ペヤングのCMに学ぶ、マーケティング・アプローチ。
・昔のペヤングのCM
突然だが、このCMをご存じだろうか。
(動画15秒)
九代目桂文楽さん演じる、ペヤングソース焼きそば屋台の店主が、ロードワーク中の柔道部員四人に対して、ペヤングソース焼きそばを提供する。
ロードワークでカロリーを消費し、空腹の柔道部員たち。
店主の「どうだい味は?」という投げかけに対し、
「まろやか~ぁ」
と、身体を流れるようにくねらし、やきそばの美味しさ(商品のストロングポイント)を全身で表現する。
すかさず店主は商品の再販(リピート)を促す。
「もう一丁いくぅ~?」
「うっす!」柔道部員たちは声を合わせ、全力で商品の再購入を了承する。
この短いやりとりのなかで、お客の再購入(リピート)を促す、基本的なマーケティング手法が詰め込まれている。
・顧客の好みの把握
「どうだい味は?」
商品を提供し、すかさず商品に対する満足度をヒアリングしている。
その行為は、「満面の笑みで」「明るく」「自然に」行われている。
しかし、その口調、表情からは、「商品に対する絶対的な自信」がにじみ出ている。
・顧客の反応
お客(柔道部員たち)のリアクションは、店主の期待をはるかに上回るものであった。
「まろやか~ぁ」
先ほどまでは硬派な印象であった柔道部員たち。
キャラが変わったように、いかつい野郎どもが身体をくねらせ、
「まろやかです!(めっちゃ美味いっす!オンリーワンです!)」と焼きそばに対する高い満足度を全身で表現している。
しかも「まろやか~ぁ」の旋律(フレーズ)。「くねくねダンス」と完全にシンクロした、完成度の高いテーマだ。
しかもモノフォニックではない、どこか絶妙なハーモニーを感じさせる。
それでいて無調性な、現代音楽的な仕上がりとなっている。
・適切なタイミングでの、おかわり(商品の再購入)の販売促進
店主の問いかけに対して、お客(柔道部員たち)は、期待以上のリアクションを返してくれた。
しかし店主は、そのことに満足することなく、すかさず畳みかける。
「もう一丁いく~?」
ペヤング(レギュラーサイズ、120g)のカロリーは500~600kcal。
お客(柔道部員たち)は部活が終わって帰宅すれば、充分なカロリーの夕ご飯が用意されている筈だ。
それでも店主には、勝算があった。
柔道部のハードトレーニングにおいて、ペヤング一杯くらいのカロリーは優に消費するであろうと。いや、育ち盛りで大食いのかれらにとっては、ペヤング二杯(1,000~1,100kcal)ぐらいは朝飯前、もとい晩飯前であろう、と。
かく言う筆者も、高校生の時は運動部(空手道部)に所属していた。
毎日のハードトレーニング、成長期で食欲旺盛、ということも相まって、まあ、あきれるほどによく食べた。
弁当だけではまるで足りない。休み時間に購買に走り、菓子パン2個を購入し、平らげる。
部活後の帰宅時は、女子も含めた同級生の部員と今川焼を買い食い(青春を感じる)。
帰宅すれば、牛乳を水のように2リットル飲み、ご飯は二杯おかわり。家計泣かせであった。
彼らはペヤングを、さも飲み物のようにかっこんでいた※1(これは筆者の勝手な想像だ)。満腹中枢はまだ反応していないであろう。
”イケる”
押し売りではなく、商品の再購入をナチュラルに促すことができる。
「もう一丁いく~?」
若干の嫌らしさを感じさせる、満面の笑み。
しかし、目は笑っていない。
ターゲットをロックオンした。
「よし、落ちたな」
確信の光が、目に宿る。
それでも店主に慢心は微塵も感じられない。
「もう一丁いく~?」
このフレーズの完成度の高さたるや、驚嘆に値する。
お客(柔道部員たち)の発した、「まろやか~ぁ」のフレーズに対する呼応性。
まるでクラシック音楽のソナタ形式の様に、「まろやか~ぁ」で提示されたテーマを絶妙に発展させている。
「まろやか~ぁ」のフレーズとの相似性を想起させ、ミラーリング※2の効果により、顧客に対する深い「共感」を如実に示している。
また、この一連のやりとりは、クラシック音楽における「カノン」※3をも想起させる。
カノンの名曲といえば「パッヘルベルのカノン」が有名だが、筆者は楽聖、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの「俺の尻を舐めろ」を静かに思い起こす。
荘厳で崇高な曲調だが、楽曲のテーマは「俺の尻を舐めろ」だ。
(歌詞)
俺の尻をなめろ
陽気にいこう
文句をいってもしかたがない
ブツブツ不平を言ってもしかたがない
本当に悩みの種だよ
だから陽気に楽しく行こう
俺の尻をなめろ
・クロージング
一分の隙も無い店主のマーケティング・アプローチに対して、お客(柔道部員たち)はなすすべもない。
「おぅっす!」
予定調和的に、焼きそばのおかわり(商品の再購入)を承諾せざるを得ない。
お客(柔道部員たち)の表情には、どこか苦悶の色を感じさせる。
私はその表情を見て、ショスタコーヴィッチの交響曲第五番、第四楽章のフィナーレ、「強制された歓喜」を思い起こした。
・まとめ
ペヤングのCMから得た教訓。
・マーケティングの本質は「笑顔」と「共感」。原点に回帰せよ。
・我々はマーケティング・アプローチに翻弄されていないか?商品やサービスの購入に際して、自律的な判断を取り戻せ。「それは自分にとって、真にリーズナブル(適正価格)か?価格相応のベネフィット(恩恵)は得られるのか?」(まあ、商品やサービスの販売者の人間性に共感して、「投げ銭」的に支出してしまうことは否定しないが)
あなたはペヤングのCMから、何を感じ取りましたか?よろしければコメントで共有いただければ幸いです。それはマーケティングに対する、新たな地平を切り開くきっかけになるかもしれませぬ。
以上、おふざけ半分、真面目半分のこの記事に最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございます。この記事を通じて、あなたの心にちいさな火が灯れば、note作家冥利に尽きるというものです。
(スタルヒン)
※1食べ過ぎを防ぐために、食事は一口20~30回の咀嚼(そしゃく)を推奨します。
※2:相手の行動や言動を鏡のように真似ることで、親近感や信頼感を築く心理的テクニック
※3主にメロディの模倣を利用した音楽のスタイル。最初にある音楽のテーマ(主題)を奏でた後、そのメロディが違った声部で順次繰り返される。
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