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父と娘の弾丸札幌旅行記 2日目

午前4時、すすきののホテルで目を覚ます。
旅先での私は、遠足前日の小学生と高齢者の中間のような生き物である。目覚まし時計の力を借りずとも、なぜか早朝に目が覚める。

さて、ひと風呂浴びようと大浴場へ向かった。
ところが閉まっている。

私は勝手に5時から営業だと思い込んでいたのだが、案内を見ると6時からだった。人生というものは、だいたい自分の思い込みが敗北するところから始まる。

仕方なく部屋へ戻り、6時を待って再挑戦。一番風呂を堪能して部屋へ戻ると娘も起きていた。
支度を済ませて向かったのは二条市場である。

まずは須田食料品海産物店さんで海産物の発送手続きを済ませる。自宅用だの実家用だのと注文しているうちに、財布の中身だけが札幌に移住していく。

続いて朝食を目指して「魚や がんねん」へ向かった。ところが開店前だというのに長蛇の列である。

人気店とは聞いていたが、開店前にもかかわらず大行列である。行列に並ぶこと自体は慣れている。宇ち多゛では開店2時間前から並ぶことも珍しくない。だが、あちらは並んだ先に梅割りと煮込みが待っている。こちらは朝食である。

朝8時前から海鮮のために並ぶ情熱は持ち合わせていなかった。娘と顔を見合わせ、「これは無理だな」と満場一致で可決。民主的な親子は速やかに撤退した。
そこで予定変更。
菊地商店さんでボタン海老、帆立、ホッキ貝を購入し、その場でいただくことにした。

これが大正解だった。

ボタン海老は甘い。などという表現では足りない。噛むほどに海の旨味が溶け出し、脳が「これが900円か」と計算を始める前に口の中から消えてしまう。

帆立は7粒で2,000円。

東京なら「本日のおすすめ」と書かれた黒板の前で一瞬躊躇する価格だが、こちらでは堂々と主役を張っている。肉厚で甘く、噛むたびに幸福が増殖する。

ホッキ貝もまた素晴らしい。

海鮮丼屋で食べれば倍はするのではなかろうか。
そんなことを考えながら夢中で食べていると、気づけば私たちの後ろに列ができていた。

まるで人気店のサクラである。
もちろん店から依頼されたわけではない。ただ食べていただけだ。それなのに結果として集客に貢献してしまうあたり、私も娘も食欲だけは広告塔として優秀らしい。

さらにアスパラを土産に買い、夕張メロンまでいただく。

朝から北海道の食材を片っ端から胃袋へ収納している。その後はホテルへ戻り、しばし休憩。
チェックアウト後は丸井今井で開催されている北海道味覚紀行へ向かった。

開店十分前に到着したのだが、すでに大勢のお客さんが待っている。お目当ては函館のハセガワストアのやきとり弁当と、帯広クランベリーのスイートポテト。開店と同時に催事場へ突撃し、娘がスイートポテト、私がやきとり弁当担当となった。

こういう時の父娘は実に機能的である。
戦国時代なら兵站部隊として名を残したかもしれない。無事に戦利品を確保すると、次は大通公園の佐藤水産へ。予約していた人気No.1のおむすび「ミックス」を受け取る。

秋鮭と手まり筋子が入ったおむすびである。
鮭と筋子の組み合わせは、酒場で言えば梅割りと煮込みのようなものだ。互いを引き立てながら、決して期待を裏切らない。しかも店内では試食が充実している。試食をいただくたびに購買意欲が刺激される。いや、刺激というより、ほぼ陥落である。

昼食は狸小路六丁目の喜来登。

札幌単身赴任時代には毎週のように通った味噌ラーメンの名店だ。久しぶりに対面した丼は、昔の友人のように変わらぬ姿で迎えてくれた。

山のようなネギ。
濃厚な味噌スープ。

札幌らしい黄色い縮れ麺。
一口すすれば、「ああ、これだ」と思う。十年前の記憶というのは案外いい加減だが、本当に美味しかったものだけは身体が覚えているらしい。

ネギと麺を少なめにした娘も満足そうであった。

食後は創成川公園の焼き鳥イベントへ。

目当ては美唄焼き鳥たつみのもつ串である。

私は車を取りに行き、娘が購入担当。
完全な分業制である。会社の会議よりも役割分担が明確だ。無事に購入したもつ串を車内でいただく。鶏の様々な部位が一本に凝縮されており、噛むたびに食感が変わる。

まるで人生の縮図のような串だが、そんなことを考える前に食べ終わった。

さて、ここからが本番だった。
帰りの飛行機は21時25分。
レンタカー返却は18時30分。
現在の時刻は13時。

それなのに我々は美瑛へ向かうのである。
片道2時間半。

冷静に考えると正気ではない。投資の世界なら「高リスク」と言われる案件だろう。だが旅先では人は楽観的になる。根拠のない自信を抱くのである。佐藤水産で購入したおにぎりを食べながらひたすら走る。

そして予定通り15時30分、美瑛放牧酪農場へ到着した。

ちょうど牛たちが放牧されていた。
柵越しではなく、すぐ近くまで来る。のんびり草を食べる牛を見ていると、自分たちの慌ただしさが少々滑稽に思える。こちらは分刻みで移動し、牛は一日中草を食べている。どちらが豊かな時間を過ごしているのかは考えないことにした。

ソフトクリームと飲むヨーグルトをいただく。
牛乳の旨味が濃い。

北海道の乳製品は、毎回「牛ってすごいな」という当たり前の結論へ導いてくれる。

その後は新千歳空港へ向けて猛ダッシュ。
給油を済ませてレンタカーを返却し、送迎バスで空港へ。空港では土産を買いまくった。しかし時間との戦いである。すでに閉店していた店もあり、目当ての品を買えなかったものもある。人生は選択の連続だというが、北海道旅行では胃袋の容量もまた重要な選択要素である。

チェックインを済ませ、サクララウンジへ。羽田からの運転は娘が担当してくれる。そこでようやくサッポロクラシックをいただいた。

今日、最初のアルコールである。
一口飲んで思った。やはり美味い。二日間、海鮮もラーメンも焼き鳥も堪能したが、結局最後はビールに感動しているのだから、我ながら安上がりな人間である。

飛行機は無事に羽田へ到着。
疲れているはずの娘が運転席に座り、私は助手席で今回の旅を振り返る。

北海道は広い。

そして時間は足りない。

だが父娘で食べて、笑って、走り回った二日間は実に濃密だった。

もっとも、その帰り道で私は心地よい疲労に負けて居眠りを始めた。

旅を最後まで支えたのは娘である。
偉そうに旅の計画を立てた父親は、結局のところ北海道を満喫しただけの乗客だったのである。

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