①【膝関節】OAの痛みを軟骨のすり減りと説明してない?患者さんに不利益を与えない「組織」の話
【今回のテーマ:「診断名リハ」を卒業し、痛みを拾っている「真犯人」を特定する視点】
※この記事はマガジン膝関節のリハビリ:硬い・痛い・ラグがあるを解消するの導入編です。
まずは本記事で全体像をつかみ、その後に各論へ進むことで、臨床の判断が一気に整理されます。
免責事項
※本記事は、臨床10年超の理学療法士としての経験に基づく情報提供を目的としており、医療行為ではありません。
※個別の事例は考慮しておりませんので、実際の診断や治療方針については、必ず主治医や所属施設の専門医の指示に従ってください。本記事の情報を用いたことにより生じた不利益や損害について、筆者は一切の責任を負いかねます。
※本シリーズは、園部俊晴先生、山田英二先生、橋本貴幸先生らの知見を土台とし、私自身の現場での実感をもとに構成しています。
はじめに:大腿四頭筋セッティングで治らない日々を越えて
「膝が痛いなら、まずは大腿四頭筋の筋トレ(セッティング)から始めよう」
若手の頃、私もそう指導していました。でも、どれだけ筋トレを頑張ってもらっても、一向に痛みが引かない患者さんを前に、「何が足りないのか」と一人で悩んだ夜が何度もあります。
転んで泣いている子に「筋肉を鍛えなさい」とは言いませんよね。まずは「どこが、どう痛むのか」を優しく確認するはずです。膝のリハビリも同じ。今回は、私たちがつい陥りがちな「診断名リハ」を卒業し、痛みの真の正体に迫る視点を書いていこうと思います。
1. そもそも、どうして膝は痛むのか?
「軟骨がすり減っているから痛いんですよ」という説明をよく耳にします。しかし、解剖学的な事実に目を向けると、少し違った景色が見えてきます。
軟骨には神経がない: 実は、軟骨自体には痛みを感じる神経線維(受容器)が存在しません。
痛みを拾っている「真犯人」: 実際に痛みを感知しているのは、軟骨の下にある「軟骨下骨」や、関節を包む「滑膜」です。ここまで症状が進むともうわずかな痛みでも悲鳴を上げるほど痛がるため痛いながらも動いているような変形性膝関節症患者さんはこれにはあてはまらないことが多いです。

画像と症状の乖離: 画像上で軟骨が減っていても、痛みの程度や部位が一致するとは限りません。
2. 術後リハの落とし穴:全員が同じ「痛み」ではない
TKA(人工膝関節置換術)や骨折の固定術後、「手術したから痛いのは当然」と片付けてはいませんか?
手術でどの組織を通り、骨折でどこを損傷したのか。まずはこのことがカルテに書いていないかを確認します。
また、その痛みが炎症なら安静・アイシングですが、特定の組織への機械的な負荷(ストレス)が原因なら、動きを変えない限り解決しません。
3. 「とりあえず筋トレ」を卒業するための第一歩
膝の機能を改善させるためには、まず「何が制限になっているか」を組織レベルで知ることから始まります。
制限組織の特定: 痛みには「痛い組織」が、拘縮には「制限組織」が必ず存在します。
見落としがちな組織たち: 脂肪体、皮膚・皮下組織、鵞足、膝裏、そして広筋群。これらが複雑に絡み合っています。これを知ることが、アプローチの近道です。
「なぜ痛いのか?」という問いに、組織のレベルまで踏込んで答えを出せるようになると、リハビリはもっと楽しく、もっと効果的になります。
■ 次回予告
次回は、膝前面痛で最も見落とされやすい「脂肪体と皮膚の滑走性」について、具体的な触り方を含めて深掘りしていきます。
👉次回の記事はこちら:②【膝関節】膝前面痛どうしてますか?脂肪体や皮膚に着目
この「膝関節シリーズ」を最初から順に、または一覧で確認したい方は、以下のリンクをご活用ください。
また、今回の急性期管理の基礎となるリスク管理全般や、整形の他疾患について学びたい方には、以下の関連マガジンもおすすめです。
・[▶ 【リスク管理シリーズ】バイタルは見てるのに急変が怖い、をなくす]
・[▶ 【足関節シリーズ】免荷から全荷重まで:可動域・パフォーマンスの再獲得]
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