盲目ゲシュタルト崩壊【超短編小説】

あれ、なんでだろう。
大好きな彼の顔が、見えない。
「彼の顔だけが」見えないのだ。
彼が何か言っている。のに、ただただお店で流れているBGMのように、なんの情報も落とさず、頭を掠めていく。なんだかわからないけど、とりあえず頷いておく。
「 どうしたの?」
急に彼の声が聞こえるようになった。
「 あのね、急にあなたの顔が見えなくなっちゃったの」
「 それ、盲目ゲシュタルト崩壊かも」
「 なに、それ?」
彼が音だけで笑った。
「 人のことを好きすぎると、その人の顔、見えなくなっちゃうらしいよ」
あぁ、なんだ、そうなのか。そういう理由で。
「 なんでもいいけどさ、さっきの話。そんなあっさりいいよって言うと思わなかった。」
「 え、なに?なんの話だっけ?」
「 なんか俺、騙されちゃってさ。200万必要なんだよね。貯金してたよね?しばらく貸してくれない?」
またなんだかわからない。ただただ、彼の声が心地よくて、頷いた。
「 ありがとう。盲目って助かるよ。」

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