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【雑感想】『成瀬は天下を取りにいく』

彼にはもはや「惨めさ」という言葉の意味が理解できない。パリは隅々まで彼のものだ。すべてが光に溢れ、輝き、燃えさかっている年頃なのだ!陽気な活力に満たされているのに、それを誰も、男も女もうまく活用できない年頃!負債や烈しい不安があるぶん、あらゆる悦びが十倍にも感じられる年頃なのである!

バルザック『ゴリオ爺さん』,光文社,2016,Kindle位置No. 2136

Audibleをしばらくやめてたけどジムでながら聴きのために再開し、なんか本屋大賞取ってたので選んだ。

地元ノスタルジーも誘う青春群像劇で、なおかつポップで小気味いい進行で惹きつけるプロットではあった。し、作中舞台の滋賀/膳所高あたりには親近感も湧く(出身の知人が何人かいる)ので楽しく読めた。けど特筆すべき点もあまりなかった。

考え方が読めない奇天烈キャラ成瀬を動力源として巻き起こっていく出来事をまわりの普通の人たちが描写する構図だが、最後に成瀬視点に至って、自らの身体の意のままならなさが濃く描かれる。意図も情感も一切不明なエイリアン→端的な機械論っぽい空気感が不気味さを残しつつ、それが活かされることも殺されることもなく、全体としては快活そのものな物語なので位置づけに困った。

「高校」「友情」「青春」みたいなテーマに接近するにしてはかつて感じた感傷が迫ってくる要素はあまりなく、主人公の「野心」も動機は不明瞭で動かされやすく浮薄なものに思える。例えばラスティニャックのように実存的な悩みを乗り越えてながら形成されていく、なかば痛みのような激烈な野心と比べると、納得感というか、世の中の複雑さへの畏怖が足らないと思いもする。つまるところこれは、なんのための"天下"なのだろう?

シリーズものなのであとで色々と描かれる前提かもだけど、ちょっと合わなかったから一旦もういいかなぁ。

おしまい。ショートに感想を書いていく試みだけど、端折るとトゲトゲしさが目立って微妙かも〜。


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