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職業訓練って、意味ある?ーー学んだのは、プログラミングだけではなかった

あらすじ

私は50代で会社を退職した。

再就職への不安と、社会から取り残されたような焦りを抱えながら、AI、Excel VBA、Pythonを学ぶ職業訓練に通い始める。

初日の自己紹介で空回りし、プログラミングでは初歩的な関数につまずき、発表ではAIの言葉を鵜呑みにして信頼を落とす。

それでも、講師やクラスメイトとの関わりを通じて、問いを立てる力、人と協力する力、相手に届く形で経験を渡す力を学んでいく。

卒業制作を終えた先で見えたのは、職業訓練で得たものが単なるスキルではなかったという事実だった。

人生の袋小路に立った50代の男が、もう一度働く力と、自分なりの再出発の足場を取り戻していく物語。




Ⅰ 袋小路に、職業訓練の案内が届いた



2025年7月。

私は、50代で会社を退職した。



退職後、時間だけはあった。
だが、前に進んでいる実感はなかった。



社会に貢献できていないことへの後ろめたさ。
頭の奥に、鉛が入っているような重さ。




そのころ、私が登録していた就職エージェントの担当者から、厳しい現実を告げられた。

50代、未経験就職。

書類通過率は、1〜5%。
内定率は、20~30%。

数字だけを見れば、かなり厳しい。



それでも私は、もう一度働く必要があった。
ただ働くだけではない。
これから先も、長く働ける力を身につける必要があった。




生成AIの急速な進化と普及。
それは、人間の仕事がAIに取って代わられるかもしれないという危機感を覚えさせた。

それならば、AIを使いこなし、人生100年時代をサバイバルすればいい。

そう思い、私はリスキリングを決意した。




きっかけが必要だった。

私は、地元のハローワークの職業訓練相談窓口へ向かった。



* # *


「スキルを身に付けてから就活しようと考えているのですが、何かおすすめの講座はありますか?」

あまり期待せずに聞いた。

事前にもらったパンフレットを見る限り、

「PCの使い方」
「Excelの基本操作」

就活の差別化につながるとは思えない講座が多かったからだ。

だが、対応した職員は、確信を持った口調でこう返してきた。

「あります。これです。」

職員が指さした先に書かれていた講座名は、

「AI×Excel VBA×Python」

だった。

「ふぁ、ふぁいそん……?」

「パイソンです。詳しくは、スクールを見学して説明を受けてください」


* # *


後日、スクールを見学に訪れた。

対応した講師に対して開口一番、こうたずねた。

「50代からプログラミングを学ぶのは、遅くはないでしょうか?」

技術者としての豊富な経験を感じさせる講師は、落ち着きはらった様子で、返した。

「最近は50代でプログラミングを学ぶ方も増えていますよ。」

とりあえず職業訓練受講の“対象外”ではないことが分かり、少し安心した。

講師は続けた。

「いまはプログラミングのハードルは大きく下がっています。」

「なにしろ今は、生成AIにコードを書かせる時代ですから。」



思わず、固まった。



すごい。



AIって、そこまで進化しているのか。


私の驚いた顔を見て、講師は付け加えた。

「ただし――AIはハルシネーション(間違い)を起こします。
なので――

AIの間違いを見つけて、修正するために、プログラミングを学ぶのです。


* # *


スクールからの帰り道。

私は、AIの可能性を感じていた。


AIがコーディングする。

これは、「プログラミングの民主化」だ。

特別なスキルがなくても、アイデアを形にできる。

「これなら、自分でもできるかもしれない」

そんな感覚が、初めて湧いた。


* # *


2025年11月下旬。


スクールからの合否通知は、まだ届かなかった。


合格して、職業訓練を受講できれば――
いまの閉塞感に、風穴を開けることができるかもしれない。

もし、不合格だったら――
就職活動を立て直すのは、容易ではない。

そんな危機感があった。


ガタンッ。

ふと、自宅マンションの玄関ポストに、何かが投げ込まれる音がした。

私は玄関へ走った。

長封筒。
差出人は、「○○プログラミングスクール」。

震える手でハサミを取り、内容物を切らないように慎重に開封した。

三つ折りのA4用紙。

この一枚で、私のこれからの三ヶ月が決まる。

そう思うと、手が震えた。


ゴクリ。


そしてゆっくりと、書類を開いた――









「貴殿は、職業訓練の審査に合格しました。つきましては、〇月〇日までに、ハローワークで手続きされたし。」








合格。


見間違いではないか、何度も何度も見返した。



―とるものもとりあえず、自転車でハローワークに向かう。

どんよりと停滞していた、脳が急に動き出した。



――たった3ヶ月の訓練だ。過度な期待は禁物だ。

でも、
これで、前に進める



袋小路から抜け出せる、きっかけにさえなればいい。



目には光が宿り、ペダルを漕ぐ足に力をこめた。



空はまだ重たく曇っていた。
それでも雲の切れ間から、細い光が差していた。







Ⅱ 初日の教室で、私は声を間違えた



2025年12月1日。



訓練初日。



緩行電車でスクールへ向かうなか、車内のモニター広告をぼんやりと眺めていた。



美しい女優が、商品をしきりにPRしている。
けれど、何も頭に入らない。



講義についていけるだろうか。

若い人ばかりで、50代の訓練生なんて浮いてしまわないだろうか。

講師やクラスメイトと、うまくやっていけるだろうか。



各駅で停車するたびに、同じ不安を何度も反すうした。


* # *


職業訓練校の最寄り駅を降りた。

寂れた商店街を抜けて、訓練校へ向かう。


……この町に来るのは、実は初めてではない。


最寄り駅から十五分ほど歩いたところに、スクールはあった。

パステル調の外観。
採光性に優れた、大きなサンルーフ。

スクールというより、カフェのような佇まいだった。



四階の教室へ、エレベーターで向かう。

乗り合わせた学校関係者とおぼしき女性は、腰まで伸びたまっすぐな黒髪に、細身のスーツ姿だった。

背筋が伸びていて、何かオーラのようなものを感じさせた。


女性の方から話しかけてきた。

「今日、初日ですね。」

講師なのか。

私の戸惑いを察したのか、女性は軽く口角を上げた。

「AIの講義を担当します。よろしくお願いします」

そう言って、凛とした佇まいのまま、途中階で降りていった。

扉が閉まったあとも、香水のかすかな残り香が、エレベーターの中に漂っていた。

気づけば、私の背筋も少し伸びていた。


* # *


教室の扉を押し開いた。

高い天井には、鉄骨がむき出しになっている。

だが目を落とせば、スチール製の長机とワークチェアが並び、
そこが「学びの場」であることを伝えていた。


初日は、入校式とオリエンテーションから始まった。

教室には緊張した空気が漂っていて、クラスメイトの顔をまともに見ることもできない。


やがて、自己紹介に進んだ。


「人生100年時代、長く働ける仕事につけるように、職業訓練を頑張ります!」

「けっこうギリギリなおじさんですが、どうぞよろしくお願いします!」


私と同年代に見える人もいる。

ほっと胸をなでおろした。


いよいよ、自分の番が回ってきた。


空気感は読めた。
同年代もいる。
まあ、うまくやれるだろう。

――と思って話し始めたとたんに、場違いな声量が教室に響き渡った。

「す、スタルヒンと申します!!
こう見えて、いい歳したおっさんです!!

