⑦【脳卒中病型】分水嶺梗塞、離床で一気に悪化する“地雷”です
【今回のテーマ:「詰まる」のではなく「枯れる」梗塞。血管の終着駅で起きる悲劇を防ぐための、段階的離床プロトコルと物理的サポートの極意】
このシリーズは①から読むと理解しやすいです。①【脳卒中病型】離床で迷わなくなる|病型別バイタル判断の基本
はじめに:離床を進めた途端、患者さんの顔色が青ざめる恐怖
臨床10年超、二児の父として、常に「最悪の事態」を想定しながらも、患者さんの可能性を信じて離床を進めるパパPTです。
若手の頃、カルテに「分水嶺(ぶんすいれい)梗塞、血圧管理に留意」とあるのを見て、深く考えずにリハビリを始めてしまったことがあります。離床を進めた途端に患者さんの顔色がスーッと青ざめていくのを見て、自分の無知さに肝を冷やしました。
分水嶺梗塞は、通常の脳梗塞とは「メカニズム」が根本的に異なります。命を守るためのプロトコルを整理しましょう。
免責事項
※本記事は、臨床10年超の理学療法士としての経験に基づく情報提供を目的としており、医療行為ではありません。 ※個別の事例は考慮しておりませんので、実際の診断や治療方針については、必ず主治医や所属施設の専門医の指示に従ってください。 ※本記事は執筆時点(2026年3月)の知見に基づいています。所属組織とは無関係な個人の見解です。
1. 分水嶺梗塞の正体:血管の「終着駅」で起きる悲劇
「分水嶺」とは本来、雨水が異なる方向へ流れる境界線のこと。
脳においても、主要な血管が養うエリアの「境目」が存在します。
「詰まる」のではなく「枯れる」: 通常の梗塞が血栓による「閉塞」なら、分水嶺梗塞は血圧低下による「灌流(かんりゅう)障害」です。
脳の弱点エリア: 分水嶺は血管の最も遠い「旅の終わり」。もともと血流の圧力が届きにくい、ギリギリの場所です。
ドミノ倒しの恐怖: 内頸動脈狭窄がある場合などで急激に血圧が下がると、真っ先にこの「奥地」の血流が途絶え、脳細胞が死んでしまいます。
2. 画像で見極めるべき「3つの場所」
医師記録にこの言葉があったら、画像(MRI-DWIなど)で以下の境界を注視してください。
前大脳動脈(ACA)と中大脳動脈(MCA)の境界: 脳の表面のやや前側からてっぺんにかけて。
中大脳動脈(MCA)と後大脳動脈(PCA)の境界: 脳の横側から後ろ側にかけて。
内側境界領域(Internal Watershed): 脳の深い部分。側脳室の外側などに、数珠つなぎ(点状)の梗塞巣として現れるのが特徴です。
3. 血圧の「デッドライン」を死守する離床プロトコル
分水嶺梗塞において、離床は機能訓練ではなく、脳血流を維持したまま動ける範囲を広げる「血圧耐久テスト*です。
① 個別のデッドラインを主治医と握る
寝ている時の血圧が、脳を守る「最低限の水圧」です。「収縮期血圧がいくつを下回ったら中止か」を医師に確認します。狭窄がある場合、140mmHg以上の維持を求められることもあります。
② 段階的な「3ステップ負荷」
Step 1: ギャッジアップ(30°〜60°)。生あくびの有無を注視。
Step 2: 端座位。1〜3分待って血圧が安静時に戻るかを確認。
Step 3: 立位・歩行。直後の血圧が10mmHg以上低下し続けるなら一段階戻す。
③ 「血圧以外のサイン」を絶対に見逃さない 数値が基準内でも、下記の徴候が出たらすぐに中止し、臥位に戻します。それは、
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