便秘と漢方|「軟便との繰り返し」で変わる、3段階の選び方
毎日きちんと出ている人からすると、便秘は「食物繊維をとればいい」で片づく話に見えるかもしれません。でも実際に悩んでいる方ほど、それを何年も続けたうえで困っています。漢方の視点では、同じ便秘でも体の中で起きていることが人によって違う、と考えます。今回の動画では、その分かれ道と、やさしい順に進める3つの段階を早見表つきで整理しました。
まず確かめたい、たったひとつのこと
便秘の漢方を選ぶとき、最初に整理するのは1点だけです。それは、軟便と便秘の繰り返しがあるかどうか。
いつも便秘という方と、ゆるい日と出ない日を行ったり来たりする方では、体の状態が違います。前者は主に「出す力」と「うるおい」の問題ですが、後者はそこに自律神経の乱れが重なっていることが多いのです。ここを分けずに同じ薬を試しても、なかなか噛み合いません。
便秘だけの方|3つの段階を、やさしい順に
便秘だけの方は、いきなり強いものから入らないのが原則です。3つの段階を、作用のやさしい順に進めます。
第一段階は麻子仁丸(ましにんがん)と植物発酵エキスの組み合わせ。ここで足りなければ第二段階のササラックへ、それでも変わらなければ第三段階の乾坤(けんこん)へと切り替えていきます。3つとも植物発酵エキスと合わせて使うのが基本の形です。
そして、軟便と便秘を繰り返す方は、このいずれかに香蘇散(こうそさん)を加えます。動画では、この組み合わせを1枚の早見表にまとめています。
麻子仁丸|腸をうるおして、やわらかくする
麻子仁丸は、麻の果実を主成分とした漢方薬です。腸にうるおいを与え、便をやわらかくして、スムーズな排便をうながす助けになるとされています。
漢方では、腸のうるおいが不足すると便が硬くなると考えます。無理に押し出すのではなく、出やすい状態に戻す。ここが入り口としてやさしい理由です。
一緒に使う植物発酵エキスは、さまざまな野草や野菜を発酵させて作られたもの。腸内の善玉菌を増やし、消化吸収を助けるとされます。麻子仁丸が「出す力」に、植物発酵エキスが「腸内の環境」に働きかける。この二方向の組み立てが基本になります。
ササラック|もう一段、しっかり動かす
麻子仁丸で手ごたえがないときは、ササラックに切り替えます。センナという植物を主成分とした生薬製剤で、大腸を刺激して腸の運動を活発にする働きがあります。
麻子仁丸よりも作用が強いぶん、頑固な便秘に向いています。ただし順番としては、あくまで第一段階のあと。ここから始めないのが大事なところです。
乾坤|長年の便秘でお困りの方に
それでも変わらない場合が、第三段階の乾坤です。より強く腸の働きを活発にする生薬の組み合わせで、長年の便秘でお悩みの方、ほかの方法で効果が感じられなかった方に向いています。
香蘇散|繰り返すタイプに、もうひとつ
軟便と便秘を繰り返す方は、自律神経が乱れていることが多くあります。ストレスや緊張、不規則な生活で、腸の動きが不安定になるのです。
そこで加えるのが香蘇散。気(き)の流れを整えるとされる漢方薬で、乱れた体のバランスを整え、腸の働きを安定させる助けになります。便秘と軟便の行ったり来たりが落ち着いて、安定したお通じに近づく、という考え方です。
漢方薬剤師からの補足|半分は毎日の過ごし方で決まる
ここからは、動画の後半でお話ししている養生について、薬局での実感を交えて補足します。正直なところ、漢方だけで何とかしようとするより、毎日の過ごし方を少し変えるほうが早い方は少なくありません。
食物繊維は、海藻類・きのこ類・根菜類・豆類から。同じ「繊維をとる」でも、サラダのレタスを増やすより、こちらのほうが手ごたえがあります。
漢方では、腸をうるおす食材も重視します。黒ごま、くるみ、アーモンドなどのナッツ類。プルーン、バナナ、さつまいも、こんにゃく。どれも身近なものばかりです。水分をしっかりとることも忘れないでください。
逆に、辛いもの、刺激の強い香辛料、アルコール、カフェインのとり過ぎは腸に負担をかけます。肉類や揚げ物にかたよる食事も同じです。
運動は、ウォーキングなどを一日30分ほど。おへその周りを時計回りにやさしくさするお腹のマッサージや、簡単な腹筋運動もおすすめです。
生活リズムでは、朝がひとつの鍵になります。漢方では、朝の時間帯は大腸がもっとも活発に働く時間だと考えます。便意がなくても朝食後にトイレに座る時間を作る。そして、便意を我慢しない。この2つは、続けた方ほど変化が出ています。
最後に、お腹を温めること。冷やすと腸の働きは鈍くなります。冷たい飲み物や食べ物をとり過ぎない、腹巻きを使う、入浴のときはゆっくり湯船に浸かる。温まって血流が良くなると、腸の働きも動き出します。
まとめ
便秘の漢方は、ひとつではありません。まず「軟便との繰り返しがあるか」を確かめる。便秘だけの方は、麻子仁丸 → ササラック → 乾坤の順に、やさしいところから段階的に。繰り返す方は、そこに香蘇散を加える。
ご自身の状況に合った選び方を知りたい方は、動画で早見表つきの解説をご覧ください。毎日の養生とあわせて取り入れていただくと、体の中から変わってきます。
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