③【臨床での振る舞い】認知症のある方にどんな距離感で接する?意外とラピュタが参考になる
【今回のテーマ】 新人・若手理学療法士に向けた、認知症や混乱のある患者さんとのコミュニケーション術です。
【免責事項】 ※本記事は、臨床10年超の理学療法士としての経験に基づく情報提供を目的としており、医療行為ではありません。金融商品、物品についての記載があってもそれらの使用を推奨するというのはあくまで個人の見解であることを明記します。それによって生じたいかなる問題も責任を取りかねます。 ※個別の事例は考慮しておりませんので、実際の診断や治療方針については、必ず主治医や所属施設の専門医の指示に従ってください。 ※本記事は執筆時点(2026年3月)の知見に基づいています。所属組織とは無関係な個人の見解です。
はじめに
前回は、丁寧すぎる敬語が逆に関係構築の障壁になるリスクと、相手の反応に合わせて「敬語のレベルを切り替える」コツを解説しました。(※前回の内容を軽くおさらいしたい方は [▶ 前回の記事へ戻る] からどうぞ)
今回は、さらに一歩踏み込んだ現場の難所――「反応がない時」や「認知症による混乱が強い時」の関わり方について深掘りします。2人の子供を育てるパパとして、また臨床10年超の理学療法士として、私がたどり着いた「自尊心を守りながら安心を届ける技術」をお伝えします。
1.大前提:「この人はどんな人か」を先に読む
現場では、認知症の患者さんに対して、まるで幼稚園児に話しかけるような幼い口調で接するスタッフを見かけることがあります。 私は、その対応には賛同しません。
たとえ理解力が低下していても、その方は人生の大先輩です。自分の親や恩師が、病院で知らない若者に子供扱いされていたら……と考えると、やはり抵抗があります。不自然な幼い口調は、患者さんの「大人としての自尊心」を傷つけ、かえって心を閉ざしてしまう原因にもなりかねません。
認知症の患者さんへの関わり方に、万能の正解はありません。本記事で紹介するタメ口や非言語コミュニケーションは、あくまで「安心感を優先すべき場面」での選択肢の一つです。
元々礼儀を重んじてきた方、きっちりした敬語の中に安心を感じる方、来客として丁寧に扱われたい方——認知症になる前のその人の文化や価値観は、症状が進んでも残り続けます。
だからこそ、「認知症だからこう接する」と決めつけるのではなく、目の前の人が何に安心するかを、毎回ゼロから読む。それが本記事全体を通じた基本姿勢です。
2.言葉の前に「非言語」で意思疎通の糸口を探す
挨拶をしても返事がない。その時、すぐに「拒否」や「認知症」と決めつけるのは早計です。まずは身体的な障壁を疑うのがリハ職の視点です。
身振りを交える: 「手足は動きますか?」と問いかけながら、自分も大きく手足を動かして見せる。
環境を整える: 難聴があれば補聴器を探し、なければ「もしもしフォン」を準備する。
失語症の方でも「聴き取る力」は残っているかもしれません。諦めずに、できる限り礼節を保ちつつ、相手が理解できる方法を根気よく探す。それが最初のステップです。
3.混乱を鎮める「短く温かい」言葉選び
急性期の現場では、自分がどこにいるのか分からず、パニック状態にある患者さんにも出会います。ここで「リハビリです」と伝えるのは、ある種の「正論」ではありますが、患者さんにとっては「家にいたら聞くはずのない言葉」です。その単語を聞く回数を増やすことが、かえって「ここはどこなの!?」というパニックを煽ってしまうこともあります。
そんな時に私が意識するのが、短くて温かい、相手を思いやる意図的なタメ口です。
「様子を見に来たよ。大変だったね」 「もう足は動くの!?まだ痛いんじゃない?大丈夫?」 「痛くない? 心配したよ」
「動かせる?」といった評価的な視点ではなく、「動くの!?」と驚き、喜ぶような家族に近い語尾。面会に来たお孫さんのような距離感で安心感を与え、パニックを鎮める。この「言葉の選択」こそが、評価をスムーズに進めるための鍵になります。
私はこの距離感を考える時、『天空の城ラピュタ』で空から降りてきて混乱しているであろうシータに、パズーが向ける恭しくはなくとも温かい関わり方を思い浮かべます。決して丁寧でないのに、相手を守ろうとする意図が伝わる。急性期の混乱場面でも、時にそうした距離感が安心に繋がることがあります。
4.なんでもかんでもタメ口か
認知症になる方も多様な方がいます。元々礼儀作法を気にされている方、ここが何かの店だと思っている方、自分の家に来た客をもてなそうとしていると捉えている方。
こうした方にタメ口でいくとうまくいきません。
「ここは病院じゃない、自分の家だ」
と強く訴える中には、単なる記憶障害だけでなく、「自分の状況が分からない恐怖」が背景にある場合があります。
その際、私は頭ごなしに否定せず、
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「教科書通りにいかない臨床で、どう動けばいいのか分からない」 「リスク管理に自信が持てず、攻めのリハビリができない」 「新人・若手指導を…

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