共通テスト受験でみおとしがちなスタナイン方式による段階表示の境目とは
はじめに
このところ最難関大学をめざす生徒たちの指導の機会にめぐまれ、さまざまな気づきがありました。
東大・京大、その他の医学部など最難関大学や学部に入学をめざす層はごく少ないと思われがちですが、じつはけっこういます。ざっとみつもると毎年1万人以上の生徒たちがそこをめざしています。
それらの大学・学部受験希望の生徒むけの出版物や、予備校・塾や家庭教師などの興隆を想像していただければおわかりいただけるでしょう。わりと多いもの。
猫の目のように変わる受験制度。もはや日本の受験のしくみを理解できれば大学入学できるのではないかと思えるほど。
いくつかクリアしたい点について、受験生ならびに保護者むけの情報を提供します。今回はわたしの気になるうちのひとつを。
注意)現在の高1の生徒に関しては履修する教科・科目名がことなります。ここでは現在の高2生以上(2022.7現在)対象としてお読みください。
最難関大学をめざすうえで
国内の最難関大学受験生の指導に限ったお話です。すでに一部は公知されたごくあたりまえのことにすぎません。その点で一部の方にはご期待には添えない内容でしょう。
じつはわたしは国内の大学よりも、海外の大学を志望する生徒たちへの指導法はどうあるべきかに興味を移しつつあります。
話をもどしますと、国内最難関の大学をめざす際に落とし穴になりかねないのに見落としそうなところがあります。
今回はそのことにふれます。
入試の過去問
過去のデータからお示しするとこの夏休みは高3生にはしあげの時期。わたしの主宰する学習サポートは現役生のみなので、高2から高3春ごろに受験勉強のピークをむかえます。
そして本番の前年に1度受験してもらうぐらいのこころづもりでスケジュールをくんでいます。すでにしごとの比重は高2生にうつる時期。
この層の高2生たちは、この夏にほぼ高校内容を終えて確実にレベルをあげつつあり、Sレベルの入試の過去問などに取り組みます。そしてそこそこ解けることに自信を持ちつつある時期といえます。
共通テストの対策は
ところが、こういった最難関を受ける際に軽々に考えがちなのが共通テスト。マークシートなので軽く考えがちですが、とくに高1生は部活などがあり、その目標に向けた方策と効率的な工程表が必須のもの。
現役生にとっては高2の春~夏までには共通テストで、88~90%に届かせたいところ。受験1年前で、共通テストは合格ラインに達するぐらい。
何しろほとんどの共通テストの試験範囲は高1レベルですから、最難関以外のSレベル大上位合格ラインを早いうちに超えたいもの。同時にSレベルの2次試験合格ラインを高3になる前にはクリアできると目標が見えてきます。
そして高3の1年間を足踏みしたつもりで第一志望校A判定を取りつづけ、大学内の奨学金を成績優秀者として獲得できるようになろうと目標づけしています。
じつは、これだけ用意周到の対策をして2次試験の過去問題が解けるからといっても、共通テストで目標どおりとれるとは限りません。どうしてでしょう。
2次試験内容はクリアしているのに
なぜならば、多くの生徒が共通テストレベルが9割に達した時点で安心しがちで、その後のダメ押しをやっていないか、おろそかにしている傾向があります。
じつは今回お伝えしたいことはこうした高い目標をめざしているはずなのに、共通テストをあまりに軽くみてしまいがちな点です。「足をすくわれる」とはこのことではないでしょうか。
共通テストは、長く使われ「枯れて」「もまれた」センター試験とはことなり、導入の経緯をふくめて制度のたてつけに問題をいくつかかかえています。
とくに高1生は新課程の教科内容ですし、情報Ⅰが教科「情報」としてくわわる共通テストの変化の年。とくに前準備がだいじ。
じつはすでにその手順でいくと情報Ⅰをそろそろ完成にむかわせたいのに、共通テストレベルの参考書や問題集は充実しているとはいえない状況。地理総合などもそう。書店でたずねてもその情報すらないところもあるぐらい。
受験生にいらぬ不安を与える気は毛頭ありませんが、一般的な注意やそれを避けるすべはもっておくにこしたことはありません。
スタナイン方式とは?