人生100年時代を踏まえ、毎朝5時に起きてランニングに取り組んでいます!
先月、初めてのハーフマラソンに挑戦して、サブ2を達成しました!

前職は金融機関のコールセンターで働いていました!

職業訓練で学んだことを活かして、業務効率化を図れる人材になりたいと思います!!

どうぞよろしくお願いします!!」







あいづちはなく、拍手もまばらだった。

隣の席の男性は、わざとらしくPCの画面に目を落としている。


ああ、やっちまった…


* # *


最後に、教科書を購入した。

生成AI。
Excel VBA。
Python。
合計六冊。15,000円。

こんな分厚いテキストを、たった3ヶ月で終わらせることができるのか。


短いようで長い、マラソンのような日々が始まりを告げた。


私は、サブ2を走り終えた直後のような、軽いめまいを覚えた。

だが、本当に息が上がるのは、ここからだった。








Ⅲ AI講義で学んだのは、人との接し方だった



2025年12月上旬。

職業訓練が始まって数日が経った。


いつものように駅を降り、訓練校へ向かう。


その日は気分を変えて、いつもと違う道を歩いてみた。

……へえ、この店、まだ残っていたんだ。

よく知っている町のはずだった。

子どものころから、何度も通っていた。

それなのに、久しぶりに歩いてみると、少しだけ自分の方がよそ者になったような気がした。


* # *


教室には、初日ほどではないにせよ、まだ独特の緊張感が残っていた。

ただ、初週のAI講義は、思っていたよりも入りやすかった。


まずは、受講生同士が軽く話せるようなグループワークから始まった。

「まずは、皆さんで少し話してみてください」

ただ、そう言われても、最初はぎこちない。

知らない人同士が、いきなりAIについて話す。

冷静に考えれば、なかなかの無茶ぶりである。

ただそれも、M講師が受講生同士のアイスブレイクを意図してのことだ。


生成AIという言葉は知っている。
ChatGPTという名前も聞いたことがある。

けれど、実際に業務レベルで使った経験がある人は少なかった。


私も同じだった。

仕事の現場で使いこなしていたわけではない。

便利そうだとは思う。

だが、どう使えば本当に仕事の役に立つのか。

それは、これから学ぶことになる。


* # *


M講師。

初日にエレベーターで乗り合わせた、あの物静かな女性講師だ。

長い黒髪。
切れ長の目。

声を大きく張ることはない。
それなのに、不思議と教室の空気が整っていく。

誰かが言葉に詰まると、少しだけ待つ。
説明が伝わっていないと感じれば、すぐに言い換える。

「すみません、ちょっと分かりにくい表現でしたね」

そう言って、場の温度を下げないまま、自然に説明を組み直していく。


誰かが困っていそうなら、さりげなくフォローに入る。

決して前に出過ぎない。
けれど、教室全体をしっかり見ている。


その姿を見て、私は思った。

――この人、コミュ力が異常に高い。

AI講義なのに、私が圧倒されていたのは、AIの知識ではなかった。
人との接し方だった。


* # *


その日のテーマは、

「非効率な会議をどう改善するか」

だった。


グループごとにAIへ質問を投げ、改善案をまとめ、最後に発表する。


私たちのグループも、おのおのがAIに壁打ちをしながら意見を整理していった。

会議の目的を明確にする。
参加者を絞る。
事前に議題を共有する。
終了時に、次のアクションを決める。

AIの回答をもとに話し合えば、改善案らしきものは形になっていく。

そこまでは、何とかついていけた。

問題は、発表だった。

自分たちの考えを、人前で分かりやすく話す。

それは、AIに質問することとはまったく別の力だった。


他グループの発表が始まった。

中でも、F君のグループ発表は圧巻だった。


* # *


F君。
三十代後半。


丸みのある体型に、人懐っこい笑顔。
話しかけやすい雰囲気があった。

そして、クラスで唯一のプログラミング経験者だ。

だが、彼の凄さは技術力だけではなかった。

相手の意見を否定せず、自然に受け止める。
けれど、自分の考えはしっかり持っている。
相手の年齢や性別を問わず、敬意を持って接してくれる。

そして、発表にも淀みがなかった。

グループ内で出ていた意見が、ばらばらのままではなく、ひとつの流れとして整理されていた。

誰か一人の意見だけが目立つわけではない。
かといって、F君自身だけが前に出るわけでもない。

全員の話を受け止めたうえで、聞き手に伝わる形へ整えている。

「あ、この人、仕事できる人だ」

そう思った。

発表が終わると、自然と拍手が沸き起こった。

M講師も満足そうにうなずきながら評価した。

「完璧ですね。非の打ちどころがありません」


F君は、自分より一回り以上若い。

なのに、堂々としている。

嫉妬よりも先に、「学ばせてもらおう」という気持ちが自然と湧いた。

――五十を過ぎて、こんな素直な気持ちになれるとは思わなかった。


* # *


――次は、私の番だった。

頭が真っ白だった。
それでも、なんとか話した。

だが、自分でも分かる。

散らかっている。
話がまとまっていない。

発表が終わったあと、教室に微妙な沈黙が流れた。

F君の時とは違う。
少し間が空いてから、遠慮がちな拍手が起きる。

「やっちまった」
そう思った。

一回り以上若いF君が、あれだけ自然に場をまとめていた。

それに比べて私は、自分の考えを伝えるだけで精一杯だった。


サンルーフの大きな窓から差し込む冬の日差しが、妙にまぶしかった。

だが、M講師は若干の間の後に、こうフォローしてくれた。

「うん、そうですね。スタルヒンさんのおっしゃる通り、会議を効率化するには、目的を明確にするって大事ですよね」

私の発表から、使える部分を拾い上げる。

そして、AIのアウトプットも交えながら、自然に整理し直してくれた。

じっとりと吹き出した手汗をジーンズで拭いながら、私は少し救われた気分になった。

