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[音楽]「浦和ミュージック・サタディ(1980/11/8)」

はじめに

 高校時代は帰宅部だった。通学経路には池袋や大塚の駅があり、学校帰りには友人たちと本屋やレコード屋をうろついたり、ぴあを片手に安い名画座に足を運ぶ、そんな日々だった。

 もちろん金も無いので毎日そんなことができるはずもなく、まっすぐ帰宅しラジオをつけるほうが多かった。特に土曜日は学校から帰ると昼飯を済ませて14時からFM東京の「ポップスベスト10」を聴くのが日課だった。

NHK FMローカル

 「ポップスベスト10」のあと、15:10~18:00にNHK浦和放送局では「浦和ミュージックサタディ」というローカル番組をオンエアしていた。 

 偶数週に「ロック&ポップス」、奇数週に「歌謡アラカルト」を交互に放送しており、前者の「ロック&ポップス」がなかなか渋い、というかかなり攻めた選曲で、毎回発見の連続だった。

 当時のFM雑誌(私はレコパル)にはオンエアされる曲が掲載されていたが、この番組はローカル局なので何が流れるかわからず、記録癖のある私はオンエアされた曲をメモっていた。

 以降はある日のオンエアリストとなる。

リスト

リクエストコーナー

①「強気で愛して (Hit Me With Your Best Shot/1980)」
前年、デビューシングルの「ハートブレイカー (Heartbreaker/1979)」が大ヒットしたパット・ベネターの二枚目からのシングルカット。その後もコンスタンスにヒット曲が続いたが、私は1983年にヒットした「愛の嵐 (Love Is A Battlefield)」が好きだった。

②「ヒート・ゴーズ・オン(ボーン・アンダー・パンチズ (Born Under Punches (The Heat Goes on)/1980)」
1980年という年は個人的に2枚の全く異なるタイプのアルバムにとてつもない衝撃を受けた年だった。1枚がスティーリー・ダンの「ガウチョ (Gaucho)」、そしてもう1枚がトーキング・ヘッズの「リメイン・イン・ライト (Remain in Light)」だった。そのA面1曲目がこの曲だった。ちまたでは渋谷陽一が拒絶していることを「ロッキンオン」読者の友人から聞いていたが、耳から入ってくるこの独特なサウンド(リズム)の魅力には贖えなかった。

③「踊り明かそう (Dance the Night Away/1979)」
デビューシングル「ユー・リアリー・ガット・ミー (You Really Got Me/1978)」が大ヒットしたヴァン・ヘイレンが1979年にリリースした二枚目からのシングルカット。デヴィッド・リー・ロスの能天気な歌声が好きだった。一番気に入っているのは3枚目に入っている「戦慄の悪夢 (Could This Be Magic ?)」。ヴァン・ヘイレンはシンセを多用する頃から興味が薄れ、ボーカルが交代してからは聴かなくなった。

④「ガダ・ダ・ビダ (In-A-Gadda-Da-Vida/1968)」
この番組の良さはリスナーがエアチェック(オンエア曲をカセットテープ等に録音する行為)できるように曲が始まり、そして完全に終わるまでDJは喋らないというルールがあった。私はこの時、題名だけ知っていたこの曲を録音していた。ところが曲はいつまでたっても終わらず、テープの残量が気になり曲を楽しむどころではなかった。なんとか最後まで録音できたアイアン・バタフライの17分の大作だった。

⑤「ロスト・ホライズン(Lost Horizons/1979)」
スコーピオンズもUFOもちゃんとは聴いてこなかったが、マイケル・シェンカー・グループのファーストは良く聴いた。「アームド・アンド・レディ(Armed and Ready)」や「クライ・フォー・ザ・ネーションズ (Cry for the Nations)」などキャッチーな曲もあったためだろうが、アルバムのラストを飾るこの曲は特に好きな曲だった。それにしてもアルバムの邦題が「神」とは笑

プログレ特集 Vol.3

⑥「スターセット (Starset)」
フランスのプログレバンド、トランジット・エクスプレスに参加していたヴァイオリニスト、デヴィッド・ローズが1977年にリリースしたソロアルバム「ディスタンス・ビトウィーン・ドリームス (Distance Between Dreams)」に収録。トランジットのメンバーが全員参加している。

