0で割ることをついつい考えてしまうけれど門外漢が触れるべき世界ではないのか
はじめに
高校の途中で数学についていけなくなった。それまでわたしはどちらかというと数や図形をイメージで捉えていた節がある。そこで極限の「無限大」とか「0で割ること」ことの回避などでつまづいた。考え出すとどの単元でもそんな箇所がある。キリがなくなるほう。数学の先生は「そこを考えるべきでない」とおっしゃるが、興味はそちらへ向かい、授業は上の空に。いまようやくそんな興味の糸口を見つけ出せて、やり直して専門の化学や生物に活かそうと試みる。
きょうはそんな話。
そろばんで
わたしの唯一の習い事はそろばんだった。問題集の数字を見て、てきぱきとそろばんをはじく。意味のある珠(たま)の羅列が上下あるいは左右に連関して変化し演算が進む。このようすは列車の運行のごとくじつにシステマチックでおもしろく飽きずに通った。中学校の同級生の女子のひとりが、いつもとなりに腰かけてきて話ができるのもいい。それらの理由で長くつづけられた。
珠算能力検定の1級あたりでは、「8は2とるの10」とか唱えつつ演算するわけではない。数字を認識すると同時に指がその「かたち」を指が覚えていてはじく感覚。まさに修練の賜物。わりとほかのことを考えながらでも指で計算は進む。さらに割り算の一部は演算途中で答えを出せるなどテクニックもある。集中していると教室の1時間があっという間。
そのうちそろばんをあたまに入れてはじく暗算のほうが楽だと思いはじめた。ただし暗算の場合にはほかのことは同時には考えにくくなる。こどもながらに人間はおもしろい方法を考えるものだなと思った。
学校で
さて、話を算数・数学にもどす。小学校の担任からわたしは、よく話の腰を折りがちだと見られていたに違いない。先生のおっしゃる方法で解いてしまうと皆はまだ計算中。そんなときはどうしてもおもしろいべつの方法で解いてみたくなる。
とくに先生が「おやっ」と表情を変えたのは四角形の対角線の授業。ちょうど授業参観中で母が来ていた。授業の最初で先生から「ノートに好きな四角形をひとつ書こう。そして習ったばかりの対角線をそこへ書いてごらん。」とおっしゃった。お読みの方も描いてみてほしい。
わたしは先日、先生が前回の授業で描いた四角形の形が印象的だったので、それをノートに書いて、言われたとおりそこへ2本の対角線を定規で引いた。
先生はクラスの全員が描き終わった頃合いに「対角線が交わったよね。もしかしてそうならなかった人はいるかな、念のため手を上げて。」おずおずとわたしがただひとり手を上げた。クラス中の視線がわたしに集まる。後ろに佇む小柄な母をちらりとみると「コイツ、やらかしたな」という顔。
あまのじゃく
みんなは当然のごとく以下のような図形を描き、たしかに対角線どうしが1か所で交わっていた。

先生もそのつもりでいたようで、わたしの机にわざわざ出向いていらして、「ははあ、なるほど。これもたしかに四角形だ。だけど対角線は交わらないね。これは違う数学なんだよ。」とおっしゃった。「数学」という聞き慣れぬ言葉を聞いて、何人かの小学生たちが立ち上がり、わたしの描いた図形を見ようとした。こんなやつ。

先生は黒板に、上に記したような典型的な四角形と二本の対角線を描いた。ついでにわたしのも「たしかに交わらないね。」クラスの数人が「ほ~」と声を上げた。「でも、きょうのこれからの話は…」と本来の算数の授業をつづけた。
わたしとともに何人かはそののち、教わったとおりに解けたあとに違う解き方を探すという方に熱を入れはじめ、先生もそれを容認してくださった。ときにはそのなかからユニークなものを取り上げてみんなに紹介していた。
極限で
それが通用しなくなったのが、高校での数学。課された宿題はやっていたが、自主的な予習・復習の習慣を身につけないまま。それまでどおり授業だけでなんとかしようとしていた。その結果、任意の実数aを含む文字式の演算で、平気でa=0の存在に気づかないまま、aで割ってしまう計算を平気でやってしまう。
なにもやっていることの意味を理解できていない。授業にはなんとかついていけても極限は、 0で割ることを回避する手段としてやっているのに、それをそのまま考えこんでしまい、解けるほうより横道へずるずると迷い込んでしまう結果に。
当時を思い出すと何でこんな簡単なところで⋯と思ってしまうが、それなりになんとかしようともがいた記憶はある。
おわりに
なぜ0で割ることを禁忌とするのか。ある数aを0で割ると無限大になる世界を考えていい世界ならば、どんな風景が見えてくるのか。いまはだれにも邪魔されず、マイペースで学びつつ空想に遊べる。
いまもってなぞとされるいくつかの事象を、0で割ってはならないいままでどおりの数学の世界で説明できるものなのか。一部の制限を解消すると何が見えてくるのか興味は尽きない。
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