* # *


あの時、私はようやく分かってきた気がした。

自分に足りなかったのは、AIの知識じゃない。

人と一緒に考えて、人と一緒に形にする力だった。


コールセンター時代、私はお客様との「一対一」の会話には慣れていた。

だが、

グループで意見をまとめる。
場の空気を読む。
相手の話を整理する。

そうしたスキルは、まるで別物だった。


そして講義の最後、M講師はこう言った。

「AIは、プロンプト次第でアウトプットが大きく変わります。
明日はプロンプトについて解説します。」

プロンプト。
AIへの指示文。

その時の私は、その言葉の意味をまだよく分かっていなかった。

だが、プロンプトこそが、生成AIのポテンシャルを引き出すカギであることを、後で知ることとなる。






Ⅳ 良い答えは、良い質問から生まれる



翌日の講義。

テーマは、プロンプト。


AIにどう問いを渡すか。
その違いだけで、返ってくる答えは大きく変わるという。

正直、その時の私はまだ半信半疑だった。

前職で使った時、あまりうまくいかなかったからだ。


ChatGPTを使い、お客様の質問に対する回答文を作らせたことがある。

ボタンを押すと、回答文が一瞬で出てきた。

興奮気味に上司へ見せたところ、すぐにダメ出しを受けた。

「スタルヒンさん、これ、内容が間違っていますよ。」

文章としては整っている。

けれど、肝心の中身は間違っていた。


* # *


M講師は、例を出した。

「たとえば、『空はなぜ青いのか』とだけ聞くと、少し難しい説明が返ってきます」

画面には、太陽光や大気中の分子、レイリー散乱といった言葉が並んでいた。

分からなくはない。
けれど、すっと頭に入ってくる感じではなかった。


次にM講師は、条件を加えた例を示した。

「小学生にも分かるように説明して」

すると、回答は変わった。


太陽の光の中でも青い光は散らばりやすい。
だから、空全体が青く見える。


同じ質問でも、指示の出し方を変えるだけで、回答の分かりやすさが違った。

ただ、「小学生にも分かるように」と入力するのは、かなり抵抗があった。
そこまで自分の理解力を下げて見せるようで、とても恥ずかしかった。

その感覚は私だけではなく、ほかのクラスメイトも少なからず抱いている様子だった。


* # *


講義の中で、受講生が思い思いのプロンプトを試す時間があった。

私が思いついたのは、就職活動についてだった。

企業は、従業員に対してどんなAI活用を期待しているのだろう。
面接でAI活用を話すなら、どんな視点が必要なのか。


まず、ChatGPTにざっくり聞いてみた。

「AIを業務改善にどう活用するべきか」

返ってきた答えは、どこか一般的だった。

業務効率化。
問い合わせ対応。
データ分析。

間違ってはいない。
けれど、それだけでは何も言っていないのと同じだった。


そこで、講義で学んだ通りに条件を足してみた。


あなたは中小企業の経営者です

従業員に対して、AIをどのように活用してほしいと考えますか

現場でAI活用がうまくいかない理由と、その対策も含めて説明してください


数秒後、回答が流れ始めた。
その中で、私の目が止まった箇所がある。


「一度使ってみたけど使えなかった」で終わる原因は、指示が曖昧なことです。
「いい感じにして」では動きません。
誰に向けて、何のために、どんな形で答えてほしいのか。
そこを加えるだけで、回答の精度は変わります。


私は、しばらく画面を見つめていた。


前職で、AIにお客様への回答文を作らせたときのことを思い出した。

あのとき、私はAIが使えなかったのではない。
使う側の問いが、雑だったのだ。


何のために使うのか。
誰に向けた文章なのか。
どこまで正確性が必要なのか。


そこを渡さなければ、返ってくる答えも曖昧になる。

逆に、問いを整理して渡せば、回答は変わる。


良い答えは、良い質問から生まれる。


その当たり前のようで、当たり前ではなかった事実が、少しずつ腹に落ちていった。


気づけば、クラスメイトの話し声が遠くなっていた。

キーボードを打つ音も、M講師の声も、どこか遠くで聞こえる。

目の前のノートPCに表示される文章だけを、夢中で追いかけていた。

教室にいるはずだった。
それなのに、その瞬間だけは、ChatGPTと私の二人きりだった。


* # *


どれくらい時間が経ったのだろう。


「スタルヒンさん」


名前を呼ばれて、はっと顔を上げた。


M講師が、こちらを見ていた。


「今日はここまでです」


時計を見ると、16時10分。
6時限目が終わる時間だった。


周りのクラスメイトは、帰り支度を始めている。

「お先に失礼します」の声。
椅子を引く音。
リュックのファスナーを閉める音。

一気に教室の現実が戻ってきた。


ふと窓の方を見る。

大きなサンルーフから差し込む冬の日差しは、いつの間にか傾いていた。
教室の中に、少しだけ夕方の色が混じっていた。


その日、私が学んだのは、AIの使い方だけではなかった。

問いを立てる力だった。

良い答えは、良い質問から生まれる。
その言葉が、少しだけ分かった気がした。

だが、分かった気になることと、本当に分かることは違う。
それを思い知らされるのに、そう時間はかからなかった。








Ⅴ Excelの関数で、私は止まった



2025年12月中旬。


M講師が担当していたAI講義はいったん一区切りとなった。


いよいよ、プログラミングの講義が始まる。
担当はH講師。
若い男性講師で、説明は論理的で分かりやすい。

これから数か月にわたり、Excel VBAやPythonを教わることになる。
最初に始まったのは、Excelワークシート関数の復習だった。


「MOSレベルの知識がある前提で進めますが、簡単におさらいしておきましょう」

H講師はそう言って、画面に数式を表示した。


=MID(A1,
FIND("-",A1)+1,
FIND("",A1&"")-FIND("-",A1)-1)


