ディック・ブルーナの明快な絵はマティスのフォービズムやモンドリアンらのデ・ステイルの影響を受けているらしい
はじめに
絵本の有名なキャラクターがいくつかあたまに浮かぶ。ディック・ブルーナの描く愛らしいミッフィーたちもそのひとつ。じつに明快な色づかいとかたち。シンプルだが、それだけに物語に登場する正面を向くキャラクターの心情をさまざま思い描ける。
簡素化は逆に深みを与えうる。世で人気の絵本はおとなが目にしてじゅうぶんにその内容をたのしめる。こどもたちは想像力をふくらませ、そんな世界に惹かれるもの。
きょうはそんな話。
色づかいは
たとえばミッフィー(うさこちゃん)ならば基本は赤い単色のワンピースが基本。赤・黄・青・緑・茶、灰そして輪郭線や目・鼻の黒。これがすべて。ブルーナの制作するようすを写真入りで説明している本(1)を見ると、ていねいにえんぴつで下書きした線を時間をかけてペンで水彩画用の厚紙に清書。
さらに透明フィルムに焼きつけ、できた面に指定した色を色紙を切りぬいてフィルムの下にあてる。
いずれも彼自身がひとりでおこなう作業。本の原稿として仕上げるまでの工程をほぼ変えずにそのままつづけたらしい。
手書きの線
キャラクターをかたちづくる輪郭はしっかりしている。ふとい線でもって明確に内と外を区切る。そこへ色紙を下からあてることで、まったく色むらのない色面ができあがる。この明快さこそブルーナの特徴かもしれない。
そしてこのシンプルで鮮やかな色づかいや明快さの原点は?フォービズムのマティスやピカソらに強い影響を受けたと彼自身が述べている(1)。さらにブルーナの出身国で起こったピエト・モンドリアンをはじめとするデ・ステイルとよばれる抽象芸術運動の作品にも共鳴するところがあったという。
絵本として
本の制作にあたり、配色をかなり注意深く選んだと思われる。彼の絵本をめくるとさまざまな背景色が選ばれている。そのときどきの場面の状況に応じてそれらの色は選ばれている。とくに赤を背景としたときには、その場面が絵本のなかで山場にあたる部分といえそう。
基本的にハッピーエンドで終わる物語だが、そのなかでもこころあたたまる状況を描きたいときに「赤」が採用されている。背景色ひとつとってもさまざまでそれぞれの物語の内容と深く関わる。読み手に向けて絵をつうじ舞台を演出しているかのよう。
高い完成度
シンプルでありながら完成度がたかい。それでも登場するキャラクターはいつものとおり正面をみつめている。描きすぎていない世界には想像の余地がじゅうぶんにある。一見すると表情を変えていないかのように見えるキャラクターたちだが、物語の進行とともにじつにこまやかな心情や感情の変化を鮮やかな色づかいをつうじてあたえてくれる。いったいこどもたちはそこでなにを思い浮かべるのだろう。
引用
(1)ディック・ブルーナのすべて All about Dick Bruna 講談社(1999)
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