②【大腿骨】いきなり痛いリハビリしてない?患部を触る前にやるべきこと
【今回のテーマ:患部を触る前にやるべきこと。健側と腕を「安全な土台」として再定義する】
はじめに:「痛いリハビリ」から卒業する
手術直後の患者さんにとって、最大の障壁は「痛み」と「恐怖」です。「リハビリ=痛みを我慢して動くもの」という誤解を植え付けてしまうと、その後の信頼関係は崩れ、回復のスピードも停滞してしまいます。
そこで大切になるのが、手術をした側(患側)のトレーニングを急ぐ前に、「良い方の足(健側)と腕を最大限に活かす」という戦略です。
免責事項
※本記事は、臨床10年超の理学療法士としての経験に基づく情報提供を目的としており、医療行為ではありません。
※個別の事例は考慮しておりませんので、実際の診断や治療方針については、必ず主治医や所属施設の専門医の指示に従ってください。
※本記事は執筆時点(2026年3月)の知見に基づいています。所属組織とは無関係な個人の見解です。
1. 「安全地帯」としての健側機能
私は、術後早期のリハビリでは、まず車椅子駆動や健側を中心とした起立練習から始めることを推奨しています。
「患側を動かすのが怖い」と感じている患者さんに、「こちらの足(健側)はしっかり踏ん張れますよ」と、安全な土台を認識してもらうのです。特に有効なのが、「高い座面からの起立練習」です。
ピックアップ歩行器などの安定した支持物を使う
健側に重心をしっかり乗せ、患側は添える程度から始める
最終的に1日に合計100回を目指し、小分けに練習を繰り返す
「今日だけでこれだけ立てた」という成功体験は、身体機能の維持だけでなく、患者さんの表情を劇的に変えてくれます。

2. 痛みを出さない「起き上がり」の工夫
寝返りや起き上がりも、股関節の屈曲を伴うため痛みが走りやすい動作です。ここでも「真っ直ぐ起きる」のではなく、「健側の肘でベッドを押しながら、わずかに健側側に斜めに起き上がる」という工夫を伝えます。
患側の股関節に深い角度をつけず、健側の肩甲帯(肩まわり)を先行させることで、痛みを最小限に抑えながら自力で動けるようになります。「自分で動けた」という実感こそが、廃用(動かないことによる衰弱)を防ぐ最強の薬になるのです。

3. 移乗動作を「小分けにする」
「立てないと車椅子に乗れない」と考える必要はありません。例えば、片脚が不自由でも、腕の力とお尻の向きを変えるだけで移乗は可能です。
まずは非荷重(体重をかけない)の状態を想定した移乗を安定させ、痛みが引いてくるのに合わせて、徐々に患側でステップを踏む形へ移行していきます。

おわりに:他職種との連携が患者を守る
リハビリの時間だけでなく、病棟での生活すべてがリハビリです。看護師さんや介護スタッフの方々と「この起き方なら痛くない」「健側を使えばここまで自立できる」という情報を共有することで、患者さんは24時間、安心感の中で過ごすことができます。
まずは「安全な土台」を一緒に見つけること。そこから、本当の回復が始まります。
■ 次回予告
次回は、絶対に避けては通れない安全管理の要。「人工骨頭置換術後のリハビリと動作指導(脱臼予防)のコツ」について解説します。
最後までお読みいただきありがとうございます。私のnoteでは、整形外科以外にも臨床10年超の中で培った知見を領域ごとにマガジンにまとめています。
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