正直、何を言っているのか分からなかった。


MID。
FIND。

聞いたことはある。

だが、数式の中で組み合わさると、途端に意味が分からなくなる。


私は慌てて周囲を見渡した。

クラスメイトたちは、当たり前のように頷いている。

ノートを取りながら説明を聞いている人。
静かに画面を見つめている人。

少なくとも、私ほど混乱しているようには見えなかった。


まずい。
自分だけが分かっていない。
そんな焦りが、胸の奥から湧いてきた。


質問しようかとも思った。
だが、手は挙がらなかった。


前日の講義で、良い答えは良い質問から生まれると学んだばかりだった。
それなのに、自分が何を分かっていないのか、うまく言葉にできない。


私のために授業の流れを止めてしまうのではないか。
こんな初歩的なところで躓いているのは、自分だけなのではないか。
そんな考えが頭をよぎった。

気づけば、六時限目が終わり、放課後となっていた。


* # *


放課後の補習時間。

私はH講師のところへ向かった。


「Hさん、今日の関数なのですが……」


H講師は手を止め、丁寧に説明してくれた。

だが、理解できなかった。


もちろん、講師の説明が悪いわけではない。
むしろ、分かりやすく説明してくれていたと思う。


それでも、頭の中でうまくつながらない。

MIDは何をしているのか。
FINDはどこを探しているのか。


説明を聞いているその瞬間は、なんとなく分かった気になる。
だが、少し時間が経つと、また分からなくなる。


後ろを見ると、質問を待つクラスメイトが並んでいた。

「ご説明ありがとうございました」
そう言って、その日の質問を切り上げた。


理解できたわけではなかった。
分かったふりをしただけだった。


前職では、分からないことはためらわずに質問していた。
業務知識を曖昧なままお客様対応する方が危険だったからだ。

それなのに、なぜ今日は聞けなかったのだろう。


* # *


午後4時20分。

普段なら、このあと一時間ほど居残って復習をする。
だが、その日は違った。


私はスクールを後にして、駅へ向かった。


途中で振り返ると、スクールを象徴する大きなサンルーフが、西日に鈍く照らされていた。


ガラス越しに見える教室には、まだ何人かの受講生が残っている。
いつもなら、あの中に自分もいたはずだった。

私は視線をそらし、再び駅へ向かって歩き出した。


プログラミングどころか、Excelの関数すら理解できない。

五十代。
未経験。

プログラミングを学ぶのは、無謀だったのではないか。






Ⅵ 捨てるプライドと、守るプライド




職業訓練校の最寄り駅へ向かう途中、かつて雑貨屋があった場所の前を通った。

子どものころ、私はその二階によく遊びに行った。

今はもう、当時の建物は残っていない。
それでも、その場所の前を通ると、子どものころの記憶が少しだけよみがえる。

だが、その日は懐かしさに浸る余裕などなかった。


緩行電車での帰宅の途。

車内のモニター広告をぼんやりと眺めていた。

美しい女優。商品をしきりにPRしているが、何も頭に入らない。


* # *


自宅マンションの玄関の扉を開ける。

「あら、あなた。お帰りなさい。今日はずいぶん早いわね」

「ああ」

話しかけてくる妻への返事もそこそこに、私は自室に向かった。

「ご飯はいいの?」

「まだいらない」

ぶっきらぼうに返事をして、自室のドアを閉めた。


* # *


椅子に腰を落とす。








ふぅ、とため息がこぼれた。







しばらく天井の隅に目をやる。






目線を落とすと、目の前にはノートPCがあった。








「……」








しばらく迷ったあと、PCの電源を入れた。




ChatGPT。

「スタルヒンさん、お久しぶりです」

今朝、音声対話したばかりじゃないか。

心の中でそんなツッコミを入れながら、私は迷っていた。

あのプロンプトを、打ち込むべきか。

その時、退職した会社でのある光景が思い出された。


* # *


私が一目置いていた先輩に、あるとき悩みを打ち明けたことがある。

「先輩。私、プライドが高くて、人の話を素直に聞けないところがあるんです」

先輩は、クスッと笑った。

それから、ゆっくり話し始めた。






「プライドにはね、二種類あるの」




捨てるべきプライドと、守るべきプライド




「たとえば、分からないのに知ったかぶりをするのは、捨てるべきプライド」





私は黙って聞いていた。





「でもね、分からないことを人に聞くのは、プライドを下げることじゃない」

先輩は、少しだけ間を置いた。


「それは、守るべきプライドなのよ」


* # *


守るべきプライド


その言葉が、ふいに胸の奥から浮かび上がってきた。



私は自分でも不思議なほど自然に、チャッピー(ChatGPT)へプロンプトを打ち込んでいた。


私:
あなたは、陽キャでフレンドリーなプログラミング講師です。


このワークシート関数の動きを、
中学生でもわかるレベルかつ、
できるだけ簡潔に、
ステップバイステップで解説してください。


解説にあたり、FINDとMID関数の動きについても説明してください。








すると、こんな返答が返ってきた。



いいね!こういう文字列操作は超大事だから、サクッと楽しくいこう😄

🎯 結論(先に!)

A1 = "ID-ABC123_XYZ" のとき、この式の結果は

👉 ABC123


🧠 使ってる関数をざっくり説明

🔍 FIND関数

👉 文字が何文字目にあるかを探す関数

例:

  • FIND("-", "ID-ABC123_XYZ") → 3(「-」は3文字目)


✂️ MID関数

👉 文字列の途中から、指定した長さだけ切り取る関数

形:

MID(文字列, 開始位置, 文字数)

🚀 ステップごとに分解してみよう!

① 「-」の位置を探す

FIND("-", A1)

3


② 「_」の位置を探す

FIND("_", A1&"_")

ここちょっとポイント👇

  • A1&"_" は「ID-ABC123_XYZ_」になる

  • つまり「_」が絶対見つかるようにしてる

10(「_」は10文字目)


③ 取り出す長さを計算

10 - 3 - 1 = 6

👉 「-」と「_」の間の文字数!


④ MIDで取り出す

MID(A1, 3+1, 6)

👉 つまり:

  • 4文字目から

  • 6文字分


✂️ 実際に切ると…

ID-ABC123_XYZ
   ↑ここから6文字

👉 ABC123


🎉 まとめ

この式は一言でいうと👇

👉 「-と_の間の文字を取り出す」関数!


