「息をしているか分からない」から始まった、午睡センサー開発の話
これまでのお話はこちらのマガジンにまとめています。初めましての方は、こちらもぜひご覧ください。
保育現場で神経を使うことといえば、乳児のお昼寝(午睡)が挙げられます。
乳児の寝息は聞こえにくく、 きちんと呼吸ができているかどうか不安になるときがあるのですが、 あれは現場に立ったことのある方には理解していただけると思います。
保育園を始めてから、この不安と向き合って保育を提供していることに、ずっと問題意識を持っていました。
創業当時から、乳児用の体動センサーは使っていました。
ベッドの下に板のセンサーを敷いて、その上にマットを敷いて子どもを寝かせます。センサーの上で寝ている子どもの動きが止まるとアラームが鳴る仕組みでした。
ただ、これは「センサーの上の動きが止まったら音が鳴る」というものなので、毎秒の呼吸を教えてくれるものではありません。
それでも、不安を軽減するためには必要だと考え、使うようにしていました。
保育園での人によるチェックに漏れがあっては問題です。属人的な確認で記録を残さなければならないので、もっとデジタルを使って本質的な解決をしたいと思っていました。
1.加速度センサーというヒント
保育園を初めて10年が経過した2017年に、加速度センサーの技術を使えば新しいセンサーを作れるのではないかと考えました。
加速度センサーとは、 振動や重力を利用し、「どのくらいのスピードで動いたか」を記録する技術で、スマートフォンや車載機器などに使われていました。
発想は、おむつに加速度センサーを付けてみてはどうだろうかというところから始まりました。
板のセンサーとは違って、ベッドの下ではなく、赤ちゃんの体に接する場所に装着するので、呼吸による微細な動きが感知でき、身体の動きを連続的に追跡できました。
また、センサーをオムツに装着したことで、センサーが皮膚に直接的に触れているため、皮膚温度の変化も取得できたのです。

こうして、午睡センサー「CCS SENSOR」(シーシーエス・センサー)が完成しました。
午睡センサー「CCS SENSOR」(シーシーエス・センサー)は、「呼吸が止まったら鳴る」ではなく、「動きがあることを継続的に測ることができる」状態を作り出したのです。
2.午睡センサーが生かしきれなかったこと
技術が完成しても、すべてが解決したわけではありませんでした。
① 記録は紙で残さなければならなかった
どれだけ正確な子どもの呼吸の動きをグラフで示しても、制度上、定点チェックの記録は紙で残す必要がありました。センサーがあっても、データがあっても、確認の手間はなくなりませんでした。
保育士の精神的な負担を減らすことはできましたが、業務負担を軽くするという意味では、あまり寄与できませんでした。
② 体温データが示した“翌日の発熱”が時代とかみ合わなかった
体温データを取得していたことで、分かったことがありました。
体調を崩す乳児は、午睡中の体温が最初は高く、午睡が終わるまで低下し続ける傾向があったのです。
その精度は高く、ほとんど100%の確率で予測が当たりました。
一方で、 健康な子どもは午睡中の体温が上昇し続けていたため、午睡中の体温から翌日の発熱が予測できることが明らかになったのです。
これは大発見でした。
早速この発見を生かそうと、発熱の予測を保護者へ伝えるようにしました。
「明日、お子さんが発熱する可能性があります」
体調を崩す可能性を知っていれば、急な対応をしなくても済むはずなのですが、保護者から返ってきたのは、以下のような意見でした。
「今はまだ熱が出ていないのに、熱が出るかもしれないとは職場に言えない」
「今日は熱がないんですよね?」
「予測の理由では会社を休めないので、とりあえず明日は保育園に連れてきます」
こうして翌日に子どもを連れてやってきますが、発熱予測は当たるので、保育中に発熱しました。
技術的には正しくても、社会構造や働き方と噛み合っていませんでした。
この発熱予測機能が実際に使われるようになるためには、制度や仕組みが変わらなければ難しいことが分かりました。
3.BabyTech® Award Japan 2021健康管理部門で優秀賞を受賞
「CCS SENSOR(シーシーエス・センサー)」と「発熱予測」は、
「BabyTech® Award Japan 2021 with アカチャンホンポ」の健康管理部門で優秀賞を受賞しました。
withコロナ時代における新しい健康管理の可能性が評価された表彰でした。
発熱予測による健康管理の仕組みはまだ生かしきれていませんが、赤ちゃんの見えない呼吸を可視化するという挑戦は、現在のAIAI NURSERYにおける午睡中の安全管理につながっています。
