【あの大ヒット映画の続編をオリジナルで】【短編小説】『光の名を、きみに③完結』~きみが未来を知っていた~
第一部『君と僕の、未来地図』
→ 主人公カップルは「立川拓」と「宮光三奈」。
東京での再会後、糸守の復興プロジェクトに関わる中、謎の図面と“もう一つの世界”の痕跡を発見する。第二部『過去から届く声』
→ 三奈と拓が出会う謎の少女「結(ゆい)」が登場。
夢に現れる声と記憶を辿りながら、忘れられた世界の存在に気づいていく。第三部『きみが未来を知っていた』
→ ふたりは再び御神体へ赴き “過去に取り残された少女” を未来へ導く決意をする。名を与えることで、新たな結びが完結する。
Prologue
春が終わり、夏の風が町を通り抜ける。
糸守の湖畔には、もう一人の“時間の旅人”がいた。
結(ゆい)――
名前を持ったその日から、彼女は夢を見なくなった。
だが、目覚めているときこそ、胸の奥で誰かの声が囁いていた。
「未来は、まだ終わっていない」
Scene 1:共鳴する鼓動
拓と三奈は、少女・結の中に眠る記憶が「もうひとつの世界」の残滓だと確信していた。
彗星が糸守を飲み込んだ、救われなかった時間。
そこに取り残された“魂”が、奇跡的にこの世界に繋がった――その存在こそが、結だった。
「だけど、なんで彼女だけがここに?」
拓の問いに、三奈は一冊のノートを差し出す。
それはかつて、三奈が書きかけて失われた“入れ替わりの日記”の写しだった。
「誰かを助けたい、ただそれだけで――」
その言葉は、今も鼓動のように残っていた。
「もしかして、あの世界の“もう一人の私たち”が、最後に彼女だけでも逃がしたのかもしれない」
Scene 2:ふたり、ふたたび時を超える
「もう一度、“あの場所”に行こう」
拓と三奈は、あの山奥の御神体へと足を運んだ。
かつて、時間を超えてすれ違い、想いを伝え合った場所。
三奈は、懐から“くくり紐”を取り出す。
祖母から受け継いだ赤い紐は、年月を経てもなお、結び目を失っていなかった。
「これで、彼女を返しに行こう。――あの世界に、さよならを伝えるために」
ふたりは再び、口噛み酒を奉納し、御神体に祈る。
そして――
重力が反転するような浮遊感と共に、ふたりの意識が再び揺れた。
Scene 3:眠っていた世界
目覚めると、そこは光の失われた糸守だった。
街は静かで、人々の気配はない。
建物の影だけが夕日に伸びていた。
拓と三奈は結とともに、記憶の残骸を辿って湖のほとりに向かう。
そこで彼女は、ゆっくりと呟いた。
「ここが、私の“終わった場所”なんだよね」
「でも――」
「ここで、ふたりが“私を助けたい”って願ってくれた。それが、今の私につながってる」
結は湖に向かって手を広げる。
空に、裂け目のような光が浮かび上がる。
それは、“時間のほころび”――
未完の運命がほどけかけた場所だった。
Scene 4:名前を知った日
拓は、結の手を握った。
「君は、もう忘れられた存在なんかじゃない。君がいてくれたから、僕たちは出会えた」
「だから、もうこの世界に縛られることはない。君は、“未来に行っていい”」
三奈も笑いながら言った。
「あなたがいたから、私たちは結ばれた。
君の名前は、“結”――私たちのすべてを繋いでくれたから」
結の目から、涙が一筋こぼれる。
そして、穏やかに微笑みながら言った。
「ありがとう。――もう、迷わないよ」
光が弾ける。
空が割れ、風が鳴る。
少女の姿は、静かに“未来”へと還っていった。
Epilogue:君の未来を、いま生きている
数ヶ月後。
糸守の湖上に、新たな神社が完成した。
ガラスでできたその神社は、空と湖を映し、訪れる人々の心を映す場所となった。
その柱には、小さな刻印がある。
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