💡 ワンポイント

A1&"_" をしてるのは、
👉 「もし _ がなくてもエラーにならないようにするため」

地味だけどめっちゃ大事なテク🔥

他にもこういう式読めるようになりたい?ガンガンいこうぜ👍



私は、その説明を食い入るように見つめていた。


MIDは、文字を切り出す関数。
FINDは、文字の場所を探す関数。


バラバラに見えていたものが、少しずつつながっていく。



……そうか。
そういうことか。



スクールで何度聞いてもつかめなかったものが、ようやく形を持ちはじめた。





私は、自分には能力が足りないのだと思っていた。

だが、そうではなかった。
足りなかったのは能力ではなく、理解するための入り口だった。


そして、守るべきだったのは、
「分かっているように見せるプライド」
ではなかった。

本当に守るべきだったのは、
「学び続けるプライド」
だった。


それから、私の学び方は変わった。


まず、予習をするようになった。

「予習復習が大事」なんて、小学生のころに言われて以来だ。

だが、事前に分からないところをチャッピーに聞いておくだけで、講義の理解度はまるで違った。


プロンプトは、もちろん決まっている。
「中学生でもわかるように説明してください」
だった。

少しずつ、講義についていけるようになった。

優秀なF君とも、プログラミングについて話せるようになった。

ようやく、クラスの歩調に追いつけた気がした。








Ⅶ 誰も責めずに、問題を見る人がいた



休み時間、サンルーフ越しに外を見ると、祖母の家があったあたりが見えた。

昔は雑貨屋だったが、今は別の建物になっている。

子どものころ、祖母はよく、おはぎや赤飯を作ってくれた。
私はそれを「おいしい、おいしい」と言って食べていた。

ただ、今は懐かしさに浸っている場合ではなかった。
クラスの運営について、一部のクラスメイトの不満が表面化していたのだ。


* # *


「今日の放課後は、すみません、全員残ってください」

プログラミングのメイン講師であるH講師が、教室に向かってそう告げた。

「え……何だろうね」
教室がざわつく。

H講師は心なしか、落ち着かない様子だった。


6時限目が終わり、放課後となった。
しばらくして、スクールの責任者であるC社長が入室してきた。

教室の空気が、少し硬くなる。

社長がH講師に目配せすると、H講師は小さくうなずき、教室から出て行った。

* # *


社長は教壇に立ち、咳払いをしてから話し始めた。

「本日は放課後に残っていただき、ありがとうございます」

頭を軽く下げたのち、受講生全員を見渡した。

「実は、クラスの一部の方から、H講師に対する不満が出ています。講義の進め方に疑問を感じている、という声です」

社長は神妙な面持ちになった。

「スクールとしては、皆さんが安心して学べる場を提供したいと思っています。

ですので、この場でHに対する不満や気になる点がある方は、遠慮なくおっしゃってください。

問題点を明らかにしたいのです」


クラスの空気が張り詰めた。




「どなたか、ご意見があればお願いします」




誰も反応しない。





「そうですか…。分かりました。では、一人ずつ順番に意見を伺います。まずは、左からいきましょうか。あなたからお願いします」

私が指名された。

「え、えっと…特に不満はありません。Hさんの講義は、すごく分かりやすいです」

本心からの言葉だった。
だが、どこか白々しい空気がその場に流れた。

そしてその回答に対して、社長はひどくがっかりした様子だった。

「分かりました。では次の方、お願いします」

こうして順番に、受講生一人ひとりが意見を述べていった。


* # *


クラスメイトの意見を聞いて、私はかなり驚いた。

H講師に対する不満を述べたのは、ごく一部だった。

その他のクラスメイトの多くは、こう話した。

「正直に言うと、講義についていくのがやっとです。一日の講義が終わって帰宅したあと、必死に復習しています」

講義についていけないのは、H講師の教え方が悪いからではない。

「自分の努力が足りない」

そう受け止めている人が多かった。


クラスメイトは皆、表向きは問題なさそうに振る舞っていた。
けれど、内心では不安でいっぱいだったのだ。

だが、周囲を不安にさせまいとして、そのことはおくびにもださなかった。


社長はそんな受講生たちの言葉を受けて、深くうなずいていた。

「では最後に、そちらの方。ご意見をお願いします」

指名されたのは、Nさんだった。

彼女は優秀だった。

大手企業の本部で働いてきた経験があり、講義内容の理解度も頭一つ抜きんでている。

普段は「我関せず」といった具合で、周囲とは少し距離を置いていた。

Nさんは鮮やかなゴールドの髪をかき上げ、少し間を置いて口を開いた。

「……これは、H講師の問題ではありません。構造的な問題です」


* # *


彼女は、順を追って説明し始めた。


このクラスの職業訓練プログラムは、受講生にMOS※レベルの知識があることを前提に設計されている。

※Microsoft Office製品の操作スキルを証明する資格。

だが実際には、受講生の知識や理解度にはばらつきがあった。

その状態で、十五人のクラス全員をH講師一人でフォローするのは、現実的ではない。

つまり、問題はH講師個人の指導力ではない。

前提と現実が合っていなかったことにある。

だから、職業訓練の開始当初から補助講師を付けるべきだった。


Nさんは、そう結論づけた。


社長は、Nさんの言葉を聞きながら、何度も深くうなずいていた。

結局、Nさんの意見が取り入れられ、遅まきながら補助講師がつくことになった。


当時の私は、
「ああ、Nさんって全体最適を見ている人なのだな」
そう思っていた。


けれど、今ならもう少し違う見方をする。


Nさんは、誰も責めなかった。


H講師の教え方が悪い、とも言わない。
受講生の努力が足りない、とも言わない。
スクールの運営を一方的に否定することもしない。

ただ、前提と現実のズレを整理し、必要な対策を示した。

それは、相手に受け入れられる形で仕事を前に進める力だった。


* # *


講師やスクールに不満を表明した人がいた。

「自分の努力不足だ」と受け止め、帰宅後に必死で復習していた人もいた。

それぞれ、他人か自分のどちらかを責めていた。


私はどうだったのだろう。

「H講師の教え方は分かりやすいので、問題ないです」
そう答えたときの、社長の失望したような表情。

その時は、意味が分からなかった。
でも今なら、少し分かる。

私は、問題を見ていなかったのだ。


H講師は悪くない。
自分はAIを使って何とか理解できている。
だから、大きな問題はない。
どこかで、そう思っていた。

もっと言えば、
「生成AIを使えば、プログラミングも理解できるのに」
そんな考えも、私の中にはあった。

それは、講義についていけずに苦しんでいる人たちの不安も、スクールが学びの場として果たしている役割も、十分に見ていない考えだった。


Nさんだけは違った。

彼女は、誰も責めなかった。

ただ、前提と現実のズレを整理した。
そして、補助講師を付けるという具体的な対策を示した。

社長に対しても、責任を追及するのではなく、受け取れる形で答えを渡した。

それが、Nさんのすごさだった。

誰も悪者にせず、客観的な事実から必要な対策を提案する。
それこそが、摩擦の少ない仕事の進め方なのだと思った。

職業訓練で学んだことは、単なるプログラミングスキルではなかった。






Ⅷ 価値観カードの憂鬱



スクールの最寄り駅、駅前ロータリー。

祖母の営んでいた雑貨屋があった場所の前を通った。

祖父は商売で財を成し、市内にいくつか土地を持っていた。

祖父から譲り受けた土地に、父はかなり立派な家を建てた。

父は、地元では知られた総合建設会社で役職に就いていた。

子どものころの私は、それを特別なことだとは思っていなかった。

ただ、今思えば、何かを与えられていることに、ずいぶん鈍感だったのだと思う。

* # *


2026年1月上旬。

その日は、月に二日ある「就職支援」の日だった。

キャリアコンサルタントが講師となり、キャリアカウンセリングや就職のためのワークショップを行う。

その日のテーマは、「価値観カード」だった。

「仕事」「お金」「友人」「健康」「愛情」。

さまざまな価値観が書かれたカードを、グループの中で選び、捨て、最後に自分にとって大切なものを残していく。

ただ選ぶだけではない。

なぜそのカードを捨てるのか。
なぜそのカードを残すのか。
残した価値観に、どんな優先順位をつけるのか。

それを、グループのメンバーに説明しなければならない。


最初は、興味深かった。

自分の価値観を整理するワーク。

そう聞くと、どこか楽しそうにも思えた。

だが、実際にやってみると、思っていたよりずっと難しかった。


* # *


緩行電車での帰宅の途。

車内のモニター広告をぼんやりと眺めていた。

美しい女優。商品をしきりにPRしているが、何も頭に入らない。


私は、恥ずかしいような、情けないような、なんとも言えない気分だった。

価値観カードのワークで、自分をさらし者にした。

まず、それが恥ずかしかった。


さらに、自分の価値観に優先順位をつけられていないことが情けなかった。

ワークを何回か繰り返すうちに、私は自分の説明が矛盾していることに気づいた。

さっきは「健康が大事」と言った。
次には「仕事を優先したい」と言った。
そのあとで、「家族との時間も大切だ」と言った。

どれも嘘ではない。

けれど、では何を一番大事にするのか。
その問いに、私はうまく答えられなかった。

自分の価値観について、いかに浅くしか考えていなかったかを思い知らされた。

* # *


その点、F君は違った。

なぜその価値観を大事にしているのか。
なぜその順位なのか。
説明に迷いがなかった。

就職先についても同じだった。
プログラマーとして働きたい。
希望する給与額も決まっている。
仕事に求めるものも、自分なりに整理されている。

もちろん、仕事はお金を稼ぐためのものでもある。
けれど、それだけではない。

どんな働き方をしたいのか。
仕事のどこにやりがいを見出すのか。
家庭、健康、趣味、学びとどう両立するのか。

自分の中で優先順位が決まっていなければ、就活の軸もぶれてしまう。

その当たり前のことを、F君との差によって思い知らされた。


* # *


退職した前の会社。

仕事は忙しかったが、それなりにやりがいはあった。
給与はそこまで悪くなく、福利厚生も良かった。
上司や同僚も、いい人が多かった。

だけど、私は退職した。
本当にやりたいことは、別にあると思ったからだ。


条件だけを見れば、悪い職場ではなかった。
それでも、自分の大切にしたい価値観とずれていれば、結局は続かない。
そう考えると、仕事選びの前に必要なのは、求人票を眺めることではなかった。


