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「震災の日、50キロ歩いた友人が教えてくれたこと」


(1472字)
私には、東日本大震災で大きな被害を受けた地域に住む友人がいます。
2011年3月11日、彼女は仙台市内の職場で大きな揺れを経験しました。


1,震災の日、彼女が選んだ道


彼女の自宅は、職場から約50キロ離れた場所にあります。
当然、電車もバスも止まりました。タクシー乗り場には長い行列ができ、百人以上が並んでいたそうです。
帰る方法が見つからない中で、私はてっきり職場や避難所で夜を明かしたのだと思っていました。
ところが後日、その時の話を聞いて驚きました。


2,「朝までには帰れるかな」と言った人

彼女はこう言ったのです。
「朝までには帰れるかなと思って、歩いて帰った。」
私は思わず聞き返しました。
歩いて帰った?
50キロを?
しかも、それは昼間の明るい道だけではありません。
夜になれば街灯も少なく、真っ暗な場所もあります。
地震直後の混乱の中です。
それなのに彼女は、まるで「少し遠回りして帰った」
くらいの調子で話すのです。

地震が起きたのは午後2時46分。
その後、職場の片付けや対応もあったはずです。
一日働いた後に、50キロの道を歩く。
私にはとても真似できそうにありません。

3,強さとは、特別な能力ではないのかもしれない

私はその話を聞いてから、彼女のことをますます尊敬するようになりました。
なぜなら彼女は、特別なアスリートではないからです。
普段はバスで通勤し、仕事もデスクワークが中心です。
休日にウォーキングやハイキングを楽しむことはあっても、
50キロを歩く訓練をしているわけではありません。
それでも歩いた。
それは体力だけではなく、心の強さがあったからではないかと思うのです。
芯の通った考え方。
まっすぐな性格。
「こうしよう」と決めたら、一歩ずつ進める力。
そういうものが彼女にはあるのだと思います。

もし私が、震災でなくても
「50キロ歩かなければならない」と言われたらどうでしょう。
きっと何日も前から睡眠を調整し、栄養を摂り、
万全の準備をしてからじゃないと、臨めないと思います。
それでも歩き切れるかどうかは分かりません。
だからこそ、彼女のたくましさに心を打たれるのです。


4,彼女を布にたとえたら

人には、それぞれ色や質感があるような気がします。
彼女を布にたとえるとしたら、
私の頭に浮かぶのはオーガニックコットン100%です。
色は若草色。
春先、道端に顔を出したタンポポの葉のような色です。
やさしい。自然体。
それでいて強い。
使い込んでもすぐには傷まない。
人にも環境にもやさしい。
そんな布です。
彼女には、無理に力を誇示するような強さはありません。
けれど必要な時には、しなやかに踏ん張ることができる。
そんな印象があります。


5,私がなりたい布

では私はどんな布だろう。そう考えてみました。
絹のような人・・・と言いたいところですが、
それは少しおこがましい気がします。
絹に申し訳ありません。

現実的に考えると、
コットン30%、レーヨン30%、ポリエステル30%。
そして残り10%はアクリル。
そんな混紡の生地でしょうか。
少し頼りなくて、少し複雑で。
でも、あたたかくもありたい。
色は淡いピンク。
誰かの心をふんわり包み込むような色です。
できれば、その10%のアクリルは少しずつウールに変えていきたい。
そんなふうに、これからも年齢を重ねながら、育っていけたらと思います。

50キロを歩いた友人の話を聞いて、私は改めて思いました。
強い人になりたい、というよりも。
やさしくて、しなやかで、芯のある人になりたい。

若草色のコットンのような彼女を見ながら、
私も私なりの布になっていけたらいいなと思うのです。


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