⑦【新人基礎】血圧は上だけが重要なわけじゃない
■ 免責事項 本記事の内容は、臨床10年超の理学療法士としての経験に基づく個人的見解です。リハビリテーションの実施にあたっては、日本リハビリテーション医学会等の「中止基準」を遵守し、各施設の規定や主治医の指示を最優先してください。
はじめに:単一の数値のみによる判断からの脱却
「収縮期血圧が130mmHgだから問題ない」と、バイタルサインを単なる基準値のクリア条件のように捉えてしまうことは避けるべきです。
臨床において重要なのは、単一の数値だけで心機能全体を判断しないことです。 測定値を経時的な変化として捉え、背景にある生理学的な状態を推論することで、心血管系の微細な変化に気づくことが可能になります。
リハビリテーションの中止基準の再確認
積極的な運動療法の前に、まずは安全管理の基準を徹底する必要があります。
安静時血圧200/120mmHg以上、脈拍120回/分以上、SpO2 90%以下(基礎疾患による)などは、運動中止の明確な基準です。 しかし、これらに該当しなくても「基準内であるが、平常時と異なる」という変化を見落とさない観察力が求められます。
脈圧と拡張期血圧(下の血圧)の臨床的意義
収縮期血圧だけでなく、収縮期血圧と拡張期血圧の差である「脈圧」、そして「拡張期血圧」自体を評価することが重要です。
脈圧の正常範囲は概ね40〜60mmHgとされています。 この幅が広すぎる、あるいは狭すぎる場合、心臓の拍出量や血管抵抗に変化が生じている可能性があります。収縮期血圧だけでなく、この脈圧の変化にも着目してください。
また、拡張期血圧が90〜100mmHgを超えて高い状態にも注意が必要です。 拡張期血圧が高いということは、心室拡張期においても血管壁への圧力が高い状態が続いていることを意味します。すなわち、心臓に対する持続的な後負荷が高い状態を示唆しています。
これらの数値を複合的に評価することで、対象者が運動負荷に耐え得る状態かどうかの判断材料が増加します。
電子血圧計の測定誤差と徒手的な評価の重要性
臨床現場で頻用される電子血圧計ですが、不整脈の存在や測定環境によってエラーが生じたり、実際の血圧と乖離した数値が表示されたりすることがあります。
測定機器の数値を鵜呑みにせず、橈骨動脈等での触診による脈拍の確認や、顔色、皮膚の冷感・湿潤を直接観察することが必要です。 機器による測定と徒手的な評価を併用することが、正確な状態把握において不可欠となります。
継続的な臨床推論の積み重ね
本シリーズでお届けしてきた「新人基礎」の内容はいかがでしたでしょうか。 接遇、基本動作介助、目標設定、促通、そしてリスク管理など、多岐にわたる内容を解説しました。
新人や若手の時期は、目の前の業務に追われることも多いはずです。しかし、介入による反応を評価し、次の計画に反映させるという過程を繰り返すことで、専門職としての能力が形成されていきます。 指導する側のスタッフも、新人が短期間で全てを習得できるとは考えておらず、数年単位での成長を見込んでいます。焦る必要はありません。
ここまでで「最低限の考え方」は抑えました。ただ、実際に臨床で迷うのはここからです。
特に新人さんが最初にぶつかるのが、
👉「脳卒中」か「大腿骨頸部骨折」です。
・脳卒中で“何を見て判断すればいいかわからない”
・大腿骨で“どこまで動かしていいか怖い”
こういった“現場の迷い”に対して、具体的にどう考えるかをまとめています👇
新人さん向け「大腿骨頸部骨折」患者様を初めて持ったら読むマガジン
他、圧迫骨折だった場合はこちらの脊椎マガジンもどうぞ。
※1記事ずつ読むよりも、マガジンで通して読む方が理解がつながります
■ 今回のリスク管理の考え方をさらに深く学びたい方へ
脈圧の具体的な臨床応用や、循環動態の生理学的解釈については、こちらの記事で解説しています。
[▶ 【リスク管理】バイタルサインから循環動態を推論する技術
また、臨床思考のプロセスをまとめたマガジンはこちらをご活用ください。 [▶ 【リハビリ専門職向け】全記事網羅パックはこちら]
日々の臨床における疑問点の確認に、以下のサイトマップをご活用ください。 [▶ 臨床10年超PTによる、リハビリ専門職向けサイトマップ]
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