自分が何を大切にしているのか。
何を譲れて、何を譲れないのか。
そこを見ないまま仕事を探しても、迷いは消えない。

ただ、自分を知る必要があったのは、仕事選びだけではなかった。




Ⅸ ハッピーターンと、距離感の試験




人との距離感。
場の中での振る舞い方。
相手にどう見られているのか。

そういうものも、私は自分で思っているほど分かっていなかった。


職業訓練校の教室では、訓練開始以来、ずっと同じ席で授業を受けていた。
毎日同じ場所に座り、同じ人たちと顔を合わせる。
それはそれで居心地が良かった。

だが、少し慣れすぎてもいた。


そんなタイミングで、席替えがあった。


新しい席を確認すると、私は女性四人に囲まれる配置になっていた。

五十代の男が、職業訓練校で女性たちに囲まれる。
それだけ聞くと、少し浮かれた話に見えるかもしれない。

正直に言えば、内心では少しだけ嬉しかった。

だが、それ以上に不安があった。

ちゃんと馴染めるだろうか。
変に気を遣わせないだろうか。
距離感を間違えないだろうか。

新しい席に移る前から、そんなことを考えていた。


不安には理由があった。
前職で、人間関係について苦い経験があったからだ。

特に、女性との距離感については、今でもどこか身構えてしまうところがある。

近づきすぎてもいけない。
かといって、距離を取りすぎてもよそよそしい。
場を和ませようとしても、やりすぎれば空回りする。

その加減を間違える怖さが、私の中には残っていた。
だから、席替えの前から少し動いた。


* # *


新しい席の周辺になる女性たちに、お菓子を配った。

用意したのは、チョコレートとハッピーターン。

「どちらでも好きな方をどうぞ」
そんな軽い感じで渡した。

もちろん、ただの差し入れである。
ただ、今思えば、あれはかなり必死だった。

少しでも感じよく思われたい。
相手の好みを知っておきたい。
新しい席で、うまくやっていきたい。

つまり、私なりの関係づくりだった。


面白かったのは、私の予想と違ったことだ。
なんとなく、チョコレートの方が選ばれると思っていた。
ところが、意外にも選ばれたのはハッピーターンだった。

ハッピーターン、強い。

あの甘じょっぱい粉は、職業訓練校の人間関係にも効くらしい。

その話をF君にした。

「新しい席の人たちにお菓子を配ったんだけどさ。チョコよりハッピーターンの方が人気だったんだよ」

するとF君は、いつものように屈託のない笑顔で返した。

「それは面白いですね。興味深いです」

言うても、ただのお菓子配りである。
でも、私にとっては結構大事なデータだった。


* # *


席替え後、新しい席での日々が始まった。

私は、なるべく明るく振る舞った。

休み時間には、こちらから話しかけた。
昼休みにも、しょうもない話をした。
ときには、少し無理をして笑いを取りにいった。

今思えば、かなり頑張っていたと思う。
いや、頑張っていたというより、必死だった。

空気を悪くしたくない。
面倒な人だと思われたくない。
この席で、ちゃんとやっていきたい。

そんな気持ちが強かった。


ハッピーターンも、その後また配った。

しかも、普通のハッピーターンではない。

女性の一人が、
「パウダー増し増しのやつ、おいしいですよね」
と言っていたのを覚えていて、それを買ってきた。

自分でも思う。
どれだけハッピーターンに人生を託しているのか。

ただ、そのくらい私は、新しい関係性をこじらせたくなかった。

表面上は、うまくやれていたと思う。
女性たちとも、しょうもない話で笑えた。
少しずつ馴染めている気がした。

* # *


でも、前の席にはNさんがいた。
以前にも書いた、あの優秀な女性である。

ある日、私たちがバカ話で盛り上がっているとき、
Nさんが一瞬だけ冷めた表情をした

本当に一瞬だった。

誰も見ていなければ、気づかなかったかもしれない。
けれど、私は気づいてしまった。

あ。
見抜かれている。
そう思った。

無理して明るく振る舞っていること。
場を回そうとして、少し空回りしていること。
本当は不安なのに、陽気な人のふりをしていること。

Nさんには、ごまかせない気がした。
それが少し怖かった。

そんなある日、近くの席の女性の一人に、さりげなく言われた。

「Nさんは、ちょっと難しいと思いますよ」

一瞬、意味が分からなかった。

難しい。
何が難しいのだろう。

別に、私はNさんをどうこうしようとしているわけではない。
そう思った。

思ったのだが、同時に少しドキッとした。

なぜ、そんなことを言われたのだろう。
私は、そんなふうに見えていたのだろうか。
Nさんを意識していたのだろうか。

もちろん、それは恋愛感情のようなものではない。

ただ、Nさんの前では、ごまかしが効かない気がしていた。

明るく振る舞うほど、余計に見透かされる。
そんな感覚があった。
だから、怖かったのだと思う。

席替えは、ただ座る場所が変わるだけの出来事ではなかった。

私にとっては、新しい人間関係の中で、もう一度やり直せるかどうかの小さな試験だった。

ハッピーターンを配った。
笑いを取りにいった。
陽気に振る舞った。

でもその裏側では、かなり必死だった。

嫌われたくない。
こじらせたくない。
同じ失敗を繰り返したくない。

そんな思いで、私は新しい席に座っていた。

そしてたぶん、Nさんはそのことに気づいていた。
だからこそ、私はあの一瞬の冷めた表情を、今でも覚えているのだと思う。








Ⅹ 強い言葉より先に、信頼が必要だった




人間関係に少しずつ慣れてくると、休み時間の話題は自然と就職活動へ移っていった。

職業訓練の教室では、授業以外の時間にも就職活動の話がよく出た。

求人票の見方。
応募書類の書き方。
面接で何を聞かれるか。

年齢も職歴も事情も違う人たちが、同じ教室で、それぞれ次の仕事を探していた。


その頃、私は「紹介予定派遣」という働き方について考えていた。

前職の信託銀行には、紹介予定派遣から入った。

最初から直接雇用として採用されたわけではない。

まずは半年間、派遣社員として働き、その後、双方が合意して直接雇用に切り替わった。

結果として、私はそこで長く働くことになった。

もちろん、紹介予定派遣が万能だとは思っていない。

すべての求人が良いわけではない。
必ず直接雇用につながるわけでもない。
派遣会社の営業との相性もある。

それでも、四十代、五十代の転職では、有効な入口のひとつになるのではないかと思っていた。

いきなり正社員採用を狙うのが難しい場合でも、まず働きぶりを見てもらえる。
会社側も、応募者側も、一定期間を通して相性を確認できる。

その違いを整理すれば、クラスメイトの役に立つかもしれない。
そう思って、私はPowerPointで資料を作った。

正社員。
派遣社員。
紹介予定派遣。

三つの働き方を比較表にし、それぞれのメリットと注意点を並べた。

大手企業で働ける可能性があること。
研修体制が整っている場合があること。
直接雇用につながる可能性があること。

自分としては、かなり実用的な資料を作ったつもりだった。


* # *


発表の前日、近くの席の女性たちに話してみた。

「紹介予定派遣って、けっこう使えると思うのですよね」

ところが、反応は思ったより薄かった。

「私は直で正社員希望だから、あまり関係ないかな」

Nさんは、あっさりそう言った。

別の人は、派遣会社そのものに警戒感を持っていた。

「派遣会社の営業って、あまり信用できないのですよね。釣り求人みたいなのもあるし」

また別の人は、「派遣」という言葉の時点で、どこか距離を置いているように見えた。