そのひとつをあげましょう。
令和3年度から、大学入学共通テストについては獲得した点数を段階表示換算表を用いて段階的に1~9段階で換算して総合成績に加味、合否判定の資料となります。
⑴ 段階表示について 段階表示は,各大学の入学者受入れ方針に応じた,受験者の多様な評価(方法)に活用できるよう, 従来の科目別得点に加えて,全体における各受験者の位置づけを示すものです。 なお,試験成績としては「科目別得点」における 1 から 9 の 9 段階として表示します。 また,理科①については,「合計点」においても 1 から 9 の 9 段階として表示します。
そこではスタナイン方式という9段階での評価法に換算される方式をとるとアナウンスされています。以下が大学入試センターからの令和4年度用の換算表です。
https://www.dnc.ac.jp/sp/albums/abm00040263.pdf
こちらは同センターの令和4年度の案内の一部です。
https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00038526.pdf&n=08_%E8%A9%A6%E9%A8%93%E5%AE%9F%E6%96%BD%E5%BE%8C.pdf
スタナイン方式については、入試センターの受験案内原文を引用します。
「スタナイン(Stanine)」とは,分位点による区分法の一つであり,受験者を得点順におおよそ 4,7,12,17,20,
17,12,7,4%の群に分割し,科目別得点を得点の低い方から順に 1 から 9 の 9 段階に換算する方式です。
換算表については影響が大きいので現物をお示しできませんので、上記のURL先にとんでご確認しながらご覧ください。たとえば数学Ⅱ・数学Bでは96点ならば最高の9段階を獲得できますが、95点ならば8段階となります。
(注意)この換算表は毎年、試験ごとに異なりますので、あえて過去の令和3年度版で説明しております。受験の際にはかならず受験された年度のものをご利用ください。
段階表示方式の注意すべきところ
この段階表示の非情なところは9段階の境目のところの点数で1段階違ってくる点です。これは最難関をめざす上では大きく響きます。
たとえばこうです。
ここに、典型的な理系受験生AさんとBさんがいるとします。ここでは1年前の令和3年度の資料にもとづいて仮の計算を行なってみましょう。
(Aさん)
国語:171、地理B:84、数学Ⅰ・数学A:92、数学Ⅱ・数学B:96、物理:92,化学:91、英語リーディング:95,英語リスニング:85 合計806点 換算段階すべて「9段階」。
(Bさん)
国語:170、地理B:83、数学Ⅰ・数学A:91、数学Ⅱ・数学B:95、物理:91,化学:90、英語リーディング:94,英語リスニング:84 合計798点 換算段階すべて「8段階」。
ここで注意願いたいのは9段階に評価し直した点数をどうあつかうか否かについて。上記の資料中に掲載されているのでそちらを熟読ください。各大学案内などでとりあつかい法など熟知しておいてください。
AさんはBさんとくらべて、各教目の素点はごらんのとおり1点ずつ多い結果でした。
やっていいかどうかはべつとして単純に段階をすべてたしてみましょう。8科目で段階を合計するとAさん:72段階に対し、Bさん:64段階となります。
つまり合計素点ではAさんとBさんではたった8点の差(806-798=8)が、(極端な例かもしれませんが)段階評価上では8段階のひらき(72-64=8)になります。ちなみに8段階の差とはほぼ1科目分のちがいです。とても大きな差。
したがって自己採点の誤差については、いままで以上に注意が必要になります。これまでの自己採点では実際の点数との誤差が数点以内であれば、一次試験の場合には配点の重みづけは小さく、合否にはさほど大きな影響はなかったかもしれません。
ところが段階の境目にいる受験生にとっては、場合によっては1科目分の差になり、大きなひらきといえるでしょう。ボーダー付近の1点のおもみがより大きく感じられます。
逆にほんのごくひとにぎりの最上位の生徒は100点満点でなくてよくなるかもしれません。 数学Ⅰ・数学Aは92点でも100点でも「9段階」です。
満点を毎回取りにいきたい気持ちはわかりますし、その心意気や意義も大事にしたいところですが、95点到達とくらべて必要とする労力が格段に大きくなります。
現実をみつつ、とりこぼしなく国語や社会などの基本を押さえつつ、おしなべて各教科で9段階を確実にとりにいく方に労力を使うとよさそうです。
さらに9段階目を得られる最低点は科目によってことなり、たとえば世界史では97点ですが、地理Bでは84点です。各自の科目の選択は各自の適性をふくめてカギとなるかもしれません。
素点合計800点前後(得点率88~92%)あたりは最難関大学や医学部の共通テストのボーダーライン近傍です。しかも共通テストにかわり日が浅く、さまざまなことが起こりそうです。
この段階表示方式は令和3年度以降の受験生にとり、あまり世間でも注目されていませんが、ひとつのマークすべき点といえるでしょう。
共通テストにひそむべつの注意点
比較的解答時間に余裕のある2次試験に比べて、共通テストは事務処理能力の検査といえます。高速かつ正確に解ききる力が求められます。とくに数学がそうです。それには多面的に見る能力や適した解き方を選ぶ力が試されます。
数学Ⅱ・数学Bではべつの解法でも解けると検算になりますし、2次試験に有用です。これはごく常識的な異論の少ないところかもしれません。
合否をわける要因の多くがそこにあるようです。十分な対策を同時に進めていないと、試験が近づくにつれてあせってしまいがち。
共通テストの怖さは、たまたま解くのに時間がかかったばかりに、たしかめがじゅうぶんにできず点数の伸び悩む「本番の怖さ」。ふだんの模試では意識せず9割以上をとれていたとしても、それは本番でおこり得ます。
9割なかばを確実とする勉強とは、「9割をとれるようになった」で終わるのでないことはあきらか。9割をたまたま3回つづけて出しただけかもしれません。したがってコンスタントに97%以上を目指す「仕上げの勉強」を用意すべきでしょう。
おわりに
どの科目も100点満点(国語は200点満点)を目指すよりも、まず確実に97、98、99,100点のいずれかをコンスタントにとれるように。20~30回分の共通テスト模試レベルの問題をやってその点数がとれるならば、ほぼ本番では9段階が取れる可能性があります。
この勉強の手始めはじつは標準レベルの問題集でできます。この問題集を隅から隅まで完璧に1冊全問解けるまで繰り返すことです。繰り返すたびに時間はかからなくなりますから、そんなに時間はとられません。
念のためもう1冊、うすめのものをやってかわりなく点数が取れれば仕上がっているでしょうし、そのまま数か月は維持できるでしょう。
私自身の経験や学習サポートの生徒たちの状況から判断すると、理科、地歴、公民、漢文、数学のある分野、英語に関しては上述の方法が効果がでやすいです。時間をかけずに97%以上を本番でとれると実践がものがたっています。時間を節約できる分、2次対策などに時間がさけます。
