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​④【脊椎】術後やヘルニアで急な筋力低下がみられたときに考えること

【今回のテーマ】 脊椎の手術後に、昨日まで動いていた手足に突然力が入らなくなる「一過性の術後麻痺(C5麻痺、L4麻痺など)」。焦って筋トレを積極的にするのではなく、神経の回復を「待つ」選択と、電気刺激(EMS)や装具を用いた「代償・環境調整」へと戦略を切り替える判断について話します。

前回の記事はこちら:③【脊椎】ヘルニアの「放散痛」、「腰」しか触ってないわけじゃないよね?


【免責事項】 ※本記事は、臨床10年超の理学療法士としての経験に基づく情報提供を目的としており、医療行為ではありません。金融商品、物品についての記載があってもそれらの使用を推奨するというのはあくまで個人の見解であることを明記します。それによって生じたいかなる問題も責任を取りかねます。 ※個別の事例は考慮しておりませんので、実際の診断や治療方針については、必ず主治医や所属施設の専門医の指示に従ってください。 ※本記事は執筆時点(2026年3月)の知見に基づいています。所属組織とは無関係な個人の見解です。

【脊椎シリーズ④】術後一過性麻痺:昨日まで動いていた足が、動かない。セラピストに求められる「待つ」判断とその間の介入

はじめに

脊椎手術後、離床を始めようとした際に、患者さんから次のような訴えが聞かれることがあります。

「右手が肩から上がらない」

「昨日まで動いていたのに、足に力が入らない」

「立ち上がろうとすると、膝の力が抜けてしまう」

術後麻痺とは、脊椎手術後に新たに生じる、または術前より悪化する筋力低下や神経症状を指します。障害される部位によって、肩が上がりにくい、膝を伸ばしにくい、股関節を曲げにくいなど、現れる症状は異なります。

「麻痺」という言葉から、手足がまったく動かなくなる状態を想像するかもしれませんが、実際には特定の筋だけが動かしにくくなる軽度の筋力低下から、立位や歩行に影響するものまで程度はさまざまです。

術後すぐに生じるとは限らず、手術直後には動いていた筋の力が、数日後に低下する場合もあります。そのため、初回離床時だけでなく、術後の経過を追いながら筋力や動作の変化を確認する必要があります。

術後の経過が良好に見えていた中で、急な筋力低下が生じると、不安を感じるセラピストも少なくありません。

しかし、脊椎外科領域では、除圧術や固定術が問題なく終了した後にも、術後に一過性の筋力低下が生じる場合があります。

筋力低下を認めた際には、筋力トレーニングを追加する前に、どの筋の出力が低下しているのか、感覚障害や疼痛を伴っているのか、術後からどの程度の時間が経過しているのかを確認する必要があります。

1.臨床現場で遭遇しうる3つの術後麻痺

術後の筋力低下には、神経根の牽引、脊髄の浮腫、血流の変化に伴う再灌流障害などが関与している可能性が指摘されています。

臨床でみられる代表的なパターンには、以下のようなものがあります。

C5麻痺

頸椎椎弓形成術などの後にみられることがあります。

術後直後ではなく、数日から1週間程度経過してから、三角筋や上腕二頭筋の筋力が低下し、肩関節の挙上や肘関節の屈曲が難しくなる場合があります。

L4神経根領域の麻痺

腰椎後方固定術などの後に、大腿四頭筋の筋力低下がみられることがあります。

立位や歩行時に膝関節を保持できず、膝折れが生じやすくなるため、転倒リスクに注意が必要です。

腸腰筋の筋力低下

広範囲の固定術後などに、股関節屈曲筋力の低下がみられる場合があります。

股関節屈曲がイメージされやすい腸腰筋ですが、骨盤や腰椎に付着しており、麻痺の程度によっては立ち上がって体を起こしておけず、立つこと自体や、ベッド上での下肢操作など、基本動作が著しく困難になることがあります。

これらの筋力低下がみられた場合には、筋力の程度だけでなく、出現時期、感覚障害、疼痛、腱反射、歩行能力などを含めて評価する必要があります。


2.急な筋力低下では神経障害を考える

脊椎術後やヘルニアの経過中に急な筋力低下がみられた場合、筋そのものではなく、神経障害によって筋への指令が伝わりにくくなっている可能性があります。

ヘルニアや脊柱管狭窄症の症状が急に悪化した際にも、神経根障害による筋力低下がみられることがあります。

このような場合には、単純な廃用性筋力低下や疼痛による筋出力低下と区別して考える必要があります。

術後麻痺の原因については、手術後のアライメント変化による神経根の牽引、一時的な虚血、除圧後の血流変化など、複数の機序が考えられています。

一方で、詳細な原因については不明な点もあり、確立された治療法があるとは言い切れません。
Imagama et al.(2010)

多くの報告では、時間の経過とともに筋力が改善する症例が多いとされています。
Sakaura et al.(2003)

ただし、すべての症例で完全に回復するとは限りません。

三角筋のMMTが1〜2程度まで低下している重症例、高齢者、術前の脊髄圧迫が強かった症例などでは、筋力低下が残存する可能性も報告されています。

そのため、

「一過性だから問題ない」

と判断するのではなく、

「改善する可能性は高いものの、回復の程度や速度には個人差がある」

と考えて経過を確認する必要があります。


3.筋力改善だけでなく、代償手段を含めて検討する

術後の神経障害による筋力低下では、筋力トレーニングだけで短期間に改善させることが難しい場合があります。

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