【084】 贔屓と狼狽
(*写真は食肉目イヌ科イヌ属ハイイロオオカミ)
おさらいも兼ねて、チャイナの幻獣を紹介しよう。
まずは四神。青龍・朱雀・白虎・玄武、そして頂点の麒麟。
麒麟の代役は黄龍で、龍から生まれた九つの幻獣は「竜生九子」。神話なので様々なバージョン、順番が存在するが、私が好きな「同じ部首の二文字」から選定した。
1、贔屓
龍と亀のキメラ。重いものを背負うことを好み、石柱の基礎の役割。
2、狴犴
虎に似ており、力が強く門番の役割。
3、饕餮
人・羊・虎のキメラ。暴飲暴食だが天候や四季を司る。
4、睚眦
龍と狼のキメラ。共謀残忍で、罪人処刑の道具に紋様として
描かれた。
5、狻猊
虎や豹を喰う猫。
6、貔貅
龍と獅子のキメラ。金を食うが肛門がないので、蓄財の象徴。
7、螭𧉚(読み方不明)
龍と魚のキメラ。火除けの守り神。
8、虭蛥(読み方不明)
龍と馬のキメラ。柱などの頂点に立つことを好む。
9、䘎𧊲(読み方不明)
正体不明
竜生九子に入らない幻獣は、
獅子:インドライオンがモチーフの幻獣。チャイナにはライオンがいないので「こんな感じ?」と想像したのであろう。
窫窳:人面馬身 or 人面蛇身
獬豸:龍・牛・羊のキメラ
夔牛:一本足の牛
山魈:一本足の狒々
畢方:一本足の鶴
跂踵:一本足で猪の尾の梟
人面獣身やキメラ型の幻獣は、日本以外では世界中にたくさんいるし、足が三本とか五本とかの妖怪もよくあるのだが、チャイナの一本足幻獣は世界的にも珍しい。
さて本題の贔屓と狼狽。
贔屓はカメ風の幻獣だが、なぜ漢字が「貝」なのか、意味が「差別的に優遇すること」なのか、まったくの謎だ。日本語のエコヒイキ、依怙とは「頼ってくる人々を仏が助ける」という意味の仏教用語。ヒイキの語源をいくつか読んだが、どれも納得感がないのでここでは書かない。
代わりに贔屓がらみの独自説を発表する。贔屓はヒキガエルのヒキの語源ではなかろうか? 「舌で獲物を引く」からヒキガエル、なる説を見たが、どうにもこじつけ臭い。
そして日本では、神社の鳥居や社殿の柱を支える丸い基礎石を「亀腹」と呼ぶ。稀にではあるが、実際に亀の形の石がある。これはチャイナ幻獣の贔屓から発祥しているのではなかろうか?
次いで、狼狽。これまた謎の単語であるが、一説を紹介しよう。昔のチャイナでは、オオカミには二種類あった。
狼:前足が長く後足が短い
狽:前足が短く後足は長い
この二頭のキメラが狼狽で、うまく歩けない=狼狽える、の語源らしい。幻獣「狼狽」の風貌はまったく謎だが、個人的には「オシツオサレツ」みたいなイメージをしている。
イギリスの児童文学作家、ヒュー・ロフティングの『ドリトル先生』(Doctor Dolittle)。作中には、「Pushmi-pullyu」という珍獣が登場する。Push me, Pull you の捩りだが、井伏鱒二はこれを「オシツオサレツ」と訳した。稀代の名訳である。
