⑤【神経難病:進行性核上性麻痺:PSP】「精神症状」と「環境調整」、PDと区別してますか?
【今回のテーマ】 パーキンソン病(PD)に似て非なる進行性核上性麻痺(PSP)のリハビリについて。独特の歩行障害(すくみ足やバランスの固さ)、下方注視障害を考慮した環境設定、そして認知低下に伴う「精神症状」や家族ケアなど、身体機能へのアプローチにとどまらない「生活のコーディネート」としての介入戦略を学びます。
※このシリーズは導入編から読んだ方が理解が深まります。導入はこちら①【神経難病】「進行性だから」と諦める前に読むリハの話|“治す”から“守る”への転換
【免責事項】 ※本記事は、臨床10年超の理学療法士としての経験に基づく情報提供を目的としており、医療行為ではありません。金融商品、物品についての記載があってもそれらの使用を推奨するというのはあくまで個人の見解であることを明記します。それによって生じたいかなる問題も責任を取りかねます。 ※個別の事例は考慮しておりませんので、実際の診断や治療方針については、必ず主治医や所属施設の専門医の指示に従ってください。 ※本記事は執筆時点(2026年3月)の知見に基づいています。所属組織とは無関係な個人の見解です。
前回は、DaTSCANを用いたパーキンソン病(PD)と薬剤性パーキンソニズムの画像鑑別について解説しました。(※前回の内容を軽くおさらいしたい方は [▶ 前回の記事へ戻る] からどうぞ) 今回は、PDと似て非なる難病「進行性核上性麻痺(PSP)」に焦点を当て、ミリ単位の環境調整が「動ける」を作る臨床のリアルをお伝えします。
はじめに:PDに似て非なる「独特の違和感」の正体
動作緩慢や歩行障害。一見するとPDに似ていますが、前橋市の地域中核病院でPSPの患者さんと向き合うと、独特の「違和感」に突き当たります。
それは身体機能だけでなく、本人の精神面や、それを取り巻くご家族の疲弊という、よりデリケートな領域に及ぶことが多いのです。私自身、3人目の子どもを迎えようとしている親として、家族の和が崩れることの辛さは身に染みてわかります。だからこそ、PSPのリハビリには身体へのアプローチ以上の役割が求められます。
1.PSP特有の歩行とバランス:理学療法士の観察眼
教科書的には「すくみ足」と一括りにされますが、臨床での印象は少し違います。
左右への「寄り」と粘り: PDに比べて、片側に身体が寄りやすい傾向がありますが、そのままでも意外と転倒せずに進み続けられる「粘り強さ」があります。
上肢の位置が「スイッチ」になる: 手を置く位置のわずかな差で、歩行の安定性が劇的に変わります。
数センチ、数度が分ける境界線: 手すりの高さがほんの数センチ違うだけで、足がすくむかスイスイ歩けるかが決まります。全身を固めてバランスを保つPSP患者さんにとって、上肢からの情報は「自分が今どこにいるか」を知る決定的な因子です。
2.「認知低下」の裏にある精神症状とご家族の葛藤
PSPにおいて認知機能が落ちる際、それは疾患そのものの影響だけでなく、「精神症状による二次的な低下」という側面を忘れてはなりません。
過敏さとストレス: ささいなことに神経質になり、周囲との軋轢を生んでしまう。そのストレスが意欲を削ぎ、さらなる認知低下を招く悪循環に陥ります。以前の本人を知るご家族にとって、この「性格の変化」を受け入れるのは非常に辛い作業です。
3.環境調整と、ご家族への「デリケートな聴取」
身体機能への介入以上に、環境と家族のケアが重要になります。
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