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四国地方におけるモトツーリズムの推進

 四国は、日本の中でも特にモトツーリズムと親和性の高い地域である。瀬戸内海と太平洋の“二つの海”を抱え、険しく美しい山岳地形、古い信仰文化、清流が織りなす自然景観、そして地域ごとに異なる食文化。そのどれもが“走る旅”に豊かな多様性をもたらしている。瀬戸内沿岸の穏やかな風景から、四国山地のワインディングロード、太平洋を望むダイナミックな海岸線まで、四国はまさに「バイクで走るためにある島」といっても過言ではない。本稿では、この可能性を地域政策としてどう活かすべきか、四国におけるモトツーリズム推進の方向性を論じたい。

1.四国山地がつくり出す“走行のダイナミズム”
 四国の最大の特徴は、中央部を貫く四国山地の存在である。この雄大な山地が、走行体験を極めて豊かにしている。剣山スーパー林道、瓶ヶ森林道(UFOライン)、四国カルストなど、国内トップクラスの走行満足度を誇るルートが集中している。
 特にUFOラインは、標高1300mの稜線を走るルートであり、視界いっぱいに広がる雄大な山並みは海外ライダーからも高い評価を受けている。この“山と空と道が一体になる体験”こそ、モトツーリズムが求める「走る景観体験」の核心である。
 四国山地がつくり出す急峻な地形は、地方によっては観光の障壁にも見えるが、ライダーにとっては魅力そのものとなる。むしろ、この地形を“観光資源として再編集する発想”が四国のモトツーリズム成功の鍵となる。

2.海がつなぐ四国の物語性
 四国は、瀬戸内海に面する北側と、太平洋に面する南側で表情がまったく異なる。北側は穏やかな海と多島美が特徴で、南側は黒潮がつくる荒々しい海岸線が広がる。この“海のコントラスト”は、ツーリングにおけるストーリーづくりに最適である。
 たとえば、香川県や愛媛県の瀬戸内沿岸では、町並み・港・島々の景観が連続し、穏やかな走りが楽しめる。一方で高知県では、室戸岬や足摺岬へ向かうルートが壮大な海景を生み、旅への没入感を高める。
 海と山が短距離で切り替わる四国の地形は、旅に“緩急”を生み、ライダーの体験価値を自然に高めてくれる。この距離の短さは観光政策上も大きな利点であり、1泊2日でも「海・山・文化」をすべて盛り込める点は国内でも希少である。

3.四国遍路とモトツーリズム ― 文化と旅の融合可能性
 四国特有の文化資源といえば、やはり四国遍路(お遍路)である。歩き遍路のイメージが強いが、現代では車・バイク・自転車による巡礼が一般化している。
 この“祈りの旅”としての遍路文化は、モトツーリズムと非常に親和性が高い。道中で出会う人との交流、寺社での静寂の時間、地域に息づくお接待文化――いずれも旅の意味を深め、走ることに“精神性”を与える。
 遍路ルートを観光商品化する際には慎重さが求められるが、地域の文化や精神性を尊重しながら、現代の旅の形に合わせて編集することで、四国ならではの“文化的モトツーリズム”が成立する。

4.四国は日本で最も「広域ルート形成」がしやすい地域
 四国の強みは、4県の距離が近く、自治体間で広域連携を行いやすい点である。九州や北海道に比べてコンパクトである一方、景観や文化の多様性は非常に大きく、「四国一周ツーリング」「四国横断ルート」「四国山地縦走ルート」など、広域ルートの設計が容易で魅力的だ。
 さらに、四国は観光DX・MaaS化にも積極的であり、位置情報サービス、電子スタンプラリー、観光アプリなどとの連携を図れば、デジタルとリアルが融合した“未来型モトツーリズム”が展開できる。
 観光庁や経済産業省の補助金を活用しつつ、4県合同で「四国ツーリングブランド」を構築すれば、国内外のライダーに強烈な魅力を発信できるだろう。

 四国地方は、地形の多様性、文化資源、海と山の近さ、そしてコンパクトさを併せ持つ、日本でも稀有なモトツーリズムの宝庫である。これらの資源を「地域を走る物語」として再編集することで、四国全体が“走る観光圏”として高い競争力を持つだろう。
 モトツーリズムは単なる観光促進策ではなく、地域文化の継承、広域連携、インバウンド誘致、地域経済の循環を同時に実現する総合政策である。
四国の次の10年は、走ることを通じて地域の魅力を再発見し、四県が連携して世界に誇るツーリングアイランドとしてのブランドを構築する時代となるはずだ。

文責:林恒宏(岡山理科大学経営学部教授)

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