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老人保健施設で働いてみて感じたこと

ハードだった介護業務

前回の記事では循環器内科病棟での業務について投稿したが、今回はその後、老人保健施設で働いてみて大変だったこと、感じたことなどを紹介していきたい。


介護老人保健施設(老健)とは、主に要介護者が自宅や地域での生活に戻ること(在宅復帰)を目指して、リハビリテーションや医療ケア、日常生活の介護を受けられる公的な介護保険施設です。
主な特徴
・医師による医学的管理のもと、看護師・介護職員・リハビリ専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)など多職種が連携してサービスを提供します。
・入所の対象は、病状が安定し入院治療の必要がない要介護1以上の高齢者で、リハビリや介護を通じて自立支援・機能回復を目指します。
・入所期間は原則3~6か月程度の中期利用が基本ですが、回復状況により長期になる場合もあります。
・施設では、短期入所(ショートステイ)や通所リハビリ(デイケア)などのサービスも提供しています。
・利用者負担は介護保険適用で原則1~3割。食費・居住費などは自己負担となります。
目的
利用者が持っている能力を活かし、できるだけ自立した生活を送れるように支援し、最終的には自宅や地域での生活に復帰できることを目指す施設です。

厚生労働省・健康長寿ネットより


🔷看護師よりも介護士の立場が上
入職してまず私が感じたことは、介護士が強い世界、ということだった。
入所者100人以上に対し、介護士の人数が圧倒的に多く、看護師は10人もいなかった。
在宅に向けたケアを重視しているため、寝たきりにならないようにリハビリが積極的になされており、入浴や排泄などの身体ケアが多かった。

食事の時は、全員が1階の食堂まで移動することになっていたため、車いすの方や歩行器を押して歩く方の介助が必要だった。
移動のためにエレベーターは混雑し、スタッフは順番に声掛けしながら食堂まで誘導する。
食事中は誤飲や窒息がないかなど見守り、食事が終わった順番にエレベーターで居室に戻る。

食後にトイレに行く方も多いため、今度はトイレ誘導・介助が始まる。
ナースコールは鳴りやまず、次々にスタッフは介助に追われる。
1日3回、慌ただしくこの業務が繰り返される。

看護師ももちろんこれらの介助に参加するが、看護師にしかできない処置やバイタル測定、状態に変化のあった入所者の様子などを観察して医師に報告しなければならない。
場合によっては緊急に病院に受診となり、付き添わなければならないケースもある。
介護業務+看護業務といった感じだ。

だが介護士は容赦しない。
看護記録を書いていても、処置の準備に追われていても、ナースコールが鳴ると「出てください!」と命令口調で言ってくる。
自分たちも忙しいのはわかるのだが、全く看護師の立場を考えていない様子の介護士も少なくなく、若い人ほどその傾向が強かった。

そして入所者に何かあれば、すべて看護師の責任として押し付けられる。
転倒した、熱がある、食欲がない、入所者同士でケンカしている、などのトラブルがあれば、すぐに看護師を呼んで「お願いします」と丸投げ。
「自分たちは関係ありません、看護師の仕事でしょ」と言わんばかりの当たり前のような口調で仕事を押し付け、さっさといなくなる。

全員ではなかったが、看護師を都合よく使おうとする介護士が多く、看護師の間ではそれが一番のストレスだった。
特に私は、医療の最先端を行く病院の循環器内科病棟からの転職だったため、そのギャップは大きく感じていた。

看護師は幸い、みんな優しくて話しやすい人ばかりだった。
そのため、気の強い介護士を苦手に感じる人も多かったと思う。

中でも20代半ばくらいの介護士が私たちは苦手だった。
プライドが高く、気に入らないことがあるとすぐに顔に出て、キツイ口調で看護師を責め立てる。
いつしか、私たち看護師の間では、彼女を「女王様」と言って恐れるようになった。

毎月の勤務表が完成すると、私たちが真っ先に見るのは自分の夜勤の日と、一緒に夜勤をする介護士のメンバーだった。
夜勤は2交代制で、看護師1人・介護士4人というプレッシャーしかない勤務だったのだが、中でも問題はそのメンバー。
比較的優しそうな介護士さんと一緒だとホッと胸をなでおろすのだが、女王様と一緒だと最悪だった。

月末、看護師だけでこっそり集まった時に勤務表を見て「やった、ラッキー!来月は女王様と1回も夜勤ついてない!」と喜ぶ人もいれば
「えー、私、女王様と2回も一緒だ!」と絶望的な声を出す人もおり、みんなで一喜一憂することが日常になった。

そんな老人保健施設での仕事だったが、在宅に向けてのケアも重要であり、入所して3ヶ月が近づくと在宅に向けてご家族に働きかけ、今後についての話し合いをすることが必要になってくる。
だが、入所時は「3ヶ月経ったら家に連れて帰ります」と言っていたご家族が、実際3ヶ月過ぎても行動に移さないことはよくあることだった。

