する。
そんな小さな一歩からでも、利益の残り方は変わっていきます。
≪おわりに≫
売上を伸ばすことも大切ですが、事業を続けていくうえでは、「利益をきちんと残すこと」が欠かせません。
そして利益は、決算のときに偶然残るものではなく、日々の管理のなかで積み上げ、守っていくものです。
小さな会社やひとり社長、個人事業主ほど、目の前の仕事に追われて、利益管理が後回しになりがちです。
けれども、だからこそ、月次で数字を見ること、粗利を把握すること、時間効率を見直すこと、リスクに備えることが、あとから大きな差になります。
「頑張っているのに、なぜか儲からない」
もしそう感じているなら、売上だけではなく、ぜひ一度、利益が残る仕組みがあるかを見直してみてください。
事務を整えることは、単なる裏方の作業ではありません。
会社のお金を守り、未来をつくるための、大切な経営そのものだと思います。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます! 