私は少し焦った。

これは普通の派遣の話ではない。
紹介予定派遣は、直接雇用を前提にした働き方だ。
そう説明したかった。

実際に、私はその制度を使って前職に入った。
釣り求人ではなかった。
担当してくれた派遣会社の営業も、一生懸命動いてくれた。

もちろん、嫌な思いをした人が警戒するのも自然だ。

それでも私は、紹介予定派遣という選択肢を、もう少し知ってもらいたかった。
ただ、その焦りがよくなかった。


* # *


発表の前夜、私はAIに相談した。

「紹介予定派遣の良さが、もっと伝わる資料にしたい」

すると、AIは強いキャッチフレーズを提案してきた。

「正社員採用より、紹介予定派遣の方が10倍入りやすい」

今思えば、かなり危ない表現だった。

だが、そのときの私は、前日にクラスメイトから受けた薄い反応に少し動揺していた。

もっと伝わるようにしなければ。
もっと強く打ち出さなければ。

そう思ってしまった。

* # *

翌日の発表で、私はその言葉を使った。

「紹介予定派遣は、正社員採用より10倍入りやすい」

教室を見回しながら、私はそう話した。

紹介予定派遣を知っている人がどれくらいいるか聞いてみると、手を挙げた人は一人か二人しかいなかった。

やはり、知られていない。
だからこそ、この話には意味がある。
そう思った。


発表そのものは、大きく失敗したわけではなかった。
うなずいて聞いてくれる人もいた。
あとで「あの発表、よかったですよ」と言ってくれた人もいた。

けれど、発表後、Nさんに言われた。


「スタルヒンさんは、ちゃんと教室を見回して、みんなの目を見て話していたのは良かったです」

まず、そう褒めてくれた。
そのうえで、Nさんは少し言いにくそうに続けた。

「ただ、10倍入りやすいというところは、ちょっと信用できませんでした」


その瞬間、私は「ああ」と思った。

たしかに、そうだった。
その数字には、きちんとした根拠がなかった。
自分で調べて確認した数字ではなかった。

AIが提案した強い言葉を、ファクトチェックなくそのまま使ってしまった。

資料全体を見れば、紹介予定派遣の説明として大きく間違っていたわけではない。

でも、ひとつ根拠の薄い表現が入るだけで、資料全体の信用は落ちる。
それは、かなり大きな反省だった。


* # *


私はあとで資料を作り直した。

「10倍入りやすい」という表現は削った。

紹介予定派遣のメリットも、注意点も、事実ベースで整理し直した。

強く見せるための言葉ではなく、相手が判断できる材料に戻した。


そのとき、私はひとつ学んだ。

AIは便利だ。
壁打ち相手にもなるし、資料の構成も手伝ってくれる。

けれど、AIが出した言葉を使うかどうかを決めるのは、自分だ。

発表で話した瞬間、その言葉の責任は自分に移る。

あとから「AIが言ったから」とは言えない。

実際、私はその発表で少し信頼を落としたと思う。


ただ、不思議なことに、それで全部が終わったわけではなかった。

後日、派遣会社に強い不信感を持っていた隣の席の女性と、就職活動について話す機会があった。


彼女は、かなり迷っていた。

職業訓練でプログラミングを学んでいるが、仕事に活かせる自信がない。

子どもの送迎の関係で、地元の仕事を探したい。
けれど、地元にはあまり就職口がない。

リモートワークも視野に入れているが、どこに応募すればよいのか分からない。

私は、彼女に正対し、できるだけ丁寧に話を聞いた。

自分の考えを押しつけるのではなく、彼女が何に引っかかっているのかを一緒に整理した。

キャリアコンサルタントのようなことを、少しだけしていたのかもしれない。

そのあと、彼女の反応が少し変わった。

「ああ、紹介予定派遣っていうのも、ありなのかもしれないですね」

私は少し驚いた。

あれほど派遣会社に警戒していた人が、少しだけ選択肢として見てくれた。

おそらく、制度の説明だけで考えが変わったわけではない。

先に、私に対する信用が少し生まれたのだと思う。

この人は、自分をどこかへ押し込もうとしているわけではない。
この人は、自分の話をちゃんと聞こうとしている。

そう感じてもらえたから、紹介予定派遣という言葉も、少しだけ違って聞こえたのだと思う。


人は、情報だけで動くわけではない。

どれだけ正しい選択肢でも、誰が、どんな姿勢で伝えるかによって、受け取られ方は変わる。

強いキャッチフレーズで押すよりも、まず相手の不安を聞くこと。
メリットを並べるよりも、相手が何を警戒しているのかを理解すること。

その順番を間違えると、良い情報も届かない。


職業訓練で学んだのは、パソコンの操作だけではなかった。

自分の経験を、人にどう渡すか。
AIの言葉を、どう自分の責任で使うか。
そして、情報より先に信頼が必要な場面があること。

紹介予定派遣の発表は、少し空回りした。
でも、その空回りのおかげで、私はひとつ大事なことを覚えた。

人に選択肢を渡すとき、必要なのは強い言葉ではない。
その人が安心して考えられるだけの、信頼だった。








Ⅺ 三日間で、何を完成させるのか




2026年2月中旬。


三か月の職業訓練も、終わりに近づいていた。


最後に待っていたのは、プログラミングを用いた卒業制作だった。

私は、その進め方が少し気になっていた。

完全な個人制作になった場合、全員が最後まで完成させられるのだろうか。


もちろん、授業についていけている人もいた。

自分で調べ、AIに聞き、コードを書き、エラーを直しながら進められる人。


一方で、授業の途中から明らかに苦しそうな人もいた。

画面に表示されたコードの意味が分からない。

エラーが出ても、どこを直せばいいのか分からない。

AIに質問しても、その答えをどう使えばいいのか分からない。

そういう人たちにとって、卒業制作を一人で最初から最後まで作るのは、かなり厳しいように思えた。


卒業制作は、ただの課題ではない。

就活のPR材料となる、自分のポートフォリオでもある。
それが完成しないまま終わってしまう人が出るのは、何としても避けたかった。

そこで私は、事前にH講師へ少しだけ話をした。

「基本的には、Hさんの方針に従って進めます。ただ、個人制作にしてしまうと、完成までたどり着けない人が出る可能性があると思います」

H講師は、黙って聞いていた。

「もし可能であれば、チーム制にした方がいいのではないでしょうか。

チームであれば、分からないところを相談できますし、得意な人が苦手な人を支えることもできます。

少なくとも、全員が何らかの形で完成までたどり着ける可能性は高くなると思います」

私はそう考えていた。

けれど、その時点ではまだ分かっていなかった。

チーム制作には、また別の難しさがある。

卒業制作の本当の難しさは、そこから見えてくることになった。


* # *


卒業制作の一週間ほど前、H講師から正式な説明があった。

卒業制作は三日間。
進め方は、ウォーターフォール形式。※
※要件定義、設計、実装、テストと、工程を順番に進めていく開発手法である。
三人から四人のチームに分かれ、チームごとに制作物を完成させる。

その説明を聞いたとき、私は少し安心した。
個人制作ではなく、チーム制になったからだ。
これなら、分からない人が一人で抱え込むことは避けられるかもしれない。
そう思った。


ところが、話はそこまで単純ではなかった。

H講師の説明では、まず各自が作りたいものを考えることになっていた。
それをチーム内で出し合う。
いわば、チーム内コンペである。
その中から一番よいと思う案を選び、採用された案をもとに、チームで要件定義を行う。

