【035】 よだかの星
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(*写真はヨタカ目ヨタカ科ヨタカ属ヨタカ)
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おい。居るかい。まだお前は名前をかえないのか。ずいぶんお前も恥知らずだな。お前とおれでは、よっぽど人格がちがうんだよ。たとえばおれは、青いそらをどこまででも飛んで行く。おまえは、曇ってうすぐらい日か、夜でなくちゃ、出て来ない。それから、おれのくちばしやつめを見ろ。そして、よくお前のとくらべて見るがいい。
鷹さん。それはあんまり無理です。私の名前は私が勝手につけたのではありません。神さまから下さったのです。
いいや。おれの名なら、神さまから貰ったのだと云ってもよかろうが、お前のは、云わば、おれと夜と、両方から借りてあるんだ。さあ返せ。
鷹さん。それは無理です。
無理じゃない。おれがいい名を教えてやろう。市蔵というんだ。市蔵とな。いい名だろう。そこで、名前を変えるには、改名の披露というものをしないといけない。いいか。それはな、首へ市蔵と書いたふだをぶらさげて、私は以来市蔵と申しますと、口上を云って、みんなの所をおじぎしてまわるのだ。
『よだかの星』(宮澤賢治)
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『よだかの星』は賢治没後の翌年、1934年の発表。
今でこそ、教科書に載るくらい有名な作家だが、賢治の生前は作家としては全くの無名であった。農学者としては、地元ではそこそこ知られていたようだが。
賢治が自費出版した著作を、偶然古本屋で見つけた草野心平が文壇に紹介して回るも相手にされず。草野は賢治に会いに行き、親交を持つようになった。そして賢治の没後に草野が、『宮澤賢治研究』『宮澤賢治覚書』などを発表してから、世に知られるようになった。
草野心平が古本屋に行かなければ、賢治の著作は永遠に世に出ることはなかったのかも知れない。
「よだか」は鷹から「市蔵」への改名を迫られる。市蔵は『彼岸過迄』(夏目漱石)の登場人物が元ネタ、という説があるようだが、私は異説を唱える。
それは歌舞伎の片岡市蔵である。何故なら「襲名披露をやれ」と言ってるんだから。
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北アメリカ西部には、プアウィルと呼ばれるヨタカが生息している。Poorwill とは、貧しい意志、残念な人、の意。このヨタカは世界で唯一、「冬眠するトリ」として知られ、長いと三ヶ月くらい寝ているそうだ。アメリカでも残念なトリ扱いで、気の毒ではあるが、確かに見た目は醜い。
ちなみに生物種名はヨタカだが、賢治はよだか。これは「【022】 オマリーの六甲おろし」で説明したように、東日本では連濁が起きやすいからだろう。それと生物種名は連濁が起きにくい傾向もあるように思う。
次は、タカを見て行こう。その前に一つ苦言を。
能あるホークはネイルを隠す。
これには重大な誤りがある。どこがおかしいのか?