と書きながら、トランジットもローズもまったく知らなかった。

⑦「エイク (The Ache)」
ダリル・ウェイ&ウルフのセカンド「サテュレーション・ポイント(飽和点) (Saturation Point/1973)」収録。ウルフは「哀しみのマクドナルド」が好きだったが、この「エイク」は同じバンドとは思えないハードさがあった。ダリル・ウェイのバイオリンとジョン・エサリッジのギターのバトルが凄まじい曲だった。

⑧「エピソード (Episode)」
これまた未知のバンド。ミズーリ出身のプログレバンド、パブロフス・ドッグのファースト「禁じられた掟 (Pampered Menial/1975)」収録。デビュー当時からメンバーの入れ替わりが激しく、一時はビル・ブラフォードがドラムを叩いていたとか。

⑨「狂(パートII)」
⑩「空飛ぶコクゾウ」
美狂乱の曲だがこのとき、どんなソースを流したのか覚えていない。この番組では大蔵麻美というDJさんや常連リスナーの持ち込みをオンエアすることもあった。そもそも正式なファーストアルバムがキングレコードからリリースされたのは2年後の1982年だった。自主製作盤か、もしくはスタジオライブだったか。"こくぞう"が虫の名前であると説明したのは誰だったか。

⑪「ボエム (Boehme)」
ベルギーのジャズロックバンド、コスのセカンド「ヴィヴァ・ボマ (Viva Boma/1976)」に収録。コスもまた未知のバンド。面白い曲。

⑫「カーペット・オブ・ザ・サン (Carpet of the Sun/1973)」
ルネッサンスの4枚目「燃ゆる灰 (Ashes Are Burning)」に収録。この曲も含めハズれ曲の無い名盤中の名盤だが、私はA面1曲目の「キャン・ユー・アンダースタンド (Can You Understand)」が一番好き。後半にオーケストラが絡んでいく展開がたまらない。そして何よりもアニー・ハズラムの歌声の美しさ!

途中のオーケストラが入る部分は『ドクトル・ジバゴ』のサントラ曲「Tonya and Yuri Arrive at Varykino (モーリス・ジャール)」の引用となることを後年知る。

新譜コーナー

⑬「クラッシュ・キッズ」
⑭「30世紀の少年」
⑮「グラッド・アイム・ノット・レフト・アローン」
⑯「コンピューターの夢」
⑰「レディオ・ゾーン」
11月25日にリリース予定のフィルムズのファーストアルバム「ミスプリント」のミニ特集。この時にたまたま録音した⑯は以降、忘れられない幻の曲となった。

忘れられないと書きながらもすっかり忘れていた頃に紙ジャケットでリリースされ、飛びついた。2009年のことで、初めてアルバムをフルで聴いた。テクノポップという枠に収まらない不思議な魅力があった。

Mr. Computer, We Don't Change
You Keep Changing Just You Do
And You Find Yourself
Ending as a Dream
Never Find it Possible to Form Our Heart Heart-shaped

「コンピューターの夢」

 1980年当時、数学を含む理数系の科目がとことん苦手だったのに、社会人になってコンピューターをメシの種にするとは夢にも思わなんだ笑

小特集 キング・クリムゾン

⑱「エピタフ (Epitaph/1969)」
⑲「デヴィルズ・トライアングル (The Devil's Triangle)」
どういう意図の特集だったかは覚えていない。⑲はセカンドの「ポセイドンのめざめ」収録。ホルストの「火星 (Mars, the Bringer of War)」をベースにメロトロンが響き渡る怪作。癖になる。

おまけ

 局アナさんは素敵なバリトンボイスの藤野寿一アナ。あまり洋楽は詳しくなかったようで、大蔵麻美の説明を聴くという位置づけだったと思う。

 前述の通り、リスナーが録音する前提で曲を紹介するのだが、一度、藤野アナが失敗したことがあった。ボストンの「遥かなる想い (A Man I'll Never Be/1978)」の曲の終わりを間違えて、最後のピアノの部分で喋り始めてしまったのだった。リクエストナンバーだったせいかも知れないが、次回放送時にちゃんとオンエアし直し、その誠実さに感動した。

 この番組で2回リクエストしたか、どちらも採用された。それが以下。

おわりに

 集中して聴いていたのは2年弱だったと思うが、以降、現在に至るまで引きずり続ける曲に何曲も出逢った、貴重な番組だった。


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