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サッカーは「ボール」を見ていると上手くならない ― 動きながら考えるサッカー ―

少年サッカー編・序
足が遅かった私が、速く走れるようになるまで

『遊びの中にしか存在しないサッカーがある』シリーズでは、私の実体験をもとに、
私の視点で見てきたことを書いてきました。

ここからは、そこから言語化できた
「構造」や「原理」の部分を書いていこうと思います。
サッカーを題材にしますが、スポーツや、チームで何かをする場面全般にも、
通じる話になるかもしれません。

今でこそ、私は「動きながら考える」という感覚を当たり前のように語っています。
ですが、そのずっと前、もっと根っこの部分に、ひとつの原点があります。

それは、足が遅かったことです。

小学1年のころ、私はクラスでもかなり足が遅い方でした。
運動が嫌いだったわけではありません。
ただ、身体がついてこなかった。

今思えば、筋肉の発達が遅かったのだと思います。
どれだけ一生懸命走っても、周りの子に簡単に抜かれていく。
「頑張ればどうにかなる」という感覚は、まだありませんでした。

転機は、小学2年のときでした。
担任の先生が、何気ない一言をくれました

「足が速くなりたかったら、掃除の時間に雑巾がけをするといい。
足腰が鍛えられるからな」

そのときの50メートル走は、10秒台後半。
正直、かなり遅い部類でした。

でも私は、その言葉を信じて、
毎日の掃除で雑巾がけを続けました。

雑巾がけは、手が汚れる、疲れるという理由から、
クラスメイトにはあまり好まれません。
だから私は、「チャンスだ!」と思い、率先して雑巾がけをしました。

床に手をつき、低い姿勢で前に進む。
太ももが張り、息が上がる。
それでも、やめませんでした。

3年生で測った50メートル走は、9秒台半ば。
1年で、1秒以上縮んでいました。

このとき、私は初めて知りました。

身体は、使い方で変わる。

それから6年生まで、雑巾がけは続けました。
その結果、6年のころには、50メートル走は7.5秒まで伸びました。

特別なトレーニングをしたわけではありません。
ただ、日常の中で、足腰を使い続けただけです。

正直に言えば、
「雑巾がけをすれば足が速くなる」という
直接的な科学的根拠は、私も見つけられませんでした。

ただ、雑巾がけに近い動作は、
四肢を使った全身運動(四肢運動)に分類されます。

四肢運動は、

・体幹の安定

・バランス能力

・柔軟性

といった、走るための基礎要素に関わることが、
運動科学の分野では指摘されています。

また、短距離走においても、
体幹の働きと走る姿勢が重要であることは、
多くの解説で共通しています。

私の場合、雑巾がけを通して、
「走るための土台」が無意識のうちに作られていたの
だと思います。

そして後に、高校の体育の授業で、
担当教師だった陸上部の顧問から、こう言われました。

「タケの走り方、きれいだな」

走る姿勢も、体幹が鍛えられた結果だったのだと思います。

今は、「子どもに掃除をさせるのはかわいそうだ」と言う人もいます。
考え方は、人それぞれだと思います。

ただ、私にとって、あの時間は、
自分の身体と初めて向き合った時間でした。

足が遅かった私が、速く走れるようになった。
そこから、すべてが始まっています。

空間を見ることも、関係を読むことも、
まずは動ける身体があってこそです。

考える前に、走れること。
見る前に、動けること。

私のサッカーは、ここから始まりました。

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