【165】 洞熊学校を卒業した三人
(*写真は食肉目イタチ科アナグマ属ニホンアナグマ)
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赤い手の長い蜘蛛と、銀いろのなめくぢと、顔を洗ったことのない狸が、いっしょに洞熊学校にはひりました。

洞熊先生の教へることは三つでした。一年生のときは、うさぎと亀のかけくらのことで、も一つは大きいものがいちばん立派だといふことでした。それから三人はみんな一番にならうと一生けん命競争しました。一年生のときは、なめくぢと狸がしじゅう遅刻して罰を食ったために蜘蛛が一番になった。なめくぢと狸とは泣いて口惜しがった。

二年生のときは、洞熊先生が点数の勘定を間違ったために、なめくぢが一番になり蜘蛛と狸とは歯ぎしりしてくやしがった。三年生の試験のときは、あんまりあたりが明るいために洞熊先生が涙をこぼして眼をつぶってばかりゐたものですから、狸は本を見て書きました。そして狸が一番になりました。そこで赤い手長の蜘蛛と、銀いろのなめくぢと、それから顔を洗ったことのない狸が、一しょに洞熊学校を卒業しました。

三人は上べは大へん仲よさうに、洞熊先生を呼んで謝恩会といふことをしたりこんどはじぶんらの離別会といふことをやったりしましたけれども、お互にみな腹のなかでは、へん、あいつらに何ができるもんか、これから誰がいちばん大きくえらくなるか見てゐろと、そのことばかり考へてをりました。
さて会も済んで三人はめいめいじぶんのうちに帰っていよいよ習ったことをじぶんでほんたうにやることになりました。洞熊先生の方もこんどはどぶ鼠をつかまへて学校に入れようと毎日追ひかけて居りました。

『洞熊学校を卒業した三人』(宮澤賢治)
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「あんまりあたりが明るいために洞熊先生が涙をこぼして眼をつぶってばかりゐたものですから」
これが何を示唆しているか、分かるだろうか?