設計する。
役割分担をする。
実装する。
最後に、それぞれが作ったものを結合して完成させる。

流れとしては、とてもきれいだった。

けれど、現実に三日間でやるとなると、いくつもの難しさが見えてきた。

* # *

まず、何を作ればいいのか分からない人がいた。

授業についていくだけでも精一杯だった人にとって、いきなり
「作りたいものを考えてください」と言われても、簡単には動けない。

「私には無理です」
そんな不安の声も出た。


問題は、「何を作るか」だけではなかった。

その制作物に、どんな機能が必要なのか。
誰がどの部分を担当するのか。
最後に、それぞれが作ったものを本当に一つにまとめられるのか。

そこまで考えると、チーム制作にも別の難しさがあった。


たとえば、誰かが経理や会計に関するシステムを作りたいと言ったとする。

本人には明確なイメージがある。
けれど、他のメンバーが経理や会計に詳しいとは限らない。
採用された案を出した人が、プロジェクトリーダーのような立場でチームを引っ張るとしても、それは簡単ではない。

私たちは、実務で開発チームを回してきた人間ではない。
職業訓練の受講生だった。

アイデアを出す。
要件を決める。
設計する。
分担する。
実装する。
結合する。
それを三日間でやる。

考えれば考えるほど、かなり厳しいように感じた。

個人制作には、完成できない人が出るリスクがある。

しかし、チーム制作には、チームとして完成まで持っていく難しさがある。
どちらを選んでも、問題が残る。

教室の空気は、少しずつざわついていった。

卒業制作は、何を作るか以前に、どう進めるかで止まりかけていた。


* # *


その空気を変えたのが、Nさんの提案だった。

Nさんは、いきなり答えを出したわけではない。

まず、問題を整理した。

個人制作にすれば、自分のポートフォリオとして責任を持って作ることができる。
けれど、一人では完成までたどり着けない人が出るかもしれない。

一方で、チーム制作にすれば、助け合うことはできる。
けれど、誰か一人の案に他のメンバーが乗る形になると、全員が同じ熱量で動けるとは限らない。
役割分担も難しい。
最後に一つの成果物として結合できるかどうかも分からない。

Nさんは、その両方を見ていた。

そして、こう提案した。

講師三人を、それぞれクライアントに見立てる。
クラスを三つのグループに分ける。
各グループは、担当講師から発注された制作物を作る。
ただし、制作自体は基本的に個人で行う。

同じグループの受講生は、同じクライアントから同じ発注を受ける。
だから、困ったときには相談できる。

けれど、作るのは自分自身の成果物だ。

機能の追加。
画面の作り方。
使いやすさの工夫。

そこには、それぞれの個性を入れられる。


その提案を聞いた瞬間、教室の空気が変わった。

H講師も、すぐに反応した。
F君も、「それ、いいですね」と言った。
私も同じ気持ちだった。

三日間で現実的に卒業制作を完成させるなら、その形しかないように思えた。

Nさんの案は、個人制作とチーム制作のどちらかを選ぶものではなかった。その形になったことで、卒業制作は一気に仕事に近づいたように感じた。

* # *

私が担当することになったのは、補助講師をクライアントとするグループだった。

発注されたのは、カードゲーム。

最初は、なぜカードゲームなのだろうと思った。

けれど、成果物の形がはっきりしていて、完成したかどうかも分かりやすい。

そのうえで、機能や画面には自分なりの工夫を加えられる。
Nさんの提案した形が、実際に機能する題材だったのだと思った。

卒業制作で必要だったのは、自由に作ることではなかった。
完成できる条件を、先に整えることだった。

Nさんの一言で、卒業制作は課題ではなく、仕事に変わったのだ。






エピローグ 職業訓練って、意味ある?



大学を出て就職したばかりのころ。

ある日、上司にこう言われた。

「お前はこれまで、自分のやりたいようにやってきたんだろ?」
「お前は特別じゃない。普通の人間だろ?」

当時は、何を言われているのかよく分からなかった。

ただ、否定されたように感じていた。

けれど、今なら少し分かる。

仕事は、自分のやりたいようにやるものではない。
相手がいて、条件があって、期限があって、その中で形にするものだ。

私は長い間、その当たり前のことを、分かったつもりで分かっていなかった。

私は、特別な人間ではない。

だからこそ、人に聞き、人から学び、誰かと一緒に形にしていくしかない。

そう思えたとき、長年抱えていたものが、少しだけ軽くなった気がした。


* # *


子どものころ、祖母の家によく遊びに行った。

駅前の雑貨屋。

祖父は商売で財をなし、市内のいくつかの土地を買い、資産家となった。

祖母が作ってくれた、おはぎや赤飯。

父が建てた、立派な家。

そのどれもが、私にとっては当たり前だった。

けれど、その当たり前に、私はずいぶん鈍感だったのだと思う。

だからといって、その育ちが私のすべてを決めるわけではない。

過去の環境が、これからの自分の言い訳になるわけでもない。

向き合うべきだったのは、出自ではなく、今の自分だった。

職業訓練は、そのことを私に教えてくれた。

* # *

2026年2月末。

3ヶ月の職業訓練は終了した。










職業訓練に意味はあるのか。










今の私は、はっきりと「ある」と答える。



ただし、それはプログラミングの知識だけを得られる、という意味ではなかった。






AI、Excel VBA、Pythonを学んだことはもちろん大きい。


けれど、それ以上に大きかったのは、

人との関わり方
仕事の進め方
相手に選択肢を渡すことの大切さ

これらを何度も実感できたことだった。



講義についていけずに悩んだこと。




M講師から、人との向き合い方を学んだこと。




F君の姿に、年齢に関係なく人から学ぶことを教えられたこと。




Nさんの提案から、誰も責めずに仕事を前へ進める方法を見たこと。




クラスメイトの就職相談に乗る中で、情報より先に信頼が必要だと知ったこと。



その一つひとつが、私にとっての学びだった。




クラスメイトの就職相談に乗るうちに、何人かから言われた。

「スタルヒンさん、キャリアコンサルタントに向いているんじゃない?」

生まれて初めて、自分では思ってもみなかった仕事を、
他人から「向いている」と言われた。

その言葉は、思っていた以上に私の中に残った。





今、私はキャリアコンサルタント養成講座での学びを進めている。



就職活動も、これまでのコールセンター管理者だけではなく、
就労支援やキャリア支援に関わる仕事へと視野を広げている。




職業訓練で学んだのは、AIに仕事を任せる方法だけではなかった。




AI時代だからこそ、人が人に向き合う力は、もっと大切になる。

* # *





職業訓練に意味はあるのか。







ある。






ただし、その意味は、最初から分かるものではなかった。






分からない自分を認めること。



人から学ぶこと。



誰かと一緒に形にしていくこと。



その先に、ようやく見えてくるものだった。





最後までお読みいただき、ありがとうございました。

このストーリーが、少しでもあなたの前向きな一歩につながれば幸いです。


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スタルヒン | 人生を、もう一度設計する。 給水ポイント、ありがとうございます。 いただいた応援は、次の1kmを走るエネルギーになります。 また一緒に走っていただけたら嬉しいです。