確かに、施設に預けてしまえばご家族の身体的・精神的負担は減り、楽だと思ってしまうのはわかる気がする。
でも、最初は頻繁に来られていたのに面会にも来なくなり、こちらから連絡しても電話にも出なくなり、明らかにフェードアウトを狙うご家族も少なくなかった。

私が受け持った入所者の方も、最初は「3ヶ月経ったら迎えに来ます」と娘さんが話されており、それに向けて私たちはケアを開始した。
立ち上がりが不安定でおむつを使用していたが、食事の前後などにトイレに誘導して介助しているうちに、立ち上がりが安定してきてトイレで排泄できるようになった。

そのことがうれしくて、ある時面会に来られた娘さんに「最近はトイレで排泄できるようになったんですよ!」と伝えたのだが、返ってきた答えは「はあ…」の一言だった。
無表情で、全然喜ばないご家族に不安を覚えたのだが、その後、娘さんは面会にも来なくなった。

もしかすると、遠回しに在宅に戻るように促されたと感じたのかもしれない。
きっと、自宅で介護する気がなくなったのだろう。
在宅での介護は大変だし、気持ちはわからなくはないのだが、あの時はただうれしくて伝えただけなので、純粋に喜んで欲しかったな、と少し残念に思った。


🔷楽しかったこと
忙しくてストレスの多い職場だったが、楽しいと感じる瞬間もあった。
それはやはり、入所者の方々とのコミュニケーションだった。
処置やナースコールに追われて、なかなか入所者とゆっくり会話することもままならなかったのだが、夜勤明けの朝だけは少し違った。

夜勤の仕事を終えた朝は、ようやく帰れるという開放感と共に眠気が襲ってくるのだが、そんな時に入所者の1人に声をかけられた。
「ちょっと。麻雀のメンツが1人足りないんだけど、あんた、入ってくれない?」

朝食後に、毎日4人で麻雀をしているのだが、1人のメンバーがまだ朝食から戻らないという。
「あの人、食べるの遅いから、ちょっとやそっとじゃ帰って来ないから。あんた、麻雀できるなら入って!」と半ば強制的で言われる。

「えー、私、もう眠いから帰りたいんですよね」と一応渋ってみるが「いいから、早くそこに座って!」と有無を言わさない。
仕切っているのは1人の女性で、あと2人は男性。
みんな既に、テーブルの前に座って私を待っている。

「じゃあ、少しだけですよ」と言って席に着いたのだが、この麻雀がとてつもなく面白かった。

みんなそれぞれが軽度の認知症を患っているため、まずはルール無視が横行。
とんでもないところから牌を持ってこようとする人、捨てた牌をまた拾ってしまう人など、チョンボ技が次々に繰り出される。

私はおかしくて笑いそうになるのだが、みんな真剣だから笑ってはいけない!
ジッとこらえ、さすがにそれはまずいのでは?と思う間違いのみ訂正するようにした。

仕切り屋の女性が「ちょっとあんた、そうじゃないよ!」と2人の男性を叱るのだが、何を言われてもニコニコしている2人がまたかわいい。
しかも、仕切り屋の女性自身も、実は結構チョンボしていることに気づいていない。

不思議なことに、しばらくしてもなぜか誰もあがらないなぁと思って隣をそっとのぞくと、既にツモっているではないか!
しかしそのことに気づかずに、毎回牌を捨てている様子。
反対隣の人も同じ感じ。
これではいつまで経っても終わらない。

楽しいのだが、眠気に次第に耐えられなくなり「そろそろ帰っていいですか?」と言うと「いや、ダメだよ。あの人がまだ来ないんだから!」と仕切り屋の女性に止められる。

こうしてしばらくの間、麻雀をしてから帰るということが夜勤明けの朝の恒例となった。
ゆっくり食事を楽しんで戻ってくる4人目のメンバーを待ちながら、自分も眠いながらも癒され、楽しんでいた。


🔷老人保健施設で学んだこと
・身体的なケアが多く、介助者には体力が必要
・身体的介助に追われ、入所者とのコミュニケーションが十分に図りにくい ・看護ではなく介護の場であるが、看護師の果たすべき責任は大きく重い ・病院のような医療的な処置が少ないため、看護師としてのやりがいを感じられないことがある

私の印象では、介護士の方々はやりがいを持って生き生きと働いているように見えた。
「女王様」のようなキツイ口調の介護士もいたが、優しい方もたくさんいた。
ただ、私としては看護師としてのやりがいは感じられない上に責任ばかりが重く、ストレスの多い職場だった。

でも、施設看護師の仕事が好きだと言う人もおり、感じ方は様々なのだと思う。
私は耐えられず、当時は1年も我慢できずに自ら願い出て病院に異動することになった。
もう施設では働かない!と思っていたが、長年経験を積んだ今なら、少しは耐えられるのかもしれない。
それでもやはり、働いていてしっくりくるのは施設よりは病院だと感じるので、自分には病院が合っているのだと思う。

看護師といっても、働く場所は様々。
それぞれが納得のいく職場を選んで、やりがいを持って進んでいけたら最高なのだと思う。




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