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【205】 狐のつかい

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(写真は食肉目イヌ科キツネ属アカギツネ種ホンドギツネ亜種)

山のなかに、さる鹿しかおおかみきつねなどがいっしょにすんでおりました。みんなはひとつのあんどんをもっていました。紙ではった四角な小さいあんどんでありました。夜がくると、みんなはこのあんどんにをともしたのでありました。

あるひの夕方、みんなはあんどんのあぶらがもうなくなっていることに気がつきました。そこでだれかが、村のあぶらまで油を買いにゆかねばなりません。さてだれがいったものでしょう。

みんなは村にゆくことがすきではありませんでした。村にはみんなのきらいなりょうと犬がいたからであります。

「それではわたしがいきましょう」

とそのときいったものがありました。きつねです。きつねは人間の子どもにばけることができたからでありました。そこで、きつねのつかいときまりました。やれやれとんだことになりました。

さてきつねは、うまく人間の子どもにばけて、しりきれぞうりを、ひたひたとひきずりながら、村へゆきました。そして、しゅびよくあぶらいちごうかいました。

かえりにきつねが、月夜のなたねばたけのなかを歩いていますと、たいへんよいにおいがします。気がついてみれば、それは買ってきた油のにおいでありました。

「すこしぐらいは、よいだろう。」

といって、きつねはぺろりと油をなめました。これはまたなんというおいしいものでしょう。

きつねはしばらくすると、またがまんができなくなりました。

「すこしぐらいはよいだろう。わたしのしたは大きくない。」

といって、またぺろりとなめました。

しばらくしてまたぺろり。

きつねしたは小さいので、ぺろりとなめてもわずかなことです。しかし、ぺろりぺろりがなんどもかさなれば、いちごうあぶらもなくなってしまいます。

こうして、山につくまでに、きつねは油をすっかりなめてしまい、もってかえったのは、からのとくりだけでした。

待っていた鹿しかさるおおかみは、からのとくりをみてためいきをつきました。これでは、こんやはあんどんがともりません。みんなは、がっかりして思いました、

「さてさて。きつねをつかいにやるのじゃなかった。」

と。

『狐のつかい』(新美南吉)

日本にはホンドギツネとキタキツネの二種がいる。いずれもアカギツネの亜種なのでほとんど違いはない。

ホンドギツネ:本州・四国・九州に広く生息。
キタキツネ:北海道のみ。ホンドギツネより少し体が大きく、足先が黒い。

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