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オマールの海に溺れる朝 一条流がんこラーメン金町@金町

日曜日。土曜日の朝酒の借りを返すかのように、やたらと働き者になる。この日は4月並みの暖かさ。冬の名残を探すほうが難しいほどの陽気で、洗濯物もやけに素直に乾いた。人間も、こうありたいものだと思う。

洗濯を終えた私は、当然のように家を出る。向かう先は一条流がんこラーメン金町。

到着は8時26分。朝としては立派すぎる時刻である。店内にはすでに5人。皆、休日を有効活用しているように見えるが、その実態は私と同類の物好きであろう。日曜の朝にラーメン屋で静かに開店を待つという行為は、履歴書には書けないが、人生の余白としては悪くない。

本日のメニューは
「オマールの不純+北海道産ホッキ貝10kgの100SP」。

呪文のようでいて、どこか科学実験めいている。私は券売機の前で一瞬だけ理性を装いながらも、スペシャルとつけ玉、さらにビールセットのボタンを押す。少し考えたふりをするのが礼儀だが、結論は最初から決まっている。人は弱いのではない。欲望に忠実なだけだ。

並盛りは基本的に1ロット2食ずつ調理する。
つまり、6番目の私はビールを飲むための時間が公式に与えられているということだ。制度設計が素晴らしい。

私はその恩恵にあずかる。つけ玉の卵黄をチャーシューとメンマ、ネギなどのおつまみ小皿に移し、ラーメンダレをひと回し。

これをちびりとやりながらビールを流し込む。朝からこの所業である。だが、誰に咎められるわけでもない。日曜とは、そういう日だ。

やがて着丼。

湯気の向こうから立ち上る香りは、海の気配をまとっている。オマールの甲殻の甘やかな旨みと、ホッキ貝の凛とした潮のニュアンス。濃厚でありながら、どこか品がある。まるで成金が急に礼儀作法を覚えたような味わいだ。

ひと口啜る。
旨みが舌の上で膨らみ、奥へと流れ込む。
オマールが威張りすぎず、ホッキが媚びすぎない。両者は対立せず、むしろ互いの欠点を補うかのように調和している。人間関係もこうありたいものだが、現実は大抵どちらかが出しゃばる。

麺を持ち上げると、スープがきちんと絡みついて離れない。私の未練のように、しつこく、しかし美味い。

海の恵みを余さず受け止め、ついにはスープの一滴まで飲み干す。理性は「塩分」という単語をちらつかせるが、その声はすでに遅い。

丼の底が静かに現れた瞬間、私は海底から引き上げられた潜水士のように、しばしカウンターで茫然とする。深海で見た景色をうまく言葉にできないまま、ただ酸素を求めるあの感じである。

なんという美味さ。

オマールの甘美な甲殻の余韻と、ホッキ貝の凛とした潮の香りが、まだ鼻腔の奥でかすかに揺れている。豪奢でありながら下品ではなく、濃厚でありながら重たくない。まるで名家の放蕩息子が、急に学者然とした顔をして帰ってきたような完成度だ。

私はというと、日曜の朝からビールを飲み、卵黄を肴にし、挙句の果てにスープまで飲み干して放心している。世間の模範的市民とは言い難いが、少なくともこの瞬間、私は幸福の最前線にいる。

丼をカウンターに上げるとき、ほんの少しだけ名残惜しい。だが、深海探査は長居すると危険だ。

店を出れば、4月並みの陽気。
春めいた空気を胸いっぱいに吸い込みながら、私は思う。

人間は陸に生きる生き物だが、ときどき海に溺れたほうがいい。
ただし、救命胴衣の代わりに、ビールセットは忘れずに。

日曜の朝、洗濯を済ませ、海の旨みに浸る。
世間的にはささやかな行為だが、私にとっては十分すぎる贅沢である。

人は遠くへ行かなくてもいい。
金町までで、充分なのだ。

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