⑤【脊椎】多椎間PLIFやT-S fusion後を任されたらここを見て!ほとんど文献ないですよ
【今回のテーマ】 胸椎から仙骨までを広範囲に固定する「T-S fusion」術後のリハビリ戦略です。脊柱の可動性が大きく制限される中、禁忌動作(過度な前傾や回旋など)を徹底しつつ、股関節など隣接関節の代償機能を最大化させるための具体的なアプローチと、過度な安静が招く拘縮(腸腰筋の短縮など)のリスクについて解説します。
前回記事はこちら:④【脊椎】術後・ヘルニアの急な筋力低下、見逃してませんよね?神経障害のサイン
【免責事項】 ※本記事は、臨床10年超の理学療法士としての経験に基づく情報提供を目的としており、医療行為ではありません。金融商品、物品についての記載があってもそれらの使用を推奨するというのはあくまで個人の見解であることを明記します。それによって生じたいかなる問題も責任を取りかねます。 ※個別の事例は考慮しておりませんので、実際の診断や治療方針については、必ず主治医や所属施設の専門医の指示に従ってください。 ※本記事は執筆時点(2026年3月)の知見に基づいています。所属組織とは無関係な個人の見解です。
はじめに
胸椎から仙骨までを固定するT-S fusionは、一般的な短い範囲の脊椎固定術とは、術後の身体の使い方が大きく異なります。
固定範囲の脊柱は、その後も屈曲や回旋を行うことができません。股関節や膝関節を使ってしゃがむことはできても、脊柱そのものを曲げて屈むことはできなくなります。固定範囲がT2付近まで及ぶ場合には、頷きや下方を見る動作にも影響が出ます。
この違いは、広範囲固定術の患者さんを担当した経験がないと、実感しにくいかもしれません。
しかし、通常の固定術と同じ感覚で、低い椅子への着座、深い前傾、回旋を伴う動作などを許してしまえば、固定端やインプラントに大きな負荷をかける可能性があります。広範囲固定術では、動作指導の判断を甘く見た場合のリスクが大きいため、まず「どこまで固定され、どの動きができなくなったのか」を明確に理解する必要があります。
一方で、固定部を守ることだけに意識が偏り、背臥位や立位だけで介入を続けることも十分ではありません。脊柱が動かない分、股関節や膝関節には、姿勢変換や日常生活動作を補う役割が求められます。これらの関節に拘縮を作れば、その後の立位や歩行、生活動作はさらに難しくなります。
この記事では、広範囲固定術を通常の脊椎術後と同じように扱わないために、注意すべき動作と、固定部を守りながら股関節機能を維持する考え方について、私自身の経験を交えて整理します。
1.通常の固定よりも意識した禁忌肢位への理解
術後の脊柱は金属のインプラントで強固に固定されています。以下の動きはインプラント(スペーサーやスクリューなど)の脱落や破損を招くため、絶対禁忌です。
低すぎる椅子: 膝が腰より高くなると、最下端の固定部に過剰な負荷がかかり、固定具による脊椎の骨折等のリスクが生じます。
前屈み(お辞儀): 深い前傾姿勢は、上端の固定部(ピンなど)に過度な引き抜き応力がかかり、抜けてしまうリスクを伴います。
回旋・屈曲の禁止: 側屈以外の動きを可能な限りに排除した動作指導が求められます。
また、患者さんは劇的に変わった重心位置に対し、「後ろから常に引っ張られている」という感覚を感じると仰ることが多いです。まずは前方へのリーチ動作などから始め、視覚と姿勢修整の戦略を新しい身体感覚に馴染ませる必要があります。
2.なぜ「安静」だけでは不十分なのか:私の経験から
ここで、若手の頃の私が陥った教訓を共有します。 当時、私は「高リスクな手術であるのでなるべく安全に進めたい」という思いから、背臥位や立位での介入に留めと脊椎の保護を意識して関わりました。
しかし、股関節機能に着目するとそれだけでは不十分でした。
それが、「腸腰筋の短縮」です。
脊柱を固定していても、股関節は動きます。しかし、意識してストレッチをすることを怠ると、上部体幹まで固定されているため、伸展することが普通より少ない腸腰筋は短縮しやすいのではないかと思われます。実際、私の担当した患者さんは一ヶ月で股関節の伸展制限が著明となり、前かがみにしないようにと意識したつもりで前かがみになりやすい心体機能となってしまっていたことに気がつきました。
そこからは側臥位、片膝立ちなどを安全はしっかり確保しつつ意識して行い股関節伸展可動域の拡大を重点的に行い、体幹を伸展しやすい姿勢を作る様練習しましたが、やはり最初から維持できる様介入するより、可動域を拡大する様介入することを比較すると期間が長くかかったり、その間のリスクも高かった様に思います。
3.戦略的アプローチ:股・膝関節機能